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23 二度目のサプライズ
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しおりを挟むホテルについてチェックイン。全て久世社長がスマートにしてくれる後ろを黙ってついていた私は部屋のドアが開いた瞬間、驚きの声を抑えることが出来なかった。
「わあ……っ!」
目の前に広がったのは大きな窓。それから、広い空間。まるでリビングみたいに座り心地の良さそうなシックなソファがあって、ベッドが見当たらない。窓から見る景色はきっと夜になると最高の夜景になるだろう。
ここ多分……いや、絶対普通のダブルルームじゃない。
「ここってスイートとかですか?」
「ああ」
背の高い久世社長を見上げると彼が一度頷く。ホテルに泊まることだけで驚きなのにまさかスイートルームなんて。
だけど、久世社長ってことを考えると――ありえないことじゃない。
広い部屋を歩いて全貌を確認する。奥には大きなベッドが一台。バスルームも広くて、窓から夜景が一望出来そう。女の子なら誰でも喜ぶような部屋に間違いない。――私も例外ではなくて、胸の鼓動がまた少し早くなる。
ホテルでのお泊りデートの経験は過去に何度もある。だけどスイートルームをサプライズで予約してくれた人は久世社長が初めて。
「気に入ったか?」
「……はい。ありがとうございます」
ちょっと拗ねたみたいな言い方になっちゃったのはまるで思考を読まれたみたいで悔しいから。だから――つい、嫌味が口から飛び出た。
「女性とのデートではいつもスイートを予約してるんですか?」
「気になるのか?」
「……っ、別にそう言うわけじゃ……!」
こんなの早速“わがまま”を言ってるみたいで耳が熱くなる。だから誤魔化す為に持って来たボストンバッグに手を伸ばす。せっかく大きなクローゼットがあるんだから、明日着る予定の服をかけておこう。その方がシワにもならないし。
だけど久世社長の声が近くなる。耳に触れた吐息にビクッと肩が震えた。
「安心しろ」
「……っ!」
「お前が喜びそうだから予約しただけだ。普段はそんなことしない」
「~~っ、ならいいですけど……」
悔しいのに、胸が軽くなって心がじんわり温かくなる。こんな些細な疑問で見たこともない久世社長の女性の陰に嫉妬して、彼の言葉ひとつに安心してる。
やっぱり――久世社長が他の人といる姿を想像するだけで、胸がきゅっと痛む。
「どうした?」
「何でもないです!」
ぷいっとそっぽを向いて、ボストンバッグから着替えを取り出し、クローゼットのハンガーにかける。久世社長はと言うと、ソファに座ってルームサービスの案内を眺めていた。
「食事は19時からだ。まだ時間がある、何か飲み物でも頼むか?」
「え? あ、……じゃあ、お願いします」
さらっと気を使ってくれた久世社長に向かって小さく頷く。簡単に荷解きを終えて、ソファへ。久世社長の隣に座るべきか迷って、結果的に少し離れたところに座った。同時にルームサービスの案内を手渡される。
「選べ」
「ありがとうございます。えっと……じゃあ……」
うわっ……高い!
ズラリと並んだルームサービスの料金表示に驚いた。もちろん声にも顔にも出さないけど、ちょっとコーヒーを……って軽い気持ちで頼めない値段だ。こんなことでもない限り頼むことはないだろう。
「なら……紅茶を。久世社長はどうされますか?」
「コーヒーで頼む」
「じゃあ頼んじゃいますね」
返事を聞いて近くにあった電話を手に取ると、私は人生で初めてルームサービスを注文した。
少し声が上ずったのも、これが初めての経験だからかもしれない。
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