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一章
お嬢さん危ないよ
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一人残されたラックは、振っていた手を下ろし、涙を流した。
支配されていないからこそ、涙が流れる。
「すいません・・・レイさん・・僕の想いは本当なんです・・・十年前に助けてくれてから・・・ずっと・・・。どうか・・・生き残ってください」
残されたラックの言葉は、空へと消えていく。
近道だった獣道だったが、どういう訳か消えていた。
レイは、茂みをかきわけ森の奥に入っていくが、まったく動物の気配がない。
鳥の声さえ聞こえないほどだ。
「妙だな・・・」
「きゃあああああああああ!!!!」
突如、女性の悲鳴が聞こえ、レイは悲鳴が響いたほうに振り向き走り出した。
「!!」
茂みをかきわけて衝突した女性はパニックを起こしており、ぶつかったレイにさえ悲鳴を上げて、暴れてレイの顔や腕に引っかき傷をつけるほどだった。
だが、レイは女性を抱きしめたまま、痛みにこらえた。
「大丈夫だ。お嬢さん」
しばらくして、パニック状態の女性が弱弱しくなったところで、レイは声をかけた。
女性は例の顔を見て安心したのか崩れ落ちるように、その場にへたり込んでしまった。
「大丈夫か?何があった?」
彼女が来たほうから見て、メニク村がある方向だと思った。
「か・・・彼が・・彼は‥私・・・どうしたら」
「落ち着け、俺が来た方向に村がある。そこの村に行けば、なんとかなるだろう」
山の中にある教会とは言わず、人里のことを指さした。
教会に行っても、誰も居ないのだから無意味な事だと判断して、村の大人に頼むことにする。
それに彼女が来た方向から徐々に近づいてくる木々の枝を揺らす音が聞こえてきたのだ。
たぶん、彼女が逃げてきた原因だろう。
「早く行きな!!」
「は・・はい!!」
彼女は落ち着いたのか、道の方に出て、坂道を走り出して姿が見えなくなった。
そして、レイは音の正体と対面した。
それはレイの想像を超えた者だった。
黒い肌、鋭い犬歯、人の喉を掻ききるためにあるような鋭い爪。
直感で分かった。
【魔族】
だが、それを恐れてどうするというのだ。
自分だってそうじゃないか。
「へい、お兄さん。そんな姿じゃぁ女が逃げるぜ?」
挑発的に彼に声をかける。
だが、彼は同じことを繰り返している。
「あの女はどこだぁぁあぁぁぁ!!!」
「さぁ?こっちには来てねぇ」
ため息をつくようにお手上げ状態に、反応し世間話をするように彼にはなしかけるが、彼は口癖のように繰り返すのは呪いのようにつぶやき続ける言葉。
「信じてたのに信じてたのに、殺す殺す殺す!!」
レイに襲い掛かってきた彼に対し、レイは咄嗟の判断で彼の懐に入り込み、後頭部を掴み、そのまま自分の膝にぶつけた。
しばらく喧嘩なんてしなかったが、体は覚えてるものだと笑ってしまう。
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!」
勢いよく起き上がり、レイに襲い掛かる彼は右手の鋭い爪でレイの頭を狙ってきた。
流石に人間離れしている動きで、動けなかった。
その時だ。
《ゴロン》
「は?」
目の前で男の首が消えたのだ。
体が崩れて彼の後ろに居たのは金髪の男だった。
だらしないのが印象的だった。
着崩れしたシャツとズボン、適当に結った髪。
「あ?・・・」
「・・・・サンキュー?」
お礼を言うべきか悩んだが、言うべきところは言いなさいと躾はされている。
だが、男はレイを見て首を傾げる。
「お前も異端か?」
眼が見開いた。
先ほどの【魔族】を簡単に消した男が、次に自分を殺すのではないかと構える。
「・・・・その銀髪・・・女?お前、どこから来た?」
「へ?いや、あそこの村から・・・」
指さしたほうに見える村を指さすと男は頭を抱えた。
そして安堵のため息なのか、大きなため息を吐いた。
「レイ・アイアンリシュだろ?」
「そうだけど・・・?」
この男は何故、自分の名前を知っているのかと考えたが会ったことがない。
自分の記憶の中では。
「マジかー、あの人・・誤魔化せてないじゃん。ちょいまちな」
無線で誰かに連絡しはじめた。
「さっきの女は村についたか?・・・おう、それで、こっちに早々に戻ってこい。…あ?馬鹿か!さっさと戻れ」
無線を切り、レイの方を向き直る。
「俺はユキル。少し待ってくれ、連れが来るから。あとお嬢さんあぶないよ?」
そう言って男はニコリと笑った。
支配されていないからこそ、涙が流れる。
「すいません・・・レイさん・・僕の想いは本当なんです・・・十年前に助けてくれてから・・・ずっと・・・。どうか・・・生き残ってください」
残されたラックの言葉は、空へと消えていく。
近道だった獣道だったが、どういう訳か消えていた。
レイは、茂みをかきわけ森の奥に入っていくが、まったく動物の気配がない。
鳥の声さえ聞こえないほどだ。
「妙だな・・・」
「きゃあああああああああ!!!!」
突如、女性の悲鳴が聞こえ、レイは悲鳴が響いたほうに振り向き走り出した。
「!!」
茂みをかきわけて衝突した女性はパニックを起こしており、ぶつかったレイにさえ悲鳴を上げて、暴れてレイの顔や腕に引っかき傷をつけるほどだった。
だが、レイは女性を抱きしめたまま、痛みにこらえた。
「大丈夫だ。お嬢さん」
しばらくして、パニック状態の女性が弱弱しくなったところで、レイは声をかけた。
女性は例の顔を見て安心したのか崩れ落ちるように、その場にへたり込んでしまった。
「大丈夫か?何があった?」
彼女が来たほうから見て、メニク村がある方向だと思った。
「か・・・彼が・・彼は‥私・・・どうしたら」
「落ち着け、俺が来た方向に村がある。そこの村に行けば、なんとかなるだろう」
山の中にある教会とは言わず、人里のことを指さした。
教会に行っても、誰も居ないのだから無意味な事だと判断して、村の大人に頼むことにする。
それに彼女が来た方向から徐々に近づいてくる木々の枝を揺らす音が聞こえてきたのだ。
たぶん、彼女が逃げてきた原因だろう。
「早く行きな!!」
「は・・はい!!」
彼女は落ち着いたのか、道の方に出て、坂道を走り出して姿が見えなくなった。
そして、レイは音の正体と対面した。
それはレイの想像を超えた者だった。
黒い肌、鋭い犬歯、人の喉を掻ききるためにあるような鋭い爪。
直感で分かった。
【魔族】
だが、それを恐れてどうするというのだ。
自分だってそうじゃないか。
「へい、お兄さん。そんな姿じゃぁ女が逃げるぜ?」
挑発的に彼に声をかける。
だが、彼は同じことを繰り返している。
「あの女はどこだぁぁあぁぁぁ!!!」
「さぁ?こっちには来てねぇ」
ため息をつくようにお手上げ状態に、反応し世間話をするように彼にはなしかけるが、彼は口癖のように繰り返すのは呪いのようにつぶやき続ける言葉。
「信じてたのに信じてたのに、殺す殺す殺す!!」
レイに襲い掛かってきた彼に対し、レイは咄嗟の判断で彼の懐に入り込み、後頭部を掴み、そのまま自分の膝にぶつけた。
しばらく喧嘩なんてしなかったが、体は覚えてるものだと笑ってしまう。
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!」
勢いよく起き上がり、レイに襲い掛かる彼は右手の鋭い爪でレイの頭を狙ってきた。
流石に人間離れしている動きで、動けなかった。
その時だ。
《ゴロン》
「は?」
目の前で男の首が消えたのだ。
体が崩れて彼の後ろに居たのは金髪の男だった。
だらしないのが印象的だった。
着崩れしたシャツとズボン、適当に結った髪。
「あ?・・・」
「・・・・サンキュー?」
お礼を言うべきか悩んだが、言うべきところは言いなさいと躾はされている。
だが、男はレイを見て首を傾げる。
「お前も異端か?」
眼が見開いた。
先ほどの【魔族】を簡単に消した男が、次に自分を殺すのではないかと構える。
「・・・・その銀髪・・・女?お前、どこから来た?」
「へ?いや、あそこの村から・・・」
指さしたほうに見える村を指さすと男は頭を抱えた。
そして安堵のため息なのか、大きなため息を吐いた。
「レイ・アイアンリシュだろ?」
「そうだけど・・・?」
この男は何故、自分の名前を知っているのかと考えたが会ったことがない。
自分の記憶の中では。
「マジかー、あの人・・誤魔化せてないじゃん。ちょいまちな」
無線で誰かに連絡しはじめた。
「さっきの女は村についたか?・・・おう、それで、こっちに早々に戻ってこい。…あ?馬鹿か!さっさと戻れ」
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「俺はユキル。少し待ってくれ、連れが来るから。あとお嬢さんあぶないよ?」
そう言って男はニコリと笑った。
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