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31 甘い夜の真実
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しおりを挟む久世社長の話はまだ続いた。
「次にお前に会ったのは九重社長が就任して、秘書になってからだな……けど驚いた」
「……なんでですか?」
「あまりにもお前が生意気でわがままだったからだ」
「え!?」
なにそれ? 驚きにまた首を捻って背後の久世社長を見上げる。その勢いに少しだけふわふわと浮かぶ泡が揺れた。
「パーティーであれだけ泣いていた姿とまるで違ったからな。凛としていて、愛想はいいけど、時折生意気で、秘書なのに自分の都合を口にする。俺から言わせればお前は本当に“わがまま”な秘書だ。だからムカついた」
「……それは……まあ、そうかもしれないですけど……」
「元々、お前のような感情で動くタイプは苦手だ。だから余計にムカついたのかもしれない。だけど……今思えば失恋で泣いているお前を知っていた分、お前が強がって愛想を振り撒いてるのが面白くなかったのかもしれない」
「……面白くなかった?」
「お前は俺に苦手意識持ってただろ? 見ればすぐにわかる。他の奴にはよく笑いかけてたのに、俺にはいつも警戒心抱いていたのは知っている」
「うっ……それは……」
言い当てられた悔しさもあったけど、久世社長から紡がれる私への気持ちを知って胸に込み上げるものもある。
いつだって久世社長は私のことを品定めするみたいに見てきた。あのねっとりとした視線……嫉妬……だったのかな?
「あの日、お前を挑発したのも、挑発に乗ったのも、そのせいだろうな。生意気なお前がムカついた。ただ……あの日わかった」
「わかったって……?」
「――お前に触れた瞬間、理性が崩れた。生意気な秘書なんて思っていたのに、声を聞いた途端にはっきりした。俺はお前を欲しくて仕方なかったんだ。ずっとお前を見てイライラしてたのは、お前が欲しいからだって」
ゆっくりと紡がれる甘い声。いつの間にか熱を孕んだ吐息が耳に触れる。「ぁ……っ」と小さな声が零れて、咄嗟にバスタブの縁を掴んだ。
「いつの間にか、俺はお前に夢中だった」
「……っ、そんなの……ずるいです。今頃言うなんて……」
知らなかったことばかりで情報が追い付かない。
つまり……私が思ってるよりずっと前から――久世社長は私が好きだったってこと?
「早く言ってくれたら……私こんなに悩まずに済んだのに……」
「俺は完璧主義だ。お前の気持ちがわからない内に行動には移さない」
「……まあ……そうかもしれないですけど」
そういうところ本当に久世社長らしい。確かに最初の始まりの日に告白されても断ってたと思う。最初から惹かれていたかもしれないけど……この気持ちを自覚したのは最近だから。
「この前の一件で確信が持てたから指輪を用意した。前もって今日呼び出すことを伝えておくべきかとも考えたが、お前がサプライズ好きなら、それも悪くないと考えたから予め何も言わなかった」
ちゅっと、耳にキスを落とされる。腰を撫でた手のひらの熱がじりじりと焼け付くように肌に吸い付く。
まるで言葉が足りない分、指先で愛情を伝えてくれるような動きに心臓の鼓動が速度を増す。
そっか……この人私のこと欲しくて欲しくて仕方なかったんだ。
そう思うと自然と口元が緩んでしまう。
「ふふっ……」
「どうした?」
「いや、久世社長って私のこと大好きだったんだなと思って」
知らない内に冷徹社長の感情を振り回してたんだって思うと、ほんの少しだけこの人が可愛く思えてきた。怒られるから絶対口にはしないけど。
それに……嬉しくて、ますます感情が募って――やっぱり私は身体の向きを変えて久世社長に甘えるように抱き着いた。もっと触れて欲しい、甘やかして欲しいと伝えるように。
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