25 / 32
第二十四話 Ωの気持ちαの気持ち
しおりを挟む
隆は圭太の悲し気な顔を思い出しながら罪悪感が少しだけ芽生える。今まで幼馴染、友人として付き合ってきた仲だ。いきなり番と言われても本能か分からないが抵抗もあるし、何故か圭太に対して態度は変わったと思う。
「βなら良かったのに・・・」
その頃、圭太は自室でベッドで座っており、その顔は真剣だった。
どうすれば隆を手に入れられる?
何故、隆は自分を拒む?
隆には他に好きな人が居るのか?
今まで自分は何をした?
自問自答するが、全てにおいて答えが出てこない。最後の今まで自分は何をしてきたというならば、オネェとして覚醒したのもあるかもしれないが、もし隆がそれで拒むのなら自分は男らしく戻ろう。
少しだけ武の番である二人の気持ちが分かる。二人そろって番が一人の番を取り合う。それだけでも辛いのに自分が選ばれなかった弟は、兄をどれだけ憎んだだろう?
「やーね・・・、私ったら・・・何を考えてるのかしら」
「変態チックな事」
ビクッと体が跳ね振り返ると兄の陣が勉強机の椅子に座っていた。気づかないほど自分は考え込んでいたのだろうか?
「ちょっと兄さん、悪趣味よ?」
「いやいや、何度も声をかけたさ。お前百面相してたから笑いこらえるの大変でな」
「もぉ!何の用?」
「いや、今回の件だが、お前に任せていいか?」
今回の件というのは武のことだろうか?
「どうして?あの施設の責任者じゃないの?」
「正確には責任者じゃないが、いずれお前に任せるかもしれないってことだ。俺の番が発情期に入ってきたから、しばらく家には帰ってこない」
「え?」
「じゃぁ施設の職員には言ってるから、よろしくなぁ」
誠也も自室でボーとしていた。結構長い事一緒に居たと思ったけれど、何も知らなかったと思いながら夜風に当たっていた。そう考えると、自分は幸運なのかもしれない。
しかしだ!他の二人同様だが昔から知ってる仲で今更どうしろと言うのか。断じて嫌と言うわけではない。それでも・・・、いやもしかしたら無意識のうちに照れているだけなのかもしれない。
そう考えると携帯を取って洋介の電話番号に電話を掛ける。
「と言うわけで、圭太が今後君たちの様子を見るが、もちろん警備も付けるから安心してくれていい。あと約束通り拘束具はつけたままで、明日から始めることにするから・・・って大丈夫かい?顔色が悪い・・・まぁ当然か」
青ざめた武の顔を見ながら書類処理をする陣だったが、一つのたとえをする。
「逆の立場ならどうする?」
意味が判らなく、陣を見つめると陣は指を立ててたとえ話をする。
「自分が相手の番を愛していて、それでも拒まれて逃げ回られて自分一人だけになったら。君はどんな気持ちかな?あ、相手が一人の場合で」
「自分が相手を愛してる場合・・・?」
もしも最初から蓮を選んでいて、それを拒まれてしまったら?考えたことがなかった。自分がΩで相手がαだったからだろうか?でももしもαの蓮を好きに・・最初から好きで・・愛していても、蓮が拒み続けていたら?
ポロリと涙が零れた。
「ちょ、泣かすつもりがないのに?だから、雷君のことも少しは考えてあげてみて?笑い話でもしてあげてみてよ。少しは安定するかもしれないし本当に君を追いかけてきたとしたらスゴイと思うよ?」
恐怖でしかなかった緊張感が少しだけ薄まった気がした。
「判ってくれたようで何より。あ・と・は・・・・、・・・脳波にも問題はないし昔の様に喋ると思ってくれていい。緊張しなくても良いからね?」
「はい・・・」
「βなら良かったのに・・・」
その頃、圭太は自室でベッドで座っており、その顔は真剣だった。
どうすれば隆を手に入れられる?
何故、隆は自分を拒む?
隆には他に好きな人が居るのか?
今まで自分は何をした?
自問自答するが、全てにおいて答えが出てこない。最後の今まで自分は何をしてきたというならば、オネェとして覚醒したのもあるかもしれないが、もし隆がそれで拒むのなら自分は男らしく戻ろう。
少しだけ武の番である二人の気持ちが分かる。二人そろって番が一人の番を取り合う。それだけでも辛いのに自分が選ばれなかった弟は、兄をどれだけ憎んだだろう?
「やーね・・・、私ったら・・・何を考えてるのかしら」
「変態チックな事」
ビクッと体が跳ね振り返ると兄の陣が勉強机の椅子に座っていた。気づかないほど自分は考え込んでいたのだろうか?
「ちょっと兄さん、悪趣味よ?」
「いやいや、何度も声をかけたさ。お前百面相してたから笑いこらえるの大変でな」
「もぉ!何の用?」
「いや、今回の件だが、お前に任せていいか?」
今回の件というのは武のことだろうか?
「どうして?あの施設の責任者じゃないの?」
「正確には責任者じゃないが、いずれお前に任せるかもしれないってことだ。俺の番が発情期に入ってきたから、しばらく家には帰ってこない」
「え?」
「じゃぁ施設の職員には言ってるから、よろしくなぁ」
誠也も自室でボーとしていた。結構長い事一緒に居たと思ったけれど、何も知らなかったと思いながら夜風に当たっていた。そう考えると、自分は幸運なのかもしれない。
しかしだ!他の二人同様だが昔から知ってる仲で今更どうしろと言うのか。断じて嫌と言うわけではない。それでも・・・、いやもしかしたら無意識のうちに照れているだけなのかもしれない。
そう考えると携帯を取って洋介の電話番号に電話を掛ける。
「と言うわけで、圭太が今後君たちの様子を見るが、もちろん警備も付けるから安心してくれていい。あと約束通り拘束具はつけたままで、明日から始めることにするから・・・って大丈夫かい?顔色が悪い・・・まぁ当然か」
青ざめた武の顔を見ながら書類処理をする陣だったが、一つのたとえをする。
「逆の立場ならどうする?」
意味が判らなく、陣を見つめると陣は指を立ててたとえ話をする。
「自分が相手の番を愛していて、それでも拒まれて逃げ回られて自分一人だけになったら。君はどんな気持ちかな?あ、相手が一人の場合で」
「自分が相手を愛してる場合・・・?」
もしも最初から蓮を選んでいて、それを拒まれてしまったら?考えたことがなかった。自分がΩで相手がαだったからだろうか?でももしもαの蓮を好きに・・最初から好きで・・愛していても、蓮が拒み続けていたら?
ポロリと涙が零れた。
「ちょ、泣かすつもりがないのに?だから、雷君のことも少しは考えてあげてみて?笑い話でもしてあげてみてよ。少しは安定するかもしれないし本当に君を追いかけてきたとしたらスゴイと思うよ?」
恐怖でしかなかった緊張感が少しだけ薄まった気がした。
「判ってくれたようで何より。あ・と・は・・・・、・・・脳波にも問題はないし昔の様に喋ると思ってくれていい。緊張しなくても良いからね?」
「はい・・・」
0
あなたにおすすめの小説
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
愛などもう求めない
一寸光陰
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる