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エピローグ
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しおりを挟むようやく訪れた2人っきりの時間。ビジネスの場と違ってスーツを脱いだ久世社長はまだちょっと見慣れないけど、こういう姿が見られることこそ“恋人”の特権だよね。
「久世社長」
「どうした? 夕飯まだだろ? 簡単なものでいいなら――」
「先にこっち見て」
まだ夕飯を食べてない私に気を遣ってくれた久世社長がキッチンへと移動する。彼の後ろ姿を追って、冷蔵庫を開けた彼の袖をぽんと引っ張る。視線が下りた瞬間、私は新しいネイルを見せるように手を差し出した。声は思わず弾んでしまう。
「可愛いですか?」
個人的にはお気に入りのネイル。この冷徹社長はどんな感想をくれるだろうか?
けど多分――。
「悪くない」
ほら来た。お得意のやつだ。
「またそれ……ちょっとは可愛いって言ってくれてもいいのに」
「不満顔だな」
「だって言って欲しいじゃないですか」
唇を曲げて抗議してみる。だけど褒め言葉の代わりに降ってきたのは優しいキスだった。
「ん……っ」
触れるだけの口付けに瞼を落とす。唇に残る温度と、彼の胸の鼓動が伝わる。腰を抱かれた感触に、思わず身体がとろける。あっという間に甘い空気へと変化してしまった。
広いキッチンで会議中は出来なかったことを出来るのも“恋人”の特権。
冷たいのに、キスだけは優しくて甘い。唇から強い独占欲が伝わってくる。
「……ずるい」
こんなキスされちゃったら、文句言えなくなっちゃう。
名残り惜しく唇が離れると、長い指が小指のピンキーリングを愛おしそうに撫でた。
「お前が帰ったあと、ウチの社員が騒いでた」
「騒いでたって?」
「お前に男が出来たってな」
その言葉は拗ねたようで、面白くないとその顔に書いてある。
まあ、私は可愛いし、“花園”の1人だし、指輪をしていると「男が出来た」ってみんなが噂するのも無理もない。実際会社でもみんなに言われてるから。
「どんな気分ですか? みんなが大好き“花園”の1人を独占出来る気分は?」
「調子に乗るな」
抱き寄せられたまま、身体を押され気がつけば腰にキッチンカウンターに当たって、逃げ場を失ってしまう。冷たさが背中をくすぐる。逃げようとする気持ちより、逆に早くもっと触れて欲しいという欲がふくらんでしまった。
「相変わらず、お前は“わがまま”で“生意気”だな」
呆れたような声。だけど私の瞳を覗き込む冷たい瞳の奥に見える独占欲が、私の隠すことの出来ない欲情を引き出す。夕飯はいいから――このままもっと触って欲しいなんて……どうかしてるかな?
だけど確かに胸の奥がじんわりとして、幸福感に包まれている。
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