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1章
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「く、黒田……君」
「んー?」
組み敷いた田淵を跨がり膝を立て、華奢な腰をホールドする。多少の抵抗こそすれど、力で敵うとは微塵も思っていない。
それは彼も既知の事実のはずだ。だからこそ、彼がしっかり逃げこまないよう下肢で押さえつける状況が理解できない。
「えっと、雰囲気が、ちょっと怖い? よ」
「んー、そうかな」
視線が絡み合うようにして交わっているが、彼の視線がこちらまで届いていない。話を聞いているようで、聞いていないのかもしれないのだ。
「男」の顔だから。
田淵はこれ以上、拒否の類の言葉を呑み込んだ。
「ちゃんと残さず食べるからね」
黒田は声を弾ませて、田淵の首筋にかぶりついた。
目を開く程の痛みなら、思わず拒否の言葉が出てきていただろう。だが、実際は歯形がつく程度の甘噛みだった。
「オカズって、僕のことだったんだ」
「ふっ——遅いよ」
初めての感覚だった。噛み付かれることが気持ちいいだなんて、想像もしていない。
「ひぃっ」と声を出してしまい、慌てて口元を両手で隠す。
そこへ、黒田は患部となった歯形を舌でなぞる。どうやら、彼は唾液量が少ないらしく、舌触りが猫のように、ざり、としていた。
この感覚はいわゆる「快感」だ。身を捩ってそれに耐える田淵は、それを自覚していない。
「その腰のライン、すっごいそそるね……こんなので身を捩ってくれるなんて。これ以上の刺激を与えたら、どんな反応してくれる?」
彼にとって、今のはほんの序の口らしい。興味津々の黒田は、息も絶え絶えになる田淵に「大丈夫、急いでやらないから。大丈夫だよ」という。
無論、田淵にアクションを返すだけの余裕はない。
だが、黒田を見る限り、田淵同様に呼吸が荒い。それだけでなく、口数が徐々に減っている。そういう時の会話とは口数少ないものなのか。どちらにせよ、田淵は余裕が最初からないので、黒田から首元を刺激され、服を捲られ、筋肉皆無の腹筋をなぞられているだけでいっぱいいっぱいだ。
しかし、田淵は途切れ途切れになりながらいった。「黒田、君……僕は、美味しい、ですか?」。
「ま、まぁ、僕は美味しいには程遠いかもしれないけど」
「——っ、俺、理性手放さないよう、必死に自制心をかき集めてるんだ。そんな俺が今、理性プッツンしたら、ヒロキさん死ぬよ?」田淵の喉元で黒田は歯軋りを鳴らす。
生唾を呑み込んだ音が二人の間に流れる。
「僕、こういう経験があまりないからよくわかんないけど、黒田君が今、すごく男の顔をしていて、僕はそれに猛烈にときめいてしまっていることだけは確かなんだよね。だから、えっと——」
「抱き潰されるってことなんだけど、ちゃんと理解してる?」
黒田の手は田淵の腹部から下半身、スウェットが助けてするりと陰部を顕にさせた。
「こんなに興奮してくれてるとは想像以上だな」田淵の陰茎を見て嬉々とする。
粘着質な水音が羞恥心を駆り立てる。「え、ちょ、まっ——」。
「待てないよ。だって、俺、ヒロキさんに好かれたんだよ? 待ってたよ、その言葉……やっと、やっとなんだ」
「……っ」
黒田が大事な言葉を言っている。それを真剣に聞きたい。なのに、彼は田淵のナニを慣れた手つきで追い詰めるので、快感と歓喜が混同する。
「じゃ、じゃあ、僕が今抱き潰されたら……それは……すごく愛しいってことなんだ、ね」
「っもう、ヒロキさん!! 経験ないくせに煽り上手ってどういうことなのか、後からじっくり聞かせてもらうから!」と田淵の童貞をあっさりと断定した。
「っやっぱり僕が経験ないのバレてた……あは」
「——じゃないと許せないでしょ。今までどれだけ……」
黒田は田淵に初めての深いキスをした。舌を入れられること自体が初だが、田淵の奥歯さえ彼の舌で掘られるような獣同然のキス。しかし、荒療治ともいえるようだった。
これだけ濃厚で動物的だと、アラサーの田淵が童貞であり、リードさえできないマグロであっても劣等感に似た感情は芽生えてこなかった。
それだけ、黒田も余裕がないのだから。
むしろ、なけなしの理性を拾いながら、田淵をスマートにリードしていたことを知れたのだ。自我を維持しようと足掻く黒田に「黒田君、好き……すごく、好き——」と口走る。
好きな人のタガが外れることは、貪ってもらえることの充足感と多幸感。与えたこともなければ受け取ったこともない、未曾有の境地だ。
彼を見ていると、自然と羞恥心を上回る興奮を感じて、田淵自身も理性を脱いでいった。
「んー?」
組み敷いた田淵を跨がり膝を立て、華奢な腰をホールドする。多少の抵抗こそすれど、力で敵うとは微塵も思っていない。
それは彼も既知の事実のはずだ。だからこそ、彼がしっかり逃げこまないよう下肢で押さえつける状況が理解できない。
「えっと、雰囲気が、ちょっと怖い? よ」
「んー、そうかな」
視線が絡み合うようにして交わっているが、彼の視線がこちらまで届いていない。話を聞いているようで、聞いていないのかもしれないのだ。
「男」の顔だから。
田淵はこれ以上、拒否の類の言葉を呑み込んだ。
「ちゃんと残さず食べるからね」
黒田は声を弾ませて、田淵の首筋にかぶりついた。
目を開く程の痛みなら、思わず拒否の言葉が出てきていただろう。だが、実際は歯形がつく程度の甘噛みだった。
「オカズって、僕のことだったんだ」
「ふっ——遅いよ」
初めての感覚だった。噛み付かれることが気持ちいいだなんて、想像もしていない。
「ひぃっ」と声を出してしまい、慌てて口元を両手で隠す。
そこへ、黒田は患部となった歯形を舌でなぞる。どうやら、彼は唾液量が少ないらしく、舌触りが猫のように、ざり、としていた。
この感覚はいわゆる「快感」だ。身を捩ってそれに耐える田淵は、それを自覚していない。
「その腰のライン、すっごいそそるね……こんなので身を捩ってくれるなんて。これ以上の刺激を与えたら、どんな反応してくれる?」
彼にとって、今のはほんの序の口らしい。興味津々の黒田は、息も絶え絶えになる田淵に「大丈夫、急いでやらないから。大丈夫だよ」という。
無論、田淵にアクションを返すだけの余裕はない。
だが、黒田を見る限り、田淵同様に呼吸が荒い。それだけでなく、口数が徐々に減っている。そういう時の会話とは口数少ないものなのか。どちらにせよ、田淵は余裕が最初からないので、黒田から首元を刺激され、服を捲られ、筋肉皆無の腹筋をなぞられているだけでいっぱいいっぱいだ。
しかし、田淵は途切れ途切れになりながらいった。「黒田、君……僕は、美味しい、ですか?」。
「ま、まぁ、僕は美味しいには程遠いかもしれないけど」
「——っ、俺、理性手放さないよう、必死に自制心をかき集めてるんだ。そんな俺が今、理性プッツンしたら、ヒロキさん死ぬよ?」田淵の喉元で黒田は歯軋りを鳴らす。
生唾を呑み込んだ音が二人の間に流れる。
「僕、こういう経験があまりないからよくわかんないけど、黒田君が今、すごく男の顔をしていて、僕はそれに猛烈にときめいてしまっていることだけは確かなんだよね。だから、えっと——」
「抱き潰されるってことなんだけど、ちゃんと理解してる?」
黒田の手は田淵の腹部から下半身、スウェットが助けてするりと陰部を顕にさせた。
「こんなに興奮してくれてるとは想像以上だな」田淵の陰茎を見て嬉々とする。
粘着質な水音が羞恥心を駆り立てる。「え、ちょ、まっ——」。
「待てないよ。だって、俺、ヒロキさんに好かれたんだよ? 待ってたよ、その言葉……やっと、やっとなんだ」
「……っ」
黒田が大事な言葉を言っている。それを真剣に聞きたい。なのに、彼は田淵のナニを慣れた手つきで追い詰めるので、快感と歓喜が混同する。
「じゃ、じゃあ、僕が今抱き潰されたら……それは……すごく愛しいってことなんだ、ね」
「っもう、ヒロキさん!! 経験ないくせに煽り上手ってどういうことなのか、後からじっくり聞かせてもらうから!」と田淵の童貞をあっさりと断定した。
「っやっぱり僕が経験ないのバレてた……あは」
「——じゃないと許せないでしょ。今までどれだけ……」
黒田は田淵に初めての深いキスをした。舌を入れられること自体が初だが、田淵の奥歯さえ彼の舌で掘られるような獣同然のキス。しかし、荒療治ともいえるようだった。
これだけ濃厚で動物的だと、アラサーの田淵が童貞であり、リードさえできないマグロであっても劣等感に似た感情は芽生えてこなかった。
それだけ、黒田も余裕がないのだから。
むしろ、なけなしの理性を拾いながら、田淵をスマートにリードしていたことを知れたのだ。自我を維持しようと足掻く黒田に「黒田君、好き……すごく、好き——」と口走る。
好きな人のタガが外れることは、貪ってもらえることの充足感と多幸感。与えたこともなければ受け取ったこともない、未曾有の境地だ。
彼を見ていると、自然と羞恥心を上回る興奮を感じて、田淵自身も理性を脱いでいった。
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