わがまま秘書は冷徹社長の独占愛に溺れていく

椿綾あこ

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エピローグ

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「どちらにせよ、かなり検討が必要だな」
「そうですね。予算もありますし、色々検討が必要だと思います」
「今井、予算は今どうなっている?」
「確認します。少々お待ちください」
 
 私の無言の抗議も虚しく、椛乃社長も久世社長も話を止める様子はない。

 今日は久世社長と恋人になって初めて仕事中に会えた日。なのに、いつも通り変わりないのもちょっと不満。けど流石にそれも口にしちゃまずいよね?

 久世社長に「仕事中に会えて嬉しい」なんて甘い言葉を言って欲しい訳じゃないけど、可愛い恋人に会えたんだから、……なんかこう、さりげなく視線を送ってくれるとか、ちょっと口角を上げてくれるとか……。  恋人なんだから、そういうのがあってもいいんじゃないの?

 久世社長はいつも通り、私をじぃーって見ただけ。あの品定めしてるような冷たい視線。あの視線の奥に隠れた強い独占欲を知ってしまった分、いつもよりちょっと恥ずかしかったのは内緒。

「こちら予算の消化率です」と社員がパソコン画面を久世社長に見せる。それを見ると彼は少し眉根を寄せた。
 
「九重社長、どう思いますか? この数字では厳しいかと」
「悪くはない……ですけど、久世社長の言う通り、あまり開発費にかける予算はありませんね……」

 うーん、と九重社長が首を横に倒す。久世社長はパソコン画面と睨めっこをしながら、社員達と幾つか意見を交わす。

 これ……私からすれば完全に煮詰まってる状態なんだけど。

 言うなら今かな? 今しかないよね?

 もう一度時計の針を確認して顔を上げる。よし――と気合を入れるように会議机の下で拳を握ると私はようやく口を開いた。

「あの……!」

 少し緊張感漂う会議室に私の声が響く。全員の動きがピタリと止まり、多くの目が椛乃社長の隣の私に注がれた。その中でも真っ先に飛んできた冷たい視線の主は言うまでもなく恋人の久世社長。

「どうした?」
「もう4時過ぎています。これ以上は後日に改めるのはどうでしょう?」

 出来るだけ声のトーンを上げての提案は会議室の全員に聞こえたはず。だけど効果はあったようで、ハッとしたように何人かが時計に視線を向ける。その1人が椛乃社長だった。

「確かに……そうですね。気づかずすみません、つい熱中してしまって」

 まるで場を和ませるように椛乃社長が笑うと、周りの社員達が同意の為に頷く。だけど、ただ1人――久世社長だけが私に冷たい視線を送っていて、反射的に怯みそうになる。

「な、なんですか……?」

 そんな小さな疑問を零す声には緊張の色が混じっていた。
 
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