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23 二度目のサプライズ
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しおりを挟むさすが有名ホテル。注文したコーヒーと紅茶はすぐに届いた。
紅茶もコーヒーもポットで用意され、カップや砂糖、ミルクまで用意されている。自然と用意しようと手を伸ばしてしまうのは私が秘書だからかもしれない。
コーヒーカップにポットからコーヒーを注ぐ。それから確認の為に一度視線を久世社長へと向けた。
「久世社長はブラックでしたよね?」
確かいつも仕事の時はブラックだったことを思い出して、砂糖とミルクに伸ばした指先を丸める。だけど、予想外の返事が飛んで来た。
「いや、砂糖とミルクも頼む」
「え? あ、はい」
「……どうした?」
「いや……いつもはブラックだから」
「仕事の時だけだ」
驚きのあまり目を丸くした。きょとんとした表情を浮かべると久世社長の眉根が少しだけ寄った。だけど気にせず、言われたままに砂糖とミルクを入れてティースプーンでゆっくりと混ぜる。
「甘いのお嫌いだと思ってました」
「嫌いではない」
「意外です」そんな小さな感想が唇から零れた。ブラックコーヒー派で甘いものは嫌いだと思っていたのは完全に先入観だけど、久世社長がプライベートで甘いもの食べてるところとかあんまり想像出来ない。
コーヒーを渡して自分用の紅茶も淹れる。コーヒーと紅茶のいい香りが二人っきりのスイートルームに漂って、少しだけリラックスできる。
「お前は甘いもの好きだろ?」
「甘いもの嫌いな女の子はいません」
「そうか」
さっきから久世社長の言葉がいちいち気になる。まるで私のことなんでも分かってるみたいでちょっとムカつく。私だって久世社長のこと――全部知りたい――なんて思う日が来るなんて予想もしてなかった。
「……」
紅茶を飲みながらちらりと久世社長の方を見る。いつもと違って完全にプライベートモードの彼は用意された新聞片手にコーヒーを味わっている。ただ新聞を読んでいるだけなのに、映画のワンシーンみたいにかっこいい。その姿に頬が熱くなって、下唇を噛む。
「なんだ?」
「――っ!?」
すると見ていたことを指摘されてドキッと大きく心臓が高鳴る。いつもと変わらない冷たい視線なのに、今日は何故か柔らかく感じて、心臓はずっとソワソワしている。
「言ってみろ」
「……なんか、いつもと感じと違うから……前回の食事はスーツだったのに」
「前回は仕事帰りだったからな」
「でも次の日送る時もスーツだったから、てっきりいつもそうなのかと」
「あの日もお前を送ったあとに予定があったからな」
「ふーん……じゃあ、今日は完全プライベートってことですか?」
「ああ」
短く頷いた久世社長の視線が私へと動く。今更ながら見た目を確認されているみたいで、ねっとりとした視線が脚からゆっくりと上がってくる。それだけで脚先から熱が上がってきて、落ち着かない。
そんなに見てくるんなら――いっそどう思ったか教えて欲しい。
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