わがまま秘書は冷徹社長の独占愛に溺れていく

椿綾あこ

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18 零れ落ちた本音

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 まるでこれまで何度も来たことあるかのように久世社長がキッチンに立っている。
 
 一人用食洗機に入れていた皿やカトラリーを取り出す時も躊躇いひとつなかった。こういう時って「これ使ってもいいか?」ぐらい聞くのは普通なんだけど。そんな文句この人に言っても効果はない。

 許可のなく電子レンジまで使うのはある意味久世社長はらしいけど……。

 言われるがまま、ソファに座って待っていると、数分後にはレトルトのたまご雑炊が運ばれて来た。丸いダイニングテーブルに置かれたそれはほかほかで美味しそう。お気に入りの白に縁がゴールドの深皿の横にはスプーン、それから経口補水液が添えられてる。

「食え」
「ありがとうございます……。あの……もう移ったらいけないから、もう帰ってください」

 ここまでしてくれたのは有難いけど……こんな気まずい状況望んでない。だからソファから立ち上がるとお礼と同時にはっきりと帰るように促す。

 実際お腹は空いているから食べないことはしないし、充分感謝してる。その旨を出来るだけはっきりと伝えた。なのに――全然伝わらない。

「いいから食え」
「……だから」
「わがまま言わずに食えと言っている」

 ちょっと、と文句が出そうになるのをぐっと堪える。帰るどころか命令と同時に久世社長は2つあるダイニングチェアのひとつに座った。
 
「別にわがまま言ってる訳じゃ……」
「だったら食え」

 どうしてこの人は話が通じないんだろう。私が何を言ってもダメ。それだけ……頑固ってことかな? 
 確かに久世社長の手腕の裏にはこだわりの強さがありそうだけど……この場では病人を労わってほしい。勝手に人の家に来ておいて、どうしてこんなに偉そうなんだろう。

 ふいに頬が膨らむが、とりあえず久世社長の正面に座る。
 
「……いただきます」

 こうなったらさっさと食べて帰ってもらうしかこの状況を打開する方法はなさそう。だからって……こんな至近距離で見られたら安心して食べられない。

 手を合わせてスプーンに手を伸ばし、温まったばかりのたまご雑炊をすくう。数回息を吹きかけて冷ましたあとにまずは一口。1日何も食べてなかったせいか、レトルトなのにすごい美味しく感じた。

「昨日は食べたのか?」
「昨日は……あんまり食欲ありませんでした……」
「足りないならまだある」
「そんなにいっぱい食べられません」
「そうか」

 ――気まずい。目の前の久世社長の視線がチクチクと痛い。こっちはすっぴんで、ただでさえこんな姿見られたくないのに。なのに、気づけばスプーンを動かしてる自分が悔しい。

 こんな状態でご飯を食べているところを見られるなんて――これって何かの罰ゲームなの? そう思ってしまう程、今の状況は変。

 私は熱が下がったばかりの病み上がり、ここは私の家、目の前には久世社長。食べているのは久世社長が買ってきたレトルトのたまご雑炊。

 そしてこれは――久世社長なりの看病。
 気まずさの中にほんの少しのくすぐったさを感じるのはなんでだろう。病み上がりのせいで――よくわからない。
 
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