アヤ取り

ゴンザレス

文字の大きさ
26 / 39

3

しおりを挟む
 それから事務所に戻ると、会長の桔平が顔を出していた。すぐさま最敬礼で桔平に挨拶する。

「昨日は誕生日会だったらしいな」
「え、あ、はい! 鴬にしてもらいまして」
「ほう……ん、それがプレゼントだったのか」

 桔平の視線の先には、仁作の強調的な骨格の腕に提げているブレスレット。「それ、よく見せてくれ」と手を差し出してきて、外すことを促された。
 それに逆らわずに金具を外して、桔平の手に乗せる。

「……なるほど、本当に腕輪というか手錠のようだな、これは」
「結構いかついですよね」
「——お前さんの腕には似合ってるから、アイツも選びやすかったんだろう」

 ブレスレットを隈なく凝視する桔平は閑話休題に「それはおいおいとして、昨日の誕生日会は盛り上がったらしいな?」と仁作に視線を戻した。

「え、ええ」

(色んな意味で盛り上がってしまったけど)

 頭を掻き回したい衝動に駆られる。

「それで、楽しくて寝ちまったのか。鴬にそのパーティーが終わり次第書斎に召集をかけていたんだが」

 まさに寝耳に水だった。仁作が慌てて謝罪の言葉を述べると、「……知らなかったのなら別にいい。急ぎの話ではなかったからな。——むしろ、このタイミングが良かったのかもしれん」と桔平は表情を緩めた。

「私からもプレゼント用意してたんだよ。書斎にそれがあるから、手が空いた時に来なさい」

 桔平はそう言って事務所を後にした。まだまだ現役の桔平の背中を見届けて、事務所の上座であるオフィスの最奥部の部屋に戻る。社長椅子のような深い背もたれ付きの椅子に腰かけて、外したブレスレットを付け直しながら会長からの「プレゼント」の言葉を反芻する。

 「親父」ではなく「父親」同然の眼差しを向け続けてきた仁作にとっては、幾つになっても自慢の桔平であった。

 苦手なデスクワークでさえ、今日はやる気に漲っている。それは、桔平だけのおかげではないと差し込む光の反射したブレスレットが主張する。

(っとに、常盤家にどれだけ恩を返しても返したりねぇな。一家揃って義理人情の塊だ——いや、鴬は微妙だが、優しいことには変わりねぇか)

 部下もあっと驚く集中力を見せた仁作は、早々と仕事を切り上げて書斎へ向かった。

 「おお、来たか。そこ座れ」と促した桔平は書斎の本棚から一冊の冊子を取り出す。

「私からのプレゼントだ」

 真っ白な台紙でそれこそ、フォトブックなのだろうということは見て取れた。

(もしかして、鴬の七五三の写真か?)

「開けてみていいですか」

 頷いた桔平を確認してからゆっくりと開いてみる。そこに映るのは写るのは可愛い幼き頃の鴬ではなく、一張羅を着込んだ1人の見知らぬ女性だった。煌びやかな着物に身を包み、清純派と見て取れる柔和な笑みを浮かべている。

 しばらく見つめても仁作に心当たりがなく、桔平に思わず聞いてしまう。

「この人は、絶賛婚活中の女性だ。一度会ってやるだけでもいいから、会ってやってくれ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

幼馴染みが屈折している

サトー
BL
「どの女もみんな最低だったよ。俺がちょっと優しくしただけで、全員簡単に俺なんかと寝てさ」 大学生の早川 ルイは、幼馴染みのヒカルに何をやっても勝てないといつも劣等感を感じていた。 勉強やスポーツはもちろんヒカルの方ができる、合コンはヒカルのオマケで呼ばれるし、好みの女子がいても皆ヒカルの方にとられてしまう。 コンプレックスを拗らせる日々だったが、ある日ヒカルの恋愛事情に口を挟んだことから急速に二人の関係は変化していく。 ※レオとルイが結ばれるIFエピソードについては「IF ROOT」という作品で独立させました。今後レオとのエピソードはそちらに投稿します。 ※この作品はムーンライトノベルズにも投稿しています。

処理中です...