わがまま秘書は冷徹社長の独占愛に溺れていく

椿綾あこ

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22 社長と秘書の休日

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「それにその人……」
「うん?」

 椛乃社長は話を聞くのが得意。だからつい油断して、不満が唇から零れた。

「肝心なこと何も言ってくれないんです」
「肝心なこと?」

 明らかに拗ねた声。完全に恋の相談モードに入ってしまった気がする。それに、ずっと思っていた久世社長に対する不満を口にすると胸の奥に引っ掛かっていた何かが少し薄くなった。

「私のこと好きかどうかもわからなくて。思わせぶりなことは言ってくる割には肝心なこと言ってくれないんです」
「そうなんだ……」
「もしも向こうが私のこと好きってちゃんと言ってくれるなら……私だって……」

 何言っちゃってるんだろう。まるで久世社長に告白されたらOKするみたいな言い方してる。

 ただ、ここまで関係がこじれてる原因は絶対に久世社長だし。あの人がもっと何か……この関係について、私について明言してくれたら……こんなに悩まなくていいのに――なんて、都合のいいこと考えちゃう。

「私……圭吾さんの時みたいな都合のいい女にはなりたくないんです。ちゃんと私のこと好きで甘やかしてくれる人がいい。けど……その人は何も言ってくれないから……今その人とどんな関係なのか……全然分からなくて」

 頭の中にまた久世社長を思い浮かべる。
 お互いの挑発から始まった一方的な関係が今では複雑。私の心だって複雑に騒めいている。

「もしも私が本気になって……だけど向こうがただ私を揶揄って都合のいい女扱いされてたらって思うと……これ以上踏み込みたくないっていうか……。上手く言葉に出来ないんですけど……」

 結局、私は怖いのかもしれない。またあの時みたいに惨めな思いをするのが、だからこの気持ちだって認めたくない。
 すると椛乃社長はまた柔らかく笑った。少し面白がってるみたいにクスリと。だけど可愛らしい笑みだった。

「茉乃ちゃんもその人もお互い言葉足らずなんだね」
「え?」
「だって、茉乃ちゃんの顔見てたらわかるよ。今、恋してる顔してる」
「――っ!」

 椛乃社長の指摘にまた頬が熱くなった。私今、どんな顔してるんだろう。 鏡で確認したい……。

「茉乃ちゃんのそんな顔久しぶりに見た」
「止めてください……」
「ふふっ、けど本当のことだから」
「うっ……。そういう椛乃社長はどうなんですか?」

 これ以上話すとうっかり名前を出してしまいそうで怖い。だから咄嗟に話の矛先を変えた。だけど、椛乃社長は私と違って顔色ひとつ変えない。

「私は何も……今は社長業で精一杯」
「……けど、ちょっとときめいたりとか? ドキドキしたりとかそう言うのありません?」
「うーん……どうだろう」

 私の事は何でも見透かしちゃうのにこういう時、椛乃社長はちょっと意地悪。自分のこと教えてくれないんだもん。社長だから私と違って気軽に恋とか出来ないのかもしれないけど、出会いなら沢山ありそう。恋ではなくても、ときめいた出会いとかないのかな?
 
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