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エピローグ
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しおりを挟む……え? 誰?
目の前には見知らぬ人。部屋を間違えた? いや“茉乃ちゃん”って言われたし……けど私はこの人を知らない。
瞬きをする一瞬でいろんな感情が身体を目まぐるしく駆け巡る。
「ごめん、びっくりさせちゃったね」
「えっと……」
明らかに驚きを隠せない私に、久世社長の部屋から出てきた彼はくしゃりと笑う。えくぼが出来て、親しみやすそうな雰囲気……なんて考えている場合じゃない。
すると、部屋の奥から見知った足音が近づいてくる。呆れたような声が続いて、私の混乱を収束させた。
「勝手に出るなと言っただろ」
大きな手が、見知らぬ男性を押しのけ、私が入りやすいように玄関のドアを大きく開けてくれた。
数時間ぶりに見た久世社長はスーツを脱いで、ラフな部屋着姿。 私だけが知っている、恋人としての顔だ。
呆れたような声は相変わらずだけど、その姿を見るだけで私はほっと息をついた。よかった、部屋を間違えたとかじゃなくて……。
「びっくりさせたな。入れ」
「あ……はい……お邪魔します」
後ろで何か言いたそうな男性を制した久世社長に促されるまま、部屋に上がる。玄関には見たことのないスニーカーが一足あったけど、多分この知らない人の分だと思う。
そして、先にリビングへ向かった2人の後を追って、私も廊下を進む。本当に誰? 久世社長の友達? だけどさっきの笑顔……なんかちょっと面影がある。
そんな疑問はすぐに解消された。
見慣れたリビングに到着するとくるっと、例の男性が振り返ってまた人懐っこい笑顔を見せた。
「ごめん、ごめん! びっくりさせちゃったよね」
「あ、えっと……」
「どちら様ですか?」と素直に続ける。すると代わりに口を開いたのは不満そうな表情の久世社長の方だった。
「――弟だ」
「……えっ!?」
短い言葉に耳を疑い、驚きの声が飛び出る。
「久世社長の弟さん!?」
嘘! この人が!?
「どうも、久世燈真っていいます。兄貴がお世話になってます」
驚きのあまり、あんぐりと口が勝手に開く。だから笑った顔がちょっと久世社長に似てるんだ……。
久世社長に弟がいるってことは聞いてる。たしか今海外で働いていて、椛乃社長とは同じ大学。それがきっかけで椛乃社長と久世社長は知り合うことになったんだよね……? 確か今も海外で働いてるって聞いたけど……。
話を聞いた時にどんな人なんだろうって考えた。けど、今目の前にいる人は想像と全然違う。だって――。
「久世社長と全然違う……!」
「あはは! でしょ? よく言われるんだよねぇ」
久世社長なら絶対にしない間延びした声。久世社長独特の低音よりちょっと高い。だけどよく見ると目元とかやっぱり似ている。けど見た目から理性的な雰囲気をまとっている久世社長とは違って、温かみのある雰囲気。どちらかと言うと秋月さんっぽいオーラ。だけど秋月さんより――ずっとチャラい。 軽くて遊び慣れてるって感じかな。
どちらにしろ、久世社長とは全然違うことに私は驚きを隠せなくて、恋人とその弟と交互に何度も見ずにはいられない。
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