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28 華やかな夜に
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しおりを挟むついに久世社長の誕生日前日がやってきた。
LUNARIA創業記念パーティーの会場である一流ホテルのホールに到着すると、既に多くの招待客で溢れている。開始10分前に到着したけど、少し出遅れた感がある。
「茉乃ちゃん、受付あっちだって」
「そうですね。行きましょう」
椛乃社長と共にLUNARIA社員が立つ受付で招待状を見せ、持って来た手土産を預ける。会場に足を踏み入れると、一気に華やかな世界が広がって「わあ……!」なんて小さな声が漏れた。
シャンデリアはあるけど光を抑えた演出。モダンで少しLUNARIAらしい夜の落ち着いた雰囲気を感じることが出来るボールルーム。装飾は、白、黒、シルバーを基調に深いブルーや紫を差し色にしている。まるで久世社長って感じの会場。LUNARIAのブランドテーマにもあっている。
正面のステージの大きなスクリーンにはLUNARIAの商品紹介のイメージ映像が次々と流れている。ステージ横にはジャズのカルテットが控えていて、華やかで落ち着いた雰囲気を更に演出してくれている。
「九重社長、お久しぶりです」
「九重社長、相変わらずお綺麗です」
取引先や業界人を中心とした招待客たちが会場に現れた椛乃社長に気づくと次々と群がってくる。数歩歩いた所で、自然と椛乃社長と私の足は止まってしまった。
けど、そうやって声掛けたくなる気持ちわかるなぁ。
やっぱり椛乃社長は、どこにいても目を惹く。
柔らかいラベンダーのドレスに身を包んで、髪はゆるくまとめられている。ほんの少し残された後れ毛が、彼女の儚げな雰囲気を引き立てていて、見ているだけで胸が温かくなる。
パールのピアスやシルバーのクラッチバッグも、派手じゃないのに品があって、社長としての存在感を自然に際立たせていた。
きっと今日も、会場にいる誰も“九重椛乃”という名前を忘れられなくなる。
秘書として誇らしい反面、女の子として――ちょっと羨ましくなっちゃう。
と、いっても、私だって業界では有名な“COCONOEの花園”の一員。
「黒瀬秘書も相変わらずお綺麗ですね」
「ありがとうございます」
同じように褒められると営業スマイルを作って頭を下げる。そう、私だって今日の為に色々準備したんだから。
今日私が選んだのは、黒に近い深いネイビーのワンピースドレス。
膝丈で上品にまとめながら、首元の大きなリボンとレースの袖がほんの少し可愛らしさを残してくれる。普段の秘書としての服装とは全然違って、ちょっと大人っぽい自分を演出できてる……はず。
美容院のヘアセットで髪はハーフアップにして、毛先をゆるく巻いてもらった。顔まわりをふわっと残したから、いつもより女らしく見える気がする。
アクセサリーは細いゴールドのピアスとブレスレット、それから久世社長にもらったヘアクリップをサイドに添えている。首元はリボンが主役だから、あえてネックレスはしなかった。
バッグは黒のクラッチで、足元はヒールのあるパンプス。トータルで見れば、秘書らしいきちんと感を残しつつ、“可愛い”より“綺麗”って言ってもらえるように仕上げたつもり。それこそ“わがまま”感も少し出した感じ。
もちろん、今日も思っている。“可愛い”“綺麗だ”ってあの人に言ってほしいって。
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