わがまま秘書は冷徹社長の独占愛に溺れていく

椿綾あこ

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28 華やかな夜に

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 やっぱり今日帰ったら次に会える日を聞くために彼に連絡を入れよう。こんなこと自分からしたくないけど……せっかく用意したプレゼントなんだから、出来るだけ早く渡したい……さすがに明日は急すぎるかもしれないけど。出来るだけ早く2人っきりで会いたい……なんて。

 そんなことを考えていると、久世社長の冷たい視線が椛乃社長から私へと落ちてきた。

 じぃっと絡めとるような視線。足元から唇の赤い口紅まで、まるでなぞるような瞳に、背筋が震えそうになってぐっと堪える。

 着飾った私を見て可愛いって思ってくれてるかな? 聞きたいのに聞けないもどかしさ。

 けど、自画自賛したくないけど、今日の私はとびっきり可愛いと思う。首のリボンだって男性なら誰もが解きたくなるようなデザインだし。

 ただ……私としては久世社長に解いて欲しい……なんて、今はとても口には出来ないけど。

 私が自問自答している内に、久世社長の視線は元の位置へと戻っていた。そのタイミングで知っている声がまた久世社長と九重社長を呼んだ。振り返ると、Yorui関係の取引先社長の姿。

 今日はずっと営業スマイルが必需品で、椛乃社長もすぐに「お世話になってます」と柔らかい笑みを浮かべた。その綺麗な笑顔に相手の頬が少し赤くなったのを私は見逃さなかった。

 自然な流れで、人の輪が大きくなる。
 私はまた一歩下がって、話を耳に入れつつ、流れに身を任せる。ちらりと久世社長を見上げるも、もう彼は私なんて見てなかった。

 挨拶に世間話、それから久世社長の誕生日をお祝いする言葉が続く同じ展開。また別の人にお祝いを先越されたと思うだけで胸の辺りがぎゅうっと締め付けられる。

 暫く談笑して、輪から離れて、別の招待客と交流。今日は本当に大忙しだけど私の心はなんだか落ち着かない。

 それから時折耳を掠める“結婚”というワードが私の集中力をますます乱した。

「久世社長もそろそろ結婚かな?」
「そうかもですね。適齢期ですし。ウチの娘とか紹介したいぐらいだよ」

 そう話していたのは、とある業界関係者。

「久世社長とお近づきになるチャンスだよ。ほら行きなって」
「だって、もう挨拶しちゃったし……!」

 そう話しているのは、別の招待客の女性。当たり前だけど、今日の久世社長はみんなから注目されている。

 お近づきになりたい女性客がたくさんいて、男性招待客は久世社長は結婚を考えるべき時期だね、なんて勝手なことを言っている。

 なんか急に不安になってきた。

「……大丈夫だよね?」
「ん? 茉乃ちゃん?」
「すみません、食べすぎちゃってるかなーって」

 無意識に零れた声を聞かれて慌てて誤魔化す。
 告白待ち状態だけど、本当に欲しい言葉をもらえる日は来るんだよね? そんな不安を持ってしまうのは、あまりにも今日の彼が素敵だからかもしれない。

 華やかな空間だけど、照明が少し落とされててよかった。だって、今の私はきっと……不満顔だから。

 こんなに近くにいるのに、なんだか遠い。

 これが社長と取引先秘書の距離……なのかもしれない。

 
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