わがまま秘書は冷徹社長の独占愛に溺れていく

椿綾あこ

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「じゃあもう一個“わがまま”言ってもいいですか?」

 わがままって言われるの最初は嫌だった。けれど、もう私と久世社長にとってはもう定番のやり取りなのかもしれない。
 だからもう我慢はしない。“わがまま”もいっぱい言いたい。
 どうせ言いたいこと我慢してもバレちゃうんだから、もう我慢するする必要なんてない。仕事中はともかく、今みたいな恋人タイムには余計に。

「なんだ?」

 キッチンカウンターで恋人の胸に顔を埋め、その存在を確認する。微かに香る彼の匂いに一日の疲れとか、急に弟さんに会った驚きとか一気に消えていく。いつからこの香りに落ち着くようになったんだろう。

「今日泊まってもいいですか?」

 最低限のメイク道具は持ってるし、ここはLUNARIA社長の家、スキンケア用品ならある程度揃ってることはもう知っている。足りないものがあればコンビニに買いに行けばいいし、明日の朝早めに送ってもらったら着替えて出勤する時間は十分にある。

 それに、会ってしまったらもう離れたくないから。
 恋人の腕の中で甘えるように久世社長を見上げる。ちょっと上目遣いにしたのは――もちろんわざと。

 私の“わがまま”に久世社長が口元を緩める。あ、多分これ喜んでる。つまり返事はOKってこと。久世社長の長い指が私の頬を撫でると、指先から伝わる熱が溶けあって私まで唇が緩んでしまう。
 
「好きにしろ」
「嬉しいでしょ?」
「調子に乗るなと言っている」

 こんなにも胸が熱くなるなんて思ってもなかった。
 怖い、苦手って思っていた彼の一言に心が震えて、感じる温もりは今の私にとって欠かせない。

 何を考えているかわからない冷徹社長との関係が始まって数ヶ月。私の知らないところで、ずっと私を求めてくれていたのだと知ってからはずっと愛しさが増す。

 この人の独占欲に溺愛された私はすっかり溺れちゃってる。

「あ、もう一個ありました」
「まだあるのか?」

 呆れたような声が返ってきても、もう怯まない。この人は冷たくて素っ気なく見えるけど、胸の内に熱いものを秘めている人。私に対してはものすごーく独占欲を持ってるし。
 
「仕事の時以外は……惟真さんって呼びたいです」

 久世社長を見つめながら両想いになった時からずっと考えていた“わがまま”を伝える。
 仕事中はちゃんと「久世社長」と呼ぶ。だけど、仕事の人が誰もいない空間では――彼の名前をちゃんと呼びたい。そう思うのって彼女なら当然でしょ?

「ああ、わかった」

 許可と共にゆっくりと惟真さんの唇が近づいてくる。私の大好きな温もりを早く感じたくて、気がついたら背伸びをしてキスをねだっていた。

「茉乃」
「早くキスして、惟真さん」

 私はあなたの“わがまま秘書”で“わがままな恋人”。――もっともっと私を夢中にさせてください。

 そう願っている内に普段の態度からは似合わないぐらい甘くて優しいキスが私の世界を彩る。
 甘いキスの余韻に浸りながら、私は彼の名を囁いた——惟真さん、と。

 私、黒瀬茉乃。25歳。職業、化粧品会社社長秘書。
 コラボブランドを立ち上げている同業の冷徹社長に溺愛されてる“わがまま秘書”です。

 

 わがまま秘書は冷徹社長の独占愛に溺れて行く――甘く、深く、心まで奪われて―― 了
 
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