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1章
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5月に入ってうららかな陽気が続く。ゴールデンウィークの最中に立野はとある宅に上がりこんで、統計学を学んでいた。
「全国の高校生の成績を母集団として、うちの学校のある学年の成績、いわゆるサンプルを取り出すことをサンプリングと――」
「そんな初歩的なこといいですから」
「ふーん、初歩的ねー。お前、高校に入学して1ヶ月だろ?」
「先に理解できるところまでは独学でやってきたんです」
「なるほどねー。ま、いいけど。じゃあ、そのサンプルについて詳しくやっていくか」
「標準偏差は理解できたんで、標準誤差からお願いします」
「了解~」
「・・・・・・アンタ、こんな調子じゃ職権濫用なんて簡単にしてそう」
立野は以前から渡されていた統計学のテキストを閉じて、奴に視線を向ける。ボトルのウォッカをロックで嗜みながら、立野の話を興味なさげに聞いていた。
いかにも話が通じない類の輩のように見えるが、統計学を教えられるほどの頭をもっているだけに、立野もため息一つで我慢する。
「職権濫用はお互い様だろ? お前だって去年までの制度を復活させようとしてるんだからよ」
「それは・・・・・・」
言葉を詰まらせ俯く。たしかに、道場破りのようにして選挙もなしに役員へなったのは、一条が会長を務めているなら自分も側で支えたいというのも一理ある。だが、腑抜けた制度になってから一条会長へ向けられた要望の案件が跡を絶たず、それを一つ一つ検討しているところを近くで見てきて、我慢ならなかったのが大半だ。
「一条会長だって同じ生徒。以前のように上下関係がはっきりしていれば、生意気をいう奴らもいなくなるっていうのに」
「でも、あの会長がそう望んだ。お陰で、生徒は目一杯高校生活を謳歌できるようになった。それは事実だ」
「僕は、少しでも一条会長が楽にできる方法があるなら、マジョリティの意見も要らない・・・・・・」
「これはまた随分ご執心だな。ま、それくらいの気持ちがなけりゃ、会長を裏切る行為なんて得策じゃねぇもんな」
「っ、できれば、会長の名に傷がつかないように制度復活を浸透させたい」
「そりゃ、周りを操作するってか」
否定はしなかった。
「会長も気付かないうちに、ある程度までは浸透させることはできる。そこまで持ってくることができれば、あとは堕ちるところまで堕ちるしかないな。こういうのって、1人や2人が止めに入ったところで無力だ。ま、その時点で会長の信頼は地に落ちるだろうけど、そこは俺がフォローしてやればいいってことだな」
「で、できるのか!?」
「ああ、ここで俺が奴のフォローをすりゃ、地に落ちることはねぇだろ」
「そ、そっか・・・・・・後は僕が頑張りさえすれば」
(ここで俺の矛盾に気付かねぇなんて、どこまで会長さんに執着してんだか。そのお陰で、俺も俺で欲しいもんを手に入れられるってわけだが)
隣りに座っていた距離を縮められ、あまつさ輪郭をなぞって顎を持ち上げると、触れるだけのキスを押し付けた。
「抵抗しないなんて、話が分かるじゃん」立野にとっては、身を粉にしてでも成し遂げなければならないことであった。
「でも、俺、粉骨砕身の精神、嫌いじゃない。できる限りは力になってやる」
「全国の高校生の成績を母集団として、うちの学校のある学年の成績、いわゆるサンプルを取り出すことをサンプリングと――」
「そんな初歩的なこといいですから」
「ふーん、初歩的ねー。お前、高校に入学して1ヶ月だろ?」
「先に理解できるところまでは独学でやってきたんです」
「なるほどねー。ま、いいけど。じゃあ、そのサンプルについて詳しくやっていくか」
「標準偏差は理解できたんで、標準誤差からお願いします」
「了解~」
「・・・・・・アンタ、こんな調子じゃ職権濫用なんて簡単にしてそう」
立野は以前から渡されていた統計学のテキストを閉じて、奴に視線を向ける。ボトルのウォッカをロックで嗜みながら、立野の話を興味なさげに聞いていた。
いかにも話が通じない類の輩のように見えるが、統計学を教えられるほどの頭をもっているだけに、立野もため息一つで我慢する。
「職権濫用はお互い様だろ? お前だって去年までの制度を復活させようとしてるんだからよ」
「それは・・・・・・」
言葉を詰まらせ俯く。たしかに、道場破りのようにして選挙もなしに役員へなったのは、一条が会長を務めているなら自分も側で支えたいというのも一理ある。だが、腑抜けた制度になってから一条会長へ向けられた要望の案件が跡を絶たず、それを一つ一つ検討しているところを近くで見てきて、我慢ならなかったのが大半だ。
「一条会長だって同じ生徒。以前のように上下関係がはっきりしていれば、生意気をいう奴らもいなくなるっていうのに」
「でも、あの会長がそう望んだ。お陰で、生徒は目一杯高校生活を謳歌できるようになった。それは事実だ」
「僕は、少しでも一条会長が楽にできる方法があるなら、マジョリティの意見も要らない・・・・・・」
「これはまた随分ご執心だな。ま、それくらいの気持ちがなけりゃ、会長を裏切る行為なんて得策じゃねぇもんな」
「っ、できれば、会長の名に傷がつかないように制度復活を浸透させたい」
「そりゃ、周りを操作するってか」
否定はしなかった。
「会長も気付かないうちに、ある程度までは浸透させることはできる。そこまで持ってくることができれば、あとは堕ちるところまで堕ちるしかないな。こういうのって、1人や2人が止めに入ったところで無力だ。ま、その時点で会長の信頼は地に落ちるだろうけど、そこは俺がフォローしてやればいいってことだな」
「で、できるのか!?」
「ああ、ここで俺が奴のフォローをすりゃ、地に落ちることはねぇだろ」
「そ、そっか・・・・・・後は僕が頑張りさえすれば」
(ここで俺の矛盾に気付かねぇなんて、どこまで会長さんに執着してんだか。そのお陰で、俺も俺で欲しいもんを手に入れられるってわけだが)
隣りに座っていた距離を縮められ、あまつさ輪郭をなぞって顎を持ち上げると、触れるだけのキスを押し付けた。
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「でも、俺、粉骨砕身の精神、嫌いじゃない。できる限りは力になってやる」
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