わがまま秘書は冷徹社長の独占愛に溺れていく

椿綾あこ

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18 零れ落ちた本音

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 急いで食べたいけど、そうも出来ないのは病み上がりで、昨日から何も食べてなかったせい。だからじっと久世社長に見られるのも我慢しないといけない。

「あの……今日の打ち合わせどうでしたか?」

 ふと気まずさを誤魔化すように口を開く。いろいろ検討してみたが、結局無難な話題として選ばれたのは仕事のこと。私がいなかったぐらいで打ち合わせに影響はないが、どうだったのかは気になる。――と思ってたのに……。

「今気にすることじゃない」
「……はい」

 また勝手に頬が風船みたいに膨らんだ。まるでお前には関係ないと言わんばかりの言い方。ぴしゃりと話題を切られて、再び沈黙。

 どうしよう。何か別の話題……けど今一番気になるのはやっぱり――。

「どうして……来たんですか?」

 視線は上げられない。あくまで下を見ながらまたスプーンを口に運ぶ。程よく冷めてきて、お皿の中身はようやく半分ほど減っていた。
 これでも勇気を出して聞いた質問だったのに、この人は来た時と同じことを繰り返した。
 
「九重社長からお前が休んでいると聞いたからだ」
「そういうことじゃなくて……取引先の秘書が休んでるからって看病に来るなんて普通はないです。秋月さんが体調不良の時も毎回行ってたりするんですか?」

 嫌味っぽく、核心をつく。

 だってそうだもん。久世社長が看病に来る理由なんてないはず。恋人でもない、ただの取引先相手の看病に社長が出て来るなんてあり得ない。

 もっともな指摘。怖くて久世社長の顔を見ることはできない。でもこの距離なら……はっきりと聞こえたはず。

「秋月は体調を崩すようなことはしない。モデル時代からあいつの自己管理は完璧だ」
「……ソウデスカ……」

 淡々として返事はまるで嫌味だ。私が自己管理できてないってこと? そんな文句を返そうと思ったが――実際こうやって2日間も休んだことを考えると文句は言えない。

「余計なことを考える前に体調を戻すことを考えろ」
「……わかってますよ。言われなくても」

 ここで「ありがとうございます」って言えないところが“わがまま”なんだろうな。
 とりあえず黙って食べ続ける。だけど沈黙がやっぱり気まずくて、また口を開いてしまう。

「……久世社長って……案外世話焼きなんですか?」

 少しだけ嫌味っぽい、トゲがある言い方をしてしまった。

 だって、こんなの似合わない。

 冷徹社長が看病とか、想像も出来なかった。今は普通に起きてこうやって用意されたものを食べてるけど、もし私が熱でベッドから起き上がれなかったらどうするつもりだったんだろう。

 私の嫌味に目の前の冷徹社長は黙ったままだ。その表情が読めなくて怖い。それでも数十秒の沈黙後、ようやく形のいい唇が動いた。

「こう見えて看病は慣れている」
「そうなんですか?」
「弟が小さい頃はよく体調を崩してたからな」
「え? 弟がいるんですか!?」

 知らなかった情報。驚きにスプーンを持った手が止まって視線を上げた。この人に兄弟がいたなんて――それも想像出来ない。

「ああ、1人な。今は海外で働いている」
「……知らなかった」

 そう言えばこの前は幼いころに両親が離婚したって言ってた。お父さんが再婚したのも高校生ぐらいって言ってた気がするし……ってなると長男の久世社長が家のことを手伝うのは当たり前だったのかも。そんなことを考えるけど……やっぱり想像出来ない。

 久世社長の弟。一体どんな人なんだろう。似たような性格かな? それとも案外正反対の性格? どっちにしても分かるのは海外にいることだけ。兄弟そろって優秀ということは確かだ。
 
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