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エピローグ
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しおりを挟む「何か予定に差し支えるのか?」
「え……?」
「黒瀬秘書がこうやって口を挟む時には大抵“私的な予定”が絡んでいる」
淡々とした冷静な低い音。だけど嫌味が混じっている。まるで秘書は黙ってろと言わんばかりの言葉。
欲しくて欲しくてしょうがなかった恋人にそんなこと言う? 酷くない?
一瞬の間にいろんな文句が頭を過る。唇を曲げて抗議しようとするけど――ピタリと言い当てられた悔しさを我慢する。
だってネイルがあるから早く帰りたいのは事実だもん。
「別にそう言う訳じゃないです……!」
だけど認める訳にもいかなくて、なんとか誤魔化す。こんなみんなの前で言わなくていいのに。相変わらず冷たい人――じゃなくて意地悪な人。
「ただ……九重も予定が詰まっていますので、これ以上は後日がよろしいかと……」
こういうところが“わがままで生意気”なんだろうな。だけど一度口出しちゃったらもう引くに引けない。もう一度提案を繰り返するとこの場の唯一の味方――椛乃社長が同意を示してくれた。
「そうですね。私も本日社で業務が残ってますので、後日の方が助かるかもしれません。どうでしょう?」
「九重社長がそう言うなら、そうしましょう。秋月――」
「はい、候補の日時をピックアップして後程黒瀬さんにご連絡します」
私のせいで少しピリついた雰囲気を椛乃社長と秋月さんがなごませてくれる。そのお陰で、30分押した合同ミーティングは無事終了。
各自が片付けを始めると私も持って来ていたパソコンを閉じて、資料を片付ける。
帰る準備が出来たところで、椛乃社長と共に久世社長に頭を下げた。
「久世社長、本日もありがとうございました」
「ありがとうございました」
絶対また“わがまま”って言われるんだろうな。そんな予感は当たった。頭を上げた私が見たのは、何か言いたそうな久世社長の冷たい瞳。
可愛い恋人と離れないといけない時間なんだからちょっとは寂しがってくれたら――なんて。もちろん、そんなことあるわけなかった。
「相変わらず黒瀬秘書は忙しいみたいだな」
「私……プライベートも大切にするタイプなんです」
「その様だな」
周りからみれば変わりないやり取り。けど私だけは知ってる。こんなにも久世社長が私に突っかかるのは――私のことが好きで好きで仕方ないから。そう思うだけで、ほんのちょっとこの冷徹社長が可愛く見えてきた。――絶対口には出来ないけど。代わりに「またよろしくお願いします」とありきたりな挨拶を返す。頭を下げた時ほんのちょっと口元が緩んじゃったのは内緒。
まだ久世社長はちょっと不満そうだけど、私は気にせず椛乃社長とLUNARIAをあとにした。
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