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「うーわー……。随分大きな声で言い合っているねぇ」
合格祝いと称して酒場で度数の高いお酒を注文して、炙ったチーズを食べながらお酒を楽しんでいる時に、一角で五人組の冒険者がかなり大きな声で言い争っていた。
その五人の会話の中から何やら聞いたことのある名前が何度も出てくるが、特に興味も無いので背景音楽のようなものと捉えることで、関心を無くす。
あんまりにも大きな声で叫んで罵り合うように口論しているので最初は呆れるしか無かったが、少し経てば案外慣れてくるものだ。
ちなみに今、ユウナは酒場の外にいる。なんでも、会いたく無い連中がいるかららしい。
会いたく無いなら殺してしまえばわからせてしまえばいいのにと思うが、それができないのが人間社会。人間は一回死んだらそれっきりだ。
ユウナがいないといまいち盛り上がりも無いので、炙りチーズとブランデーを片してから足早に酒場から出る。この時まだ五人組冒険者は激しく言い争っており、近くを通って見ると女性四人に男性一人という変わった構成で、それだけで何が目的なのかを察した。
「お待たせ、ユウナ」
「まったく、昼間から酒なんか飲んで。随分とお気楽なものだな、真祖殿」
組合の外で待っていたユウナに声をかけると、呆れたようにため息交じりでそう言われる。
「あんなお酒、ジュースとそう変わらないよ。酔っ払っちゃっても、そうなる前の体を保存してあるんだから、それを適応させちゃえば問題無いし」
「そんな正常な判断ができればいいがな」
その言い方が気に食わなかったようで、ぷくっと頬を膨らませる。こういうところは見た目年齢相応なのだが、実年齢は聞いていないが昨日一日一緒に過ごしている間に、三桁は確定した。
実年齢と比べて精神年齢は見た目年齢に依っているようだ。
「それで、どうする?」
「どうするって?」
「お前な……。俺がお前と組むのは俺がお前を殺してしまった責任を取るためで、お前はあることをしていてそれを解決すると言っていただろ。そのあることってのは一体なんなのか、俺はまだ聞いていないぞ」
「言いたくないというのであれば、別に言わなくても構わないが」と付け加える。
「どうやってわたしを殺したのかの観察する対象でもあるけど、それは置いておきましょうか。そうね、ちょっとどこに耳があるか分からないこんな場所じゃ、少し話しづらいかな。だから何も言っていないの」
周りを見回しながら、ここでは話せないと言うシルヴィア。
宿の部屋も完全に個人の空間となってはいるが、それでもどこから誰が見聞きしているのか分からない。
なら、話は早い。
「じゃあ、さっさとここから出るか。移動しながらなら、お前の目的も話しやすいだろう?」
街を出ると提案すると、シルヴィアは目をぱちくりとさせる。
「そうしてくれるのは嬉しいけど、いいの?」
「いつまでも目的を黙ったままにされるのは、協力する側としても癪だ。さっさとお前がやろうとしていることを知って、この先の行動予定を立てておきたい。無駄なことはしたくないのでな」
「んー……、行動予定立てても十割上手くいかないと思うよ」
「何故そう言い切る」
「それも移動しながら話すけど、超大雑把に話すと人間の常識に一切当てはまらないからかな」
もうそれだけで何が関わっているのかを大方推測できたが、それだけで決め付けるのは致命的になるのはゲオルグの考え無しな行動のおかげでよく知っているので、何も言わないでおく。
そうと決まれば早速部屋を取ってある宿に戻り、部屋に置いてある着替えなどの荷物を回収して引き払う。
シルヴィアが連れ込み娼婦ではないと言う誤解は解けたが、その後にされた恋人という誤解は最期まで解けなかった。
なんでも、知り合ったばかりにしてはシルヴィアの方がやたら親密に話しているかららしいが、それだけで勘違いされるのは御免被りたいものだ。
というか、恋人だというなら部屋を取る時に一緒にいるはずだろうと、部屋を引き払ってから内心で声高に言った。
宿屋を出た後に移動手段で話し合うが、シルヴィアの移動速度が常識的では無いので最初は馬車を借りようと思ったが、やっぱりお金がかかるので自分の足で走っての移動となった。
シルヴィアがどれだけの速さで走れるのかを聞くと、本気を出せば八キロを二十秒から四十秒で走破できるらしい。もうレベルが違い過ぎて笑うしかない。
ただ本気を出して走ると疲れるようなので、移動速度はユウナに合わせることにした。
ユウナ自身も呪力を使った強化に合わせて全力を出して走れば、シルヴィア程では無いがそれなりの速度は出せるし、呪力によって体力の消費をある程度抑えられるのでかなり長距離の移動が見込める。
シルヴィアはその速度に合わせて移動してくれることに同意してくれて、向かい方向も彼女が決めた。
その日のうちに次の街に着かないようであればユウナを抱えて全力を出すことになった。そうならないように、速めのペースで移動した方がよさそうだ。
もしかしたら野営もするかもしれないので、長期保存の利く食材をいくらか購入してシルヴィアの影の中に放り込んで保管し、街の外に出て少しでも次の街に早く着けるようにと最初から飛ばす。
合格祝いと称して酒場で度数の高いお酒を注文して、炙ったチーズを食べながらお酒を楽しんでいる時に、一角で五人組の冒険者がかなり大きな声で言い争っていた。
その五人の会話の中から何やら聞いたことのある名前が何度も出てくるが、特に興味も無いので背景音楽のようなものと捉えることで、関心を無くす。
あんまりにも大きな声で叫んで罵り合うように口論しているので最初は呆れるしか無かったが、少し経てば案外慣れてくるものだ。
ちなみに今、ユウナは酒場の外にいる。なんでも、会いたく無い連中がいるかららしい。
会いたく無いなら殺してしまえばわからせてしまえばいいのにと思うが、それができないのが人間社会。人間は一回死んだらそれっきりだ。
ユウナがいないといまいち盛り上がりも無いので、炙りチーズとブランデーを片してから足早に酒場から出る。この時まだ五人組冒険者は激しく言い争っており、近くを通って見ると女性四人に男性一人という変わった構成で、それだけで何が目的なのかを察した。
「お待たせ、ユウナ」
「まったく、昼間から酒なんか飲んで。随分とお気楽なものだな、真祖殿」
組合の外で待っていたユウナに声をかけると、呆れたようにため息交じりでそう言われる。
「あんなお酒、ジュースとそう変わらないよ。酔っ払っちゃっても、そうなる前の体を保存してあるんだから、それを適応させちゃえば問題無いし」
「そんな正常な判断ができればいいがな」
その言い方が気に食わなかったようで、ぷくっと頬を膨らませる。こういうところは見た目年齢相応なのだが、実年齢は聞いていないが昨日一日一緒に過ごしている間に、三桁は確定した。
実年齢と比べて精神年齢は見た目年齢に依っているようだ。
「それで、どうする?」
「どうするって?」
「お前な……。俺がお前と組むのは俺がお前を殺してしまった責任を取るためで、お前はあることをしていてそれを解決すると言っていただろ。そのあることってのは一体なんなのか、俺はまだ聞いていないぞ」
「言いたくないというのであれば、別に言わなくても構わないが」と付け加える。
「どうやってわたしを殺したのかの観察する対象でもあるけど、それは置いておきましょうか。そうね、ちょっとどこに耳があるか分からないこんな場所じゃ、少し話しづらいかな。だから何も言っていないの」
周りを見回しながら、ここでは話せないと言うシルヴィア。
宿の部屋も完全に個人の空間となってはいるが、それでもどこから誰が見聞きしているのか分からない。
なら、話は早い。
「じゃあ、さっさとここから出るか。移動しながらなら、お前の目的も話しやすいだろう?」
街を出ると提案すると、シルヴィアは目をぱちくりとさせる。
「そうしてくれるのは嬉しいけど、いいの?」
「いつまでも目的を黙ったままにされるのは、協力する側としても癪だ。さっさとお前がやろうとしていることを知って、この先の行動予定を立てておきたい。無駄なことはしたくないのでな」
「んー……、行動予定立てても十割上手くいかないと思うよ」
「何故そう言い切る」
「それも移動しながら話すけど、超大雑把に話すと人間の常識に一切当てはまらないからかな」
もうそれだけで何が関わっているのかを大方推測できたが、それだけで決め付けるのは致命的になるのはゲオルグの考え無しな行動のおかげでよく知っているので、何も言わないでおく。
そうと決まれば早速部屋を取ってある宿に戻り、部屋に置いてある着替えなどの荷物を回収して引き払う。
シルヴィアが連れ込み娼婦ではないと言う誤解は解けたが、その後にされた恋人という誤解は最期まで解けなかった。
なんでも、知り合ったばかりにしてはシルヴィアの方がやたら親密に話しているかららしいが、それだけで勘違いされるのは御免被りたいものだ。
というか、恋人だというなら部屋を取る時に一緒にいるはずだろうと、部屋を引き払ってから内心で声高に言った。
宿屋を出た後に移動手段で話し合うが、シルヴィアの移動速度が常識的では無いので最初は馬車を借りようと思ったが、やっぱりお金がかかるので自分の足で走っての移動となった。
シルヴィアがどれだけの速さで走れるのかを聞くと、本気を出せば八キロを二十秒から四十秒で走破できるらしい。もうレベルが違い過ぎて笑うしかない。
ただ本気を出して走ると疲れるようなので、移動速度はユウナに合わせることにした。
ユウナ自身も呪力を使った強化に合わせて全力を出して走れば、シルヴィア程では無いがそれなりの速度は出せるし、呪力によって体力の消費をある程度抑えられるのでかなり長距離の移動が見込める。
シルヴィアはその速度に合わせて移動してくれることに同意してくれて、向かい方向も彼女が決めた。
その日のうちに次の街に着かないようであればユウナを抱えて全力を出すことになった。そうならないように、速めのペースで移動した方がよさそうだ。
もしかしたら野営もするかもしれないので、長期保存の利く食材をいくらか購入してシルヴィアの影の中に放り込んで保管し、街の外に出て少しでも次の街に早く着けるようにと最初から飛ばす。
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