わがまま秘書は冷徹社長の独占愛に溺れていく

椿綾あこ

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18 零れ落ちた本音

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 この前の食事の時にも少し感じたけど、久世社長から家族の話を聞くのは不思議な気分。

 一人でなんでもできそうな人なのに。知れば知るほど、案外冷たい人じゃないのかなって思ってしまう。美容業界を目指したきっかけも父親だったし。

「……」
「どうした?」
「いえ、……なんでもないです」

 やっぱり、まだ病み上がりでちょっと冷静な判断が出来ないのかも。
 久世社長のことをもっと知りたいと思ってしまった。
 もっと知れば、この人の考えていることが分かるかもしれない。――だけど、そんなふうに思ったこと、これまで一度もなかった。

 これまでプライベートで会うこともなかったし、仕事中にプライベートな話をするタイプの人でもない。だから――プライベートのことを話すこの環境が異常なんだ。

 だからついほだされてしまって、知りたいなんて……久世社長の思うツボかもしれない。

 忘れてはいけない。この人は私のことを面白がって都合のいい女扱いしようとしてるんだから。

 ちょっと優しい一面を見せられたぐらいで、揺れちゃダメ。

 残ったたまご雑炊を一気に食べて、用意された水分を取る。「ごちそうさまでした」と手を合わせたあと、椅子を引いた。
 よし、これでもう帰ってもらえる――そう思って立ち上がった時だった。

「――っ」

 ふらっと、微かに身体が揺れる。急に食べたからか、急に立ち上がったからかはわからない。とにかく目の前が軽くゆがんで景色が揺れる。
 だけどそれも一瞬だった。
 
「病み上がりのくせに急に立つな」
「……っ!」

 立ち眩みでふらっと揺れた身体を支えてくれたのは力強い腕だった。大きな手のひらに腕をつかまれると、急に心臓のリズムが乱れ始める。

「すみません、ありがとうございます」
「大丈夫か?」
「はい、ただの立ち眩みですから」

 とっさのことに目線を上げれば、こちらを見下げる冷たい瞳。私をいつも翻弄する視線に思わず下唇を噛んだのはなんでだろう。
 掴まれた腕がじりじりと焼けるように熱い。近い距離にこのまま引き寄せられたら――なんて考えてしまうのは、久世社長と近づくことが危険だと身体が知っているからだ。

「もう大丈夫ですから――」

 もう一度お礼を言おうと言ったタイミングだった。

「――きゃっ……っ!」

 ふわりとまた身体が揺れた。だけど、さっきとは違う。身体が宙に浮く感覚と同時に、膝裏に腕を回される。
 嘘でしょ? お姫様だっこされてる!?

「久世社長……っ!」
「このまま寝ろ」
「自分で行けます……!」
「連れて行った方が早いだろ」

 久世社長の声が近くなって、また心臓の鼓動が早くなる。一気に体温が上がって、込み上げる何かに声が上ずった。

 
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