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26 恋心と予想外のイベント
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しおりを挟む午後5時過ぎ。全ての事務作業を終えた私は社長室に資料などを持って行くと椛乃社長は驚いたように綺麗な瞳を丸くした。
「……すごい。これ全部終わったの?」
「はい、なんか今日調子が良かったのか、仕事進んじゃいました」
すごいね、と椛乃社長が感心したように渡した資料に目を通す。議事録、会議資料など、とにかく今日出来る仕事は全部終わった。それだけ集中していたみたいで、さっき桐嶋室長にも「いつも今日ぐらい集中してくださいね」と言われたぐらい。あれはきっと桐嶋室長なりの褒め言葉だと思ってる。
「今週茉乃ちゃんいつも以上にテキパキしてるし、何かいいことあった?」
「……はい、まあ、ちょっと……」
「あ、例の人だ?」
「……もう、なんでわかるんですか……?」
まだ何も言っていないのに指摘されてしまえば、目の前の社長に向かって頬を膨らませ、抗議するように見つめる。そんな私を見て、また椛乃社長は笑った。
「だって恋してる茉乃ちゃん可愛いもん」
「~~っ、社長には敵いません」
既に相談している身として誤魔化せない。それに、私も可愛いけど悪戯っ子みたいに笑ってる椛乃社長も綺麗で可愛い。男性社員が見たら「可愛い」って見惚れちゃうぐらい。
自分も自覚してる――恋してると機嫌がいいし、仕事が捗るタイプだって。
圭吾さんと付き合ってた時も嬉しいことがあれば仕事も頑張れた。今回も一緒。だけど――ちょっと違う。
いつも私は「可愛い」って自画自賛してるけど、久世社長が好きって自覚した途端、いつも以上に自分が可愛く見える。鏡に映る自分を見る度に、心が躍るし、久世社長の熱を思い出す。
恋している自分を抑えたい気持ちと、どうせ隠しきれないって開き直る自分。ふたつが同居してる。
椛乃社長は私が作った資料に簡単に目を通すといつも通り「いつもありがとう」と続けた。「いいえ、仕事ですから」と首を横に振って、必要なら飲み物でも用意しようと考える。だけど、口を開く前に椛乃社長の思い出すような声が続いた。
「あ、そうだ、来週土曜日、LUNARIAの創業記念パーティーなんだけど、茉乃ちゃんも行くよね?」
「はい。そのつもりです」
予定しているスケジュールを確認され迷いなく頷く。そっか、もう来週なのかとつい持っていたスケジュール帳を開いた。指定された日に目を落とすと『LUNARIA創業記念パーティー 18時』とはっきりと記入してある。
文字通り、来週の一番の大きな出来事はこのパーティーになるだろう。
LUNARIAは久世社長が立ち上げた比較的まだ新しい会社。その急成長ぶりには業界が最注目しているぐらい。そんなLUNARIAは無事創業5周年を迎えた。
本当は2カ月前に創業5年を迎えていたけど、いろんなスケジュール関係で創業記念パーティーはようやく来週開かれる。
立食形式のレセプションパーティーで招待客は取引先や業界関係者を中心にモデルなどの一部芸能人も招待されているはずだ。
もちろんコラボブランドYoruiを立ち上げているCOCONOEは招待リストの中でもトップに記載されているはず。椛乃社長を始め、役員はみんな招待されているし、営業部も何人か呼ばれてる。社長秘書の私ももちろん、参加予定。
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