わがまま秘書は冷徹社長の独占愛に溺れていく

椿綾あこ

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26 恋心と予想外のイベント

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 「……はい」
 
 どうするか迷っている内に、頬が熱くなる。誤魔化せないことに気づけば私は小さく頷いた。
 
 好きな人ができた。

 冷たくて、淡々としていて、それに強引……だけど時々優しくて、真っすぐ。それに仕事に関しては一流のカリスマ社長。あの瞳に見つめられるだけで心臓がうるさくなって、身体が熱くなる。

 ずっと認められなかった。だけど心のどこかでは久世社長のことにずっと惹かれてたと思う。
 調教宣言から始まった“身体の関係”を持つより前から、もしかしたらずっと――はっきりと確信は持てないけど、久世社長に対しては何か思う気持ちがあったのかもしれない。最近になって、ようやくそう思えるようになった。
 
「どんな人?」
「それはまだ内緒です」

 唇に人差し指を当てて小さく笑い、香澄さんの追及から逃げる。さすがに相手が取引先社長だなんて言えない。それに椛乃社長に報告するのが先。この前相談乗ってくれたし、もしも上手く行った時には一番に報告したいと思ってる。

「残念。また報告楽しみにしとこうかな」
「あはは……そう言う香澄さんは……どうなんですか?」
 
 話の矛先を変えて目の前の先輩を見る。確か先月聞いた時には『順調』とは言いつつも、ちょっと意味深な感じだった。
 その予感は当たって、香澄さんは私の質問に肩を竦めた。

「実は別れちゃった」
「え? そうなんですか?」
「うん、いい人だったんだけど……なんだろう。まあ、色々あってね」

 申し訳なさそうに眉を落とす香澄さんの表情を見る限り、相手の人が浮気して怒ってるとかそう言う感じじゃなさそう。香澄さんは嫌なことがあったらハッキリ言うタイプだし。まさか香澄さんから別れたいって言ったのかな? 

 付き合ってる報告からわずか数ヶ月足らず。香澄さんはこういうこと多いから、あんまり驚かないけど。

「次の出会いに期待かな!」

 それでも香澄さんはいつも恋の終わりを引きずらない。もう前向き姿勢だ。こういうところちょっと羨ましい。私は圭吾さんの一件のあと、ずっと引きずっていたから。

「お互い頑張ろっか」
「はい。ありがとうございます」

 顔を見合わせて笑みを交わす。すると、背後から大きな咳払いがひとつ飛んで来た。

「――ゴホン。2人共話が弾むのは結構ですが、手が止まってます」

 まるで私達を監視するような厳しい一言に香澄さんと2人で背筋を伸ばす。まさに桐嶋室長の鶴の一声だ。

「はい! すみません!」

 思わず上擦った声と共に、次の仕事へと意識を向ける。議事録は作り終わったので、次は明後日の会議資料の確認だ。
 
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