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30 サプライズの先に
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しおりを挟むパーティー後に待っていた特別なサプライズ。目線を落とすと、小指に光るピンキーリング。小さな輝きの重みが、これが夢じゃないと教えてくれる。
「指輪……貰ったの初めて」
「そうか」
こんな特別なプレゼント圭吾さんにも貰ったことない。正真正銘、初めて貰った指輪を見るだけで胸がドキドキと大きく音を立てる。
だけど――ずっとそこに嵌めていたかのようなしっくり感もある。
この人……私のこと大好きじゃん。
「私……“わがままで生意気”ですよ」
「知ってる」
「どこかの令嬢とかでもないです」
「だからどうした?」
「なのに……私が欲しいんですか?」
「ああ」
何度も言わせるなと言わんばかりの呆れた視線が落ちて来る。高級ホテルの大きなベッドの上で、好きな人から貰ったサプライズプレゼント達。高鳴る心臓と込み上げる期待。
だってこの人この前言ったもん。
『もう少ししたらちゃんと――お前が欲しい言葉はやる』
それ、今言わないでいつ言うの?
「だったら……ちゃんと言って」
「何をだ?」
「……そこも言わせるんですか?」
意地悪。拗ねたような声に久世社長の唇が微かに弧を描いた。滅多に見せない緩んだ表情と共に、指先をぎゅっと優しく包まれる。
「――言え」
冷たくて、理性的で苦手だと思っていた冷徹社長。
数ヶ月前、一方的な調教宣言された時とは大違い。あの時は最低だと思ってたけど、今は違う。
この人が好き。そして……この人も私が好き。だったらちゃんと――言葉にして欲しい。
もう言葉のない関係は嫌だ。
ちゃんと、言って欲しい。私が好きって。込み上げるわがままな感情を抑えることが出来なかった。
「茉乃のこと好きって……ちゃんと言ってください」
声が震えているのが自分でもわかる。恥ずかしくて、でもどうしても聞きたいから。
わがまま秘書らしい、私のわがまま。多分きっと――彼はこれを求めている。悔しいけど、ちょっとだけ久世社長の考えてること、わかるようになったみたい。これもこの気持ちのせいかな。
また久世社長が小さく笑う。この顔、他の誰にも見せたくない。私だけに見せて欲しい。そんな気持ちが先走って、繋がれた手をぎゅうっと握り返した。こんなにも恥ずかしいことを言わされているのに、手のひらから伝わる温もりが心地いい。
「わがままだな」
「言わせたくせに……!」
「けど悪くない」
そっと、唇が近づいてくる。自然に瞼を落とせば、甘い吐息のあとに唇がまた落ちてきた。好きな人からキスされる幸せに酔っちゃいそうになる。
名残り惜しく唇が離れた瞬間、待ちに待った瞬間が訪れる。
「茉乃」
「……はい……っ」
形のいい唇が私の名前を呼ぶ。痛いぐらいに心臓が音を立ててうるさい。そして――。
「好きだ」
低く心地いい声が紡ぐたった三文字に、私の世界が音を消し、一瞬止まった。
ずっと、言って欲しかった愛の言葉に呼吸を忘れて、代わりに涙が込み上げる。だけどすぐに声を振り絞った。
「私も……久世社長が好きです」
かすかに震えた声でずっと言いたかった気持ちを音にする。その瞬間またキスが落ちてきた。ちゅっと触れるだけの優しくて甘いキスが、私の心をこれでもかというぐらいに愛で満たしていく。
ずっと欲しかった。都合のいい女じゃない肩書きが。
誰かに愛されたかった。ちゃんと私のことを愛してくれる人と出会いたいって思う一方で、誰かに本気になるのが怖かった。
けど……この人は私の不安とか、怖さとか全部吹き飛ばしちゃう。
一方的で冷徹な独占欲で私を翻弄する。カリスマ社長――久世惟真。その熱に翻弄されながらも私は幸せに溺れていく。
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