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28 華やかな夜に
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しおりを挟む……そっか。普通に考えた30代って“結婚”とか考える時期だよね?
久世社長のことは色々知ってるつもり。会社のことを始め、この関係が始まってからは多少私生活のことだって知ってる。だけど……結婚願望とかは知らないかも。
……というか。
普通に考えたら“社長”って一般人と結婚とかしないよね? どこかの令嬢とか? 取引先の娘とか? それこそお見合いとかありそう。「うちの娘どうですか?」って進められることだってあるだろうし……。
「茉乃ちゃん?」
「え? あ、はい!」
「大丈夫?」
「大丈夫です! 素敵なパーティーだなって思って……」
いつの間にか椛乃社長とバイヤーは話し終えていて、慌てて笑顔を作る。今はパーティー中。何考えるんだろう。
「そろそろ、久世社長のところご挨拶いこっか。少し落ちついたみたいだし」
「あ、はい……!」
コクコクと何度か頷いて、椛乃社長の後ろをついて行く。離れたところにいる久世社長と話しているのは、ある美容ブランドの男性役員。それでも軽く頭を下げた招待客が離れていくと、久世社長の視線が私――ではなく椛乃社長を捉えた。
「久世社長、本日はお招きありがとうございます」
「ありがとうございます」
椛乃社長が柔らかく笑って頭を下げると私も後に続く。少しソワソワする気持ちを抑えながらも、今はビジネスの場に集中しろと言い聞かせる。いつも通り“出来る秘書”っぽく振る舞わないと。
「こちらこそ、お越しいただきありがとうございます」
いつもと変わらぬ淡々とした低い声。パーティーの場でも久世社長はいつも通り。まあ……パーティーに浮かれてるところなんて想像は出来ないけど。ビシッとしていて、かっこいいのは間違いない。
「こちら、よろしければどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
挨拶を終えると、まるで出番を待っていたように秋月さんが手の空いた椛乃社長と私にシャンパングラスを手渡す。ほんと、嫌味なぐらいスマート。お礼を言って受け取ると秋月さんは椛乃社長を見て、お決まりの台詞を続けた。
「今日もお綺麗です。ウチの社員達が騒いでますよ。“花園”が綺麗過ぎるって」
「またそんな……恐縮です」
秋月さんのいつもの褒め言葉を椛乃社長が交わす。私も軽く頭を下げて謙遜の姿勢を見せると思い出したように椛乃社長が色づいた唇を動かした。
「そうだ。明日お誕生日とのことなので、受付にプレゼントに預けてます」
「ありがとうございます。後程確認させてもらいます」
「いえ、ちょっと早いですけどお誕生日おめでとうございます」
あ……と、小さな声が漏れそうになってぐっと堪える。
誕生日のお祝い……先に言われちゃった。いや、考えてみればこれだけ招待客がいて、ほぼ全員と話しているのだからもう何人にも言われてるかも……。
私が一番に言いたかったのにと思う一方でまだ当日じゃないから無効だとも言い聞かせる。そうしないと、嫉妬で不機嫌になってしまいそうだから。
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