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第十二話 卵粥
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「手前はそろそろ戻ります。お大事にしてください」
実吉が腰を浮かしたので、蒼介は慌てて声をかけた。まだ聞きたい事がある。
「待ってくれ。辞めてしまった手代がいただろう?」
「平太のことですか。若旦那が帰って来たと知ったら、あいつ喜んだでしょうね……残念です」
「なぜ、辞めてしまったのか分かるかい? すまないが、教えて欲しい」
実吉は「はい」と頷くと一度上げた腰を再び下ろす。悲しい顔で口を開いた。
平太は実吉とは朋輩で、年頃も同じくらいだった。善太郎が居なくなり、暫くたってから清田屋を辞めたらしい。辞めた理由としては『番頭の寅次に嫌われてしまい、居心地が悪くなった』と漏らしていたそうだ。
善太郎はそれとなく平太を庇っていたらしいが、居なくなってからは、寅次から庇うものもいない。奉公人の長であり、店を取り仕切っている番頭と不仲では仕事もやりづらく、ついには辞めてしまったということだった。
「平太が寅次に嫌われた原因は? 心当たりはないか」
「いえ、何も……手前も平太に聞いたことがあるんですが、身に覚えがないと言っていました」
実吉は遠くを見ながら頭を掻いた。続けて悲しそうな声を漏らす。
「手前は、朋輩なのに何もできませんでした。平太に申し訳ねぇという気持ちがありながら、寅次さんの事は尊敬してるんです。どうにもやりきれなくて」と、言い残すと実吉は足早にその場を立ち去った。
『もう辞めちまった奴のことなんて、どうでもいいじゃないですか――もう当の本人もいないことですしね』
蒼介は寅次の言葉を思い出していた。確かに寅次は、辞めた手代の平太をよく思っていない。
――平太の事を、もっと調べた方が良さそうだ。寅次に嫌われた原因が分かれば、善太郎との関係も見えてくるだろう。そう考えていると、茶介が蒼介の傍らに来て、腹を見せた。愛犬を撫でながら店の方向へ顔を向ける。あと四半刻(三十分)ほどで夕暮れ時だ。清田屋は忙しくなるだろう。お店が繁盛しているのは、居住練に居ても奉公人の動きや、聞こえてくる活気で分かる。
目を閉じていると、「善太郎」と声をかけられた。少し驚いたが、視線の先に立っていたのは善右衛門だ。
「顔を見に来ただけだよ。夕餉の頃にまた来るから、これでも食べていなさい」
早口で告げると、土産の団子を手渡してから足早に店へと戻っていった。
体調が悪いから、心配してくれているのが手に取るように分かる。仕事を依頼した相手だからというわけではなく、倅と重ねているのだろう。
「……あんな父親もいるのだな」
小さな声で呟いたが、聞いているのは茶介だけだ。その声が届いているのか、茶介は耳をぴくぴくと動かして主人を見ていた。
蒼介の記憶にある『父』というものは、体調を壊そうものなら容赦なく叱りつけ、体力や根性のなさを罵るだけの存在だった。井戸の水を被らされたり、寒空の中で素振りを何度もさせられて、無理やりにでも身体を鍛えさせられた。
母がいつも庇ってくれていたことを思い出す。
団子を握りしめて、すぐに食べていいものかどうか、しばらく迷った。
善右衛門と雪太郎が顔を出したのは、夕餉の時だった。暮れ六つの鐘がなっても雪太郎は長屋に帰らなかったようだ。
「善太郎、すまないね。遅くなってしまった」
「俺もだよ。修繕に時間がかかっちまった」
「雪太郎さんにもお手間をかけてしまって申し訳ありませんね。卵粥でもご馳走しますよ」
「いいのかい? 豪勢だなぁ。ありがたく頂くぜ、おとっつぁん!」
「お前のおとっつぁんじゃないだろう」
二人のやり取りを聞きながら、善右衛門は優しい笑みを浮かべる。
「倅達が小さい時から、具合が悪い時は精がつくと卵粥にしていたんですよ」
脳裏に浮かぶ我が子を想い出したのか、懐かしそうに部屋の中を見回した。
「善一郎なんかはね、卵粥が食べたいばかりによく仮病もつかって――」
そこまで言い終わると、目線を伏せる。
「……そうかい。ちなみに俺は生まれてこの方、卵粥なんて食ったことはないぜ」
雪太郎が遠い目をした。話を逸らそうとしたのだろう、善右衛門は「それなら是非、味わっていって下さい」と頼りない笑みを浮かべる。
蒼介は押し黙っていた。倅に似ているこの顔で、どんな言葉をかければいいのか分からなかった。
話しているうちに膳が運ばれて来て、三人で夕餉を取ることになった。蒼介は食欲が戻ってきたようで、全て平らげるまでにそうかからなかった。それを見て、安心した様子で雪太郎が微笑む。膳が片付けられた後に、満足そうに腹を撫でた。
「やぁ、美味かったなぁ。かつお出汁が良い香りだったぜ」
昨夜とは違って、生姜と海苔が添えられていた。味付けも少し濃くなっていたし、病人食よりも味気のあるものになっている。顔色を見て、元気になったと判断されたのだろうか。蒼介は嬉しくなった。
「そうだな。美味しかったよ、おとっつあん」
まだ少し気恥しいが、そう呼ぶのも慣れてきた。
善右衛門は「それは良かった」と笑ったが、すぐに真剣な表情で眉根を寄せた。
「すみません、昼間のことなんですが。おいのさんが来ていたそうで」
「そうだよおとっつぁん。許嫁がいたなんて、驚いちまったぜ」
雪太郎が善右衛門を肘で突く。おとっつぁんと呼ぶことを止めるつもりはないらしい。
「……確かに、おいのさんのことについては聞いておきたいと思っていた」
蒼介が座りなおすと、善右衛門は小さく咳払いをした。
「おいのさんは、馬喰町で旅籠屋をしている『岩喜屋』のお嬢さんでしてね。お聞きした通り、善太郎の許嫁でした」
「随分と気に入っているようだったが、どうすんだよ。このまま許嫁として扱うのか?」
「いや、それは困る。どう接すればいいのか分からない」
蒼介は慌てて手を振った。
「そういやぁよ、寅次って男は、おいのさんのこと良く思っていねぇみたいだな」
「え?」
雪太郎が何気なく言った言葉に、その場にいた二人の口が同時に開いた。
実吉が腰を浮かしたので、蒼介は慌てて声をかけた。まだ聞きたい事がある。
「待ってくれ。辞めてしまった手代がいただろう?」
「平太のことですか。若旦那が帰って来たと知ったら、あいつ喜んだでしょうね……残念です」
「なぜ、辞めてしまったのか分かるかい? すまないが、教えて欲しい」
実吉は「はい」と頷くと一度上げた腰を再び下ろす。悲しい顔で口を開いた。
平太は実吉とは朋輩で、年頃も同じくらいだった。善太郎が居なくなり、暫くたってから清田屋を辞めたらしい。辞めた理由としては『番頭の寅次に嫌われてしまい、居心地が悪くなった』と漏らしていたそうだ。
善太郎はそれとなく平太を庇っていたらしいが、居なくなってからは、寅次から庇うものもいない。奉公人の長であり、店を取り仕切っている番頭と不仲では仕事もやりづらく、ついには辞めてしまったということだった。
「平太が寅次に嫌われた原因は? 心当たりはないか」
「いえ、何も……手前も平太に聞いたことがあるんですが、身に覚えがないと言っていました」
実吉は遠くを見ながら頭を掻いた。続けて悲しそうな声を漏らす。
「手前は、朋輩なのに何もできませんでした。平太に申し訳ねぇという気持ちがありながら、寅次さんの事は尊敬してるんです。どうにもやりきれなくて」と、言い残すと実吉は足早にその場を立ち去った。
『もう辞めちまった奴のことなんて、どうでもいいじゃないですか――もう当の本人もいないことですしね』
蒼介は寅次の言葉を思い出していた。確かに寅次は、辞めた手代の平太をよく思っていない。
――平太の事を、もっと調べた方が良さそうだ。寅次に嫌われた原因が分かれば、善太郎との関係も見えてくるだろう。そう考えていると、茶介が蒼介の傍らに来て、腹を見せた。愛犬を撫でながら店の方向へ顔を向ける。あと四半刻(三十分)ほどで夕暮れ時だ。清田屋は忙しくなるだろう。お店が繁盛しているのは、居住練に居ても奉公人の動きや、聞こえてくる活気で分かる。
目を閉じていると、「善太郎」と声をかけられた。少し驚いたが、視線の先に立っていたのは善右衛門だ。
「顔を見に来ただけだよ。夕餉の頃にまた来るから、これでも食べていなさい」
早口で告げると、土産の団子を手渡してから足早に店へと戻っていった。
体調が悪いから、心配してくれているのが手に取るように分かる。仕事を依頼した相手だからというわけではなく、倅と重ねているのだろう。
「……あんな父親もいるのだな」
小さな声で呟いたが、聞いているのは茶介だけだ。その声が届いているのか、茶介は耳をぴくぴくと動かして主人を見ていた。
蒼介の記憶にある『父』というものは、体調を壊そうものなら容赦なく叱りつけ、体力や根性のなさを罵るだけの存在だった。井戸の水を被らされたり、寒空の中で素振りを何度もさせられて、無理やりにでも身体を鍛えさせられた。
母がいつも庇ってくれていたことを思い出す。
団子を握りしめて、すぐに食べていいものかどうか、しばらく迷った。
善右衛門と雪太郎が顔を出したのは、夕餉の時だった。暮れ六つの鐘がなっても雪太郎は長屋に帰らなかったようだ。
「善太郎、すまないね。遅くなってしまった」
「俺もだよ。修繕に時間がかかっちまった」
「雪太郎さんにもお手間をかけてしまって申し訳ありませんね。卵粥でもご馳走しますよ」
「いいのかい? 豪勢だなぁ。ありがたく頂くぜ、おとっつぁん!」
「お前のおとっつぁんじゃないだろう」
二人のやり取りを聞きながら、善右衛門は優しい笑みを浮かべる。
「倅達が小さい時から、具合が悪い時は精がつくと卵粥にしていたんですよ」
脳裏に浮かぶ我が子を想い出したのか、懐かしそうに部屋の中を見回した。
「善一郎なんかはね、卵粥が食べたいばかりによく仮病もつかって――」
そこまで言い終わると、目線を伏せる。
「……そうかい。ちなみに俺は生まれてこの方、卵粥なんて食ったことはないぜ」
雪太郎が遠い目をした。話を逸らそうとしたのだろう、善右衛門は「それなら是非、味わっていって下さい」と頼りない笑みを浮かべる。
蒼介は押し黙っていた。倅に似ているこの顔で、どんな言葉をかければいいのか分からなかった。
話しているうちに膳が運ばれて来て、三人で夕餉を取ることになった。蒼介は食欲が戻ってきたようで、全て平らげるまでにそうかからなかった。それを見て、安心した様子で雪太郎が微笑む。膳が片付けられた後に、満足そうに腹を撫でた。
「やぁ、美味かったなぁ。かつお出汁が良い香りだったぜ」
昨夜とは違って、生姜と海苔が添えられていた。味付けも少し濃くなっていたし、病人食よりも味気のあるものになっている。顔色を見て、元気になったと判断されたのだろうか。蒼介は嬉しくなった。
「そうだな。美味しかったよ、おとっつあん」
まだ少し気恥しいが、そう呼ぶのも慣れてきた。
善右衛門は「それは良かった」と笑ったが、すぐに真剣な表情で眉根を寄せた。
「すみません、昼間のことなんですが。おいのさんが来ていたそうで」
「そうだよおとっつぁん。許嫁がいたなんて、驚いちまったぜ」
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「……確かに、おいのさんのことについては聞いておきたいと思っていた」
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「いや、それは困る。どう接すればいいのか分からない」
蒼介は慌てて手を振った。
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