わがまま秘書は冷徹社長の独占愛に溺れていく

椿綾あこ

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28 華やかな夜に

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 簡単に挨拶をして、近づいて来た人達と世間話を少し。

 そうしているうちにボーイがウェルカムシャンパンを運んできたので、椛乃社長と受け取る。今日は秘書として来ているから、お酒の量には気を付けよう。立食パーティーだから、もしもフラフラしちゃったら危ないし。
 
 それからも出会う人、出会う人に挨拶をして、必要ならば相手の情報を耳打ちで椛乃社長に教える。業界人やモデルもいて、女性招待客はみんな綺麗だけど、やっぱり私から見れば椛乃社長が一番素敵。目を惹くし、ドレスの裾が揺れる度に、男性の視線が釘付けになっちゃうのも分かるなあ。

 そう言う私も視線は感じてるから、“花園”の1人としてもちろん愛想を振り撒くのは忘れない。

 別で来ていた役員達とも挨拶を交わし、香澄さんとも合流。早速「茉乃ちゃん可愛い」って褒められてちょっと上機嫌になっちゃう。もちろん、淡いグリーンのワンピースを着た香澄さんも綺麗だった。

 そうしているうちにパーティー開始の時間。見覚えのあるLUNARIA営業部の男性社員がマイクで招待客に呼びかけるとジャズのメロディが止まる。

 それからステージに現れたのは久世社長で、自然と会場が拍手に包まれる。その姿を見ただけで胸の奥が熱くなった。

 スーツ姿は見慣れているはずなのに、いつもよりずっと遠い存在に見える。

 纏っているのは漆黒に近いスーツ。照明の下でわずかに艶めく生地が、背の高さと肩幅の広さを一層際立たせていた。
 白のシャツに胸元のネクタイはダークネイビー、派手じゃないのに質の良さが一目でわかる。

 その左手首に覗いた腕時計や、袖口に光るカフスまで、どれも冷徹な社長らしい無駄のない上質さ。華やかだけど、華美さは一切ない。――なのに、視線を奪われる。

「やっぱり……ずるい」

 どうして……いつもこんなに目を奪うのだろう。
 無意識にそんな言葉が胸の奥から零れた時、低い声がマイク越しに会場に響いた。

「本日はLUNARIA創業5周年のレセプションにお越しいただき、ありがとうございます」

 パーティーだからって彼は変わらない。いつも通り淡々と、冷静に紡ぐ言葉達に会場の視線が注がれる。私もその一人だ。
 今椛乃社長と立っている場所はステージから少し離れている。だから彼が私に気づくかはわからない。

 久世社長の挨拶に誰もが耳を傾ける。私の前ではいつも意地悪だけど、こうして公の場で見るとやっぱり彼はカリスマ社長。普通に考えて――私なんかの手が届く相手じゃない。

 だけど私は久世社長のもの……みたいだから。久世社長は私のこと……多分、好き。こんなの不思議だし、奇跡みたいなもの。
 
「早く……言って欲しいな」

 ぽつりと小さな欲望が目を出す。
 
 『もう少ししたらちゃんと――お前が欲しい言葉はやる』

 もう少しっていつだろう? あんなに嫌だったのに、今では早く告白して欲しくてたまらない。そしたら――この胸の奥にある恋心を口に出来るのに。

 けどさすがに今日は無理だろうな。だってこんな大きなパーティーの最中に2人っきりになるチャンスなんてない。
 一応……タイミングがあれば渡したいと思って買った誕生日プレゼントはホテルのロッカーに預けているけど。今日の出番は……なさそう。
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