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第1章
第1話 水晶竜と薬師のエルフ_5
しおりを挟む「ただのエルフが、魔王である俺にヤクでどうこうしただァ?」
眼前には瞳孔を小さくした三つ目。一人がけの椅子にはいつの間にか自分が腰掛けていて、覆い被さるように二ヴルが見下ろしている。
「……はい。私は……」
「なら話は早ぇ。ぶち犯して快楽漬けにしてお前を俺専用の肉便器に堕とす」
「どういう意味かはわかりませんが、あなたの気が済むようにしてください。望まぬ相手の心を支配することは私にとって禁忌です……殺されても……文句は言えません」
「交尾するって意味だぞ。繁殖行動だ。お前が怖がってたさっきのアレよりももっと怖えもん味わうんだぞ」
「…………」
「自分でナニをしごいたこともないやつが、無理やり犯されても文句ねえってのか? おい、あア?」
「――……はい」
唇の端をぎゅっと結び、降るドスの効いた声と気迫に細いからだを押しつぶされそうになりながらも、レイスが視線を逸らすことはない。
「私を"犯してください"」
二ヴルが使う意味もわからない言葉を、懇願するように使用する。博識。博学。知識は豊富で興味を抱いたことは好きなだけ挑んでいく。性行為はただの繁殖行動。快楽のための性行為。それは殆どが性に無頓着のエルフには興味が無い分野だった。それが何を意味するかは知らないが、それで二ヴルの気が晴れるなら。それで二ヴルの言う『お前のカラダで何とかしろ』という意味を果たすことができるなら、それが自分に今現在できる最大限のお詫びになると考えた。
「いつから"惚薬"の効果があった。いつから惚薬なんてもんを造ってたんだ」
「……おそらく、効果を得た時刻は定かではありませんが、私が惚薬の製造を始めたのがこの城に来る少し前。マオが私を助けてくれた日を終わりとして、それ以前のひと月の間でしょうか……」
「ひと月。……確かか?」
「はい。偽りはありません」
二ヴルは浅くため息をつくとレイスからゆっくりと離れていく。
その表情はどこか暗く、逢って間もない間柄でも似合わない表情だと感じてしまう。二ヴルは余裕がある遊び人で、他者を嘲笑うようでいてどこか根元に常識を兼ね備えている気がする。エルフは長寿だ。それゆえに百年前の戦争以前は多くの生き物と関わって生きてきた。本当に加虐的で他者を陥れて支配することを愉悦とする者は、むしろ惚薬の効果を意図せず受けていると知った瞬間に怒りを顕にして怒声をあびせたり暴力を振るうだろう。惚薬の効果があるからそれができないとも考えられるが、二ヴルはきっとそうではない。
「仕方ねぇな。お前の処女はマオにくれてやる」
「――え」
熱い。
熱すぎる甘く痺れる何かが咥内を満たしていく。
「ん……」
「お前の処女が俺のものにならねえなら、精通は俺のもんだ」
背に感じる椅子の硬さ。後退りすることはできない身で、貪るように口付けされる。目を強く瞑り、呼吸を忘れてただ二ヴルを受け入れる。
「ここ、中途半端で気持ち悪いだろ」
二ヴルは見た目に似合わない優しくてとろけるような、そんな甘ったるい口付けを続けながら、ここ、と言われた場所に指を這わせる。布越しに触れられたそこは、先程まで触手に弄られていた場所だ。
「お前は痛みより快楽に喘いで顔歪ませてるほうが綺麗だ。気持ちよくしてやるから怖がんなよ」
「快楽……」
"これが快楽だ"と言ったノクスの言葉と、それが快楽と教えられた痺れる何かを思い出した瞬間、性器がひくりと動くのを感じる。
「何かが込み上げてきて、そうだな……小便みたいなのが出るなって感じたら"イ"くって言えよ。小便じゃねえから、恥ずかしがらずに好きなだけぶちまけていい。ま、俺はどっちでも構わねえがな」
「い……く」
「まだ早えだろ」
くっく、と喉で嗤うと、レイスの長いドレスタイプの服を優しくたくしあげた。
ごつごつした二ヴルの傷だらけの指先が、先程まで無理やり尿道に捩じ込まれていた分泌液を馴染ませるようにレイスの性器を包み込む。もどかしく与えられる快楽の再来に、レイスは目を見開いた。
「怖くない。大丈夫だから、気持ちいなって思ってるとこに意識を集中しろ。ヤりてえこと、触って欲しい場所があれば言え」
性器の先から分泌液が溢れ出し、二ヴルの黒い肌をてらしている。自然と腰が浮いて、気づけば二ヴルの手に自ら性器を擦り付けている。
「ハッ。淫乱エルフが……。そんなに激しいのが好きか。わかったよ」
掌でレイスの性器の先を円を描くように弄りながら、見下ろすレイスの表情が徐々に快楽に支配されていくのを見て楽しんでいた。無自覚なのか、魔性と言ったのは正解だったかもしれない。とろんと垂れた瞳にたっぷりと涙を浮かべ、唾液にまみれた咥内が見えるように開いて何かを探すように舌を動かしている。
顎を伝いドレスに垂れ落ちる雫は糸を引き、二ヴルに視覚で快楽を与えていく。
「初っ端からふたり分の快楽を与えられんのは狂っちまうだろうから、今回はお前だけの快楽でイかせてやる」
「……い」
「どうした? もうイきそうか? もう少し楽しませろよ」
「――さい」
舌を突き出し、二ヴルの瞳をハートが浮かぶ瞳で見つめ、か細い声で言う。
「……きひゅ、して……くらひゃい…………」
一目惚れの惚薬などなくても、きっとこいつに惚れていただろう。
「ごめんなひゃい……っき、ひゅが……きもちい、です。あれが、あの……舌……もっ、と……あ、きもちよく、てぇ……っ」
従順で、小動物のような弱さと、無自覚の淫売体質。おまけにこの美貌。なにより二ヴルを惹き付けたのは――。
「ん、んっ、んふう……っ」
「はあ……っ、クソッタレ……」
「ひ、ふ……ひふっ」
聴力に優れたエルフの耳が、唾液が混ざり合う音と、性器から鳴るくちゅくちゅという粘着力がある水音と、互いの息遣いを全て拾い、それすらも快楽へと変わっていく。
脈打つ性器の奥から、何かが込み上げる感覚。排尿とはまた異なるが、何かを漏らしてしまいそうな焦燥感。
「いくっ、い、っいっいく、いくいっ、やっ、だめ、出ちゃう! 二ヴルさん……っ、いや、いや!」
じゅっくじゅくと先程より激しい水音をわざとらしくたてながら、竿を激しく上下させたり撫で回すようにいやらしく性器に触れる。
「激し……っ」
「好きだろ。激しいのが」
「す、き……すき、です……っ。くちゅくちゅ……されるのっ、きもちいです……っ」
「はいはい。もっとくちゅくちゅしてやろうなぁかわい子ちゃん。お前がイきながらよがり狂うの見ててやるよ」
「……っ、は、恥ずかし……っ」
「顔伏せんな。いいから全部出せ」
一番敏感な先の部分をときに激しく。ときにはふちを優しく撫でるようにして焦らして、焦らして、更に焦らしていく。我慢をすればするほど、焦らされればそうされるほどレイスは瞳にハートを増やしていく。舌を二ヴルの舌に自ら絡ませながら、逞しい肩にか細い腕をまわして更に奥を求める。
「ひ、ふ、ひひまふっ、にうるひゃ」
「あー、もうイくな。こいつはもうイきそうだ。ほらほら、イけ。イっちまいな」
「ひ……ぐ、いく、いくい、いく、いぐぅっ! いくっ! あ、ひや、んやぁああっ!」
短く叫び、大きく腰を跳ねあげ、先程恥ずかしがらずにぶちまけろと言われたそれが飛び出した瞬間レイスの目の前はちかちかと真っ白になった。
白濁にまみれた二ヴルの手がゆっくりと離れると、勢いよく尿道から透明な液体が弧を描きながら高く吹き上がりレイスと二ヴルのからだを濡らす。
レイスはただその光景を思考を停止した機能しない瞳でぼんやり眺めていた。
「これが快楽だ。いいか、からだで覚えとけ」
「……はあ、は、ぁい……覚え……まひ、は……」
「マオと交尾したら、次は俺も混ぜろよな。いいな」
「……はひ……」
二ヴルは掌で受け止めきれないほど大量の精液をすくい上げ、口に含んだ。
「果実酒かってくらい甘えな。初射精で潮までぶちまけるとは、素質がある。淫魔も驚くだろうよ」
股をだらしなく開きながら恥骨を突き出し、びく、びくと小刻みに震えるからだがいやらしくて愛らしい。
しょろしょろと流れ続けるなにかがとまった頃には、レイスは意識を手放していた。
二ヴルから贈られた優しい口付けに、レイスが気づくことはなかった。
「成程。興味深い」
「あの令嬢は時を繰り返すことができるのか……」
「だがいくつか条件があるようだ。それに伴い世界に副作用もあるようだが……」
「ではあのエルフが記憶をリセットされたのはいつだろう」
「興味深い」
ノクスが何かを呟きながら水晶の廊下を歩いていき、やがて足元から溶けるように姿を消した。
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