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22 社長と秘書の休日
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しおりを挟む「あ、……けどそう言われてみたらあったかな」
「え!? 誰ですか!?」
少しの沈黙のあと、椛乃社長が思い出したように小さな声を零した。ティーカップを手に持って、窓の外をちらりと見たあと綺麗な瞳が私のところへ戻ってくる。
「少し前に、ね」
「誰です!? 私が知ってる人ですか?」
「ふふ、内緒」
「ええ……私ばっかりずるいです!」
白くて細い人差し指を口元に当てて「内緒」と肝心なことを教えてくれない椛乃社長。ずるい、と不満が口に出るが、同時にこの儚げ美人をときめかせる人ってどんな人なんだろうとも考えてしまう。
あの秋月さんの褒めを毎回さらりとかわしてる椛乃社長なんだから、よっぽどの人なのかも。
「ヒントとか!」
「ヒントって言われても……そうだな……」
私のしつこい質問に椛乃社長は肩を竦める。それから短い単語を幾つか紡いだ。
「雨と図書館……それから一杯のコーヒーかな」
「全然わかりません……」
まるで詩人だ。そんなヒントでわかるわけがない。図書館で出会いがあったのかな? 私に想像出来るのはそれぐらい。どっちにしろ、相手を特定するこは出来ない。
「ずるいです椛乃社長」
不満を表す為に頬を膨らませても、返ってくるのは笑顔だけ。
「もしも何かあったら教えてくださいね! 社長の心奪っちゃう人どんな人が気になります」
「私も茉乃ちゃんがそこまで気にしちゃう相手誰か気になってるよ」
「わ、私のは……内緒です」
「残念」
クスクスと笑う椛乃社長にしてやられている。
だけど本当に久世社長のことを好きになって、もしもそう言う関係になったらちゃんと報告しないといけないかも……。いや、私が言う前に久世社長が言いそう。「君の秘書はもう俺のものだ」とか。そんな感じで。
そう考えるだけで頬だけじゃなくて耳も熱い。
「けど、素直になったらいいよ。恋愛は1人じゃ出来ないから。まずは自分の気持ちに素直にね」
「……はい。けど……また都合のいい女かもしれないし……」
ぽつりと不安が芽を出す。素直に惹かれているのを認めたくないのは、可能性がまだ消えないから。
だけど椛乃社長はそんな私に向かって拳を握った。
「その時は、私がいるよ」
だから、大丈夫。柔らかい椛乃社長の笑顔は頼もしい。この笑顔にいつも助けられている。じんわりと胸の奥に広がる温かさに私はつい安心してしまった。
「ありがとうございます、椛乃社長」
「どういたしまして」
お礼を言って、小さなケーキに手を伸ばす。
色々不安はあるし、気持ちも簡単には認めたくない。けど来週はまた久世社長と会う約束をしている。
何着よう。また可愛いって思われる格好して行かないと。
そう思った時点で負けなのに――。
「これ終わったら買い物行きませんか? 服見たくて……」
こんな提案をしてしまうぐらい、もう来週が楽しみなんて嘘みたい。
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