6 / 18
第六話 清田屋
しおりを挟む
大伝馬町三丁目(通旅籠町)にある『清田屋』に着いた時は、昼九つ(十二時頃)になっていた。
奉公人にはすでに、善太郎には記憶がなく雪太郎が拾ったという事を、前もって善右衛門が説明している。蒼介は緊張で顔が強張った。気合を入れるため腹に力を込める。隣では紐に繋がれた茶介が尻尾を振り、道具箱を持った雪太郎が立っている。
「さぁ、行きましょう」
善右衛門の言葉が合図となり『清田屋』の暖簾をくぐる。まだ昼九つ(十二時頃)のせいか、広々とした土間と店の間には客の姿がない。
「皆、善太郎が帰ってたよ」
声を聴いてすぐに、帳場格子に座っていた三十年配の番頭ふうの男が駆け寄ってきた。
「若旦那、お帰りなさいませ。ああ――よくぞ無事に帰って来てくださった。なんてこった、すっかり痩せちまって……」
愕然とした表情で男が言った。鼻が高く、輪郭が男らしい。鋭い目つきには意思の強さを感じた。仕事が出来そうな男だ。
「善太郎、番頭の虎次だよ。二十年以上ここで働いているから、お前の事は赤子の時から知っている」
紹介されて気まずくなり、蒼介は頭をかいた。
「すまねぇ、俺は頭を打ったようで、記憶が……」
「ええ、ええ。旦那様から聞いております、若旦那。ご無理なく身体を直して下さい」
精一杯の芝居をする蒼介と、気遣う虎次。雪太郎は目の前の番頭の様子を伺った。善太郎の顔を見たときの反応を思慮深く読み取ろうといた。
会話が聞こえたのか、店の奥から若い中居が姿を見せた。暖簾をくぐり小走りで駆け寄ってくる。
「……若旦那! お帰りになったんですね」
女中は十七、十八くらいに見える。丸顔に、まだあどけない表情が残っていた。
次々と現れる旅籠の者に、蒼介は強張る表情のまま固まり、雪太郎は軽く会釈をした。
「虎次、お春。こちらが、見つけて下さった雪太郎さんだよ」
「それはそれは、ありがとうございます」
「よくぞ、見つけてくださいやした」
二人は深々と頭を下げた。善右衛門は続けて説明をする。
「雪太郎さんは、見ての通り大工だ。これも縁だと思って、お店と居住棟の修繕をお願いしたんだ」
「そうですか。それは重ね重ねお世話になります」
虎次が頷いている。すると茶介が急に興奮して紐を引いた。知らない場所で人が多いせいだろう。
それを見たお春が「可愛い犬ですね。やっぱり若旦那が拾ったんですか?」と言った。
「……雨の中、その……彷徨っている時に。震えている……この子を見つけたんだ」
蒼介は途切れ途切れになりながら、なんとか答えた。どのように善太郎を演じれば良いか分からず困却している。
「くっ、犬を」
小さく声を漏らし、虎次が目尻を抑えている。小春も袖で涙をぬぐっていた。
ここの者たちは犬を見つけると涙するのだろうか。
「若旦那? 顔色がすぐれないようですが」
虎次が心配したような声で問いかけると同時に、「若旦那、お帰りなさいませ」や「まぁ、お帰りになられたのですね」と、背後から複数の声が聞こえた時には軽い眩暈がしてよろけた。ただでさえ悪い顔色に拍車がかかる。見ているものには、体調不良に見えるだろう。雪太郎が片手で支えると、善右衛門は皆に声をかけた。
「そろそろ、善太郎を休ませなきゃな。では失礼するよ。皆は先に昼餉をとっておくれ。雪太郎さんも、お話があるのでこちらに」
「へい、分かりやした」
「……すまない、雪太郎。もう大丈夫だ」
蒼介がよろめきながら善右衛門の後についていく。その背中を見て雪太郎は不安になった。ずいぶんと具合が悪そうだが、あれも演技なのだろうか。
通り庭を抜けて居住棟に向かうと、奥庭が見えた。青々とした木々が、陽光を浴びて凛と立つ。茶介を放つと嬉しそうに走り回っていた。
縁側の方から部屋にまわり、善右衛門に言われるまま二人は畳に腰を下ろした。
ひっそりと佇む仏壇が見えた。善右衛門の女房、お仙のものだ。善一郎と善太郎が幼い頃に流行り病で亡くなっていると聞いている。
今では長男の善一郎は勘当となり、次男の善太郎は家に帰らず、事実上は欠落(家出)となっている。善右衛門が一人この部屋に帰り、生活している姿を想像すると、何とも言えない気持ちになった。部屋がやけに広く感じる。
「ご無理をさせてしまいまして、申し訳ありません。お春に昼餉の用意と寝床を頼みますので、一度休まれた方が……」
雪太郎と善右衛門が心配そうな表情を浮かべた。
「いや、心配無用」
あれしきの事でふら付くとは……。
浪人になり病を患ってから、武士の矜持が崩れ落ちている。俺は仕事をしに来たのであって迷惑をかけに来たのではない。
「おいおい善右衛門さん。若旦那も、口調、口調」
雪太郎が声を潜める。どこで誰が聞いているか分からない。『清田屋』では父と倅に見えなければらないから、『清田屋』善太郎としてお互いに振る舞おうと約束していた。
「すみません。そうでしたね」
善右衛門は眉を下げた。約束は覚えていたが、あえて滝本蒼介に話しかけてしまった。別人だとわかっているのに、ふとした瞬間に倅だと思ってしまう。帰ってきたのではないかと錯覚してしまう。夢にまで見た光景が、今は胸をしめつけた。
首を振り、穏やかな口調で善右衛門は『倅』に話しかけた。
「善太郎、大丈夫かい? お春に昼餉の用意と寝床を頼んだからね。休んだ方がいい」
「あ……ああ。はい」
顔を赤くしながら、蒼介が答えた。すると雪太郎が「顔が赤いぜ。熱があんのかい」と覗き込んできたので、善右衛門は声を荒げた。
「それは大変だ。医者を呼ばないと!」
蒼介は口をポカンと開けた。熱などないので、「医者はいい。少しゆっくりしたいんだ。お……おとっつぁん」と目を逸らしながら言うと、善右衛門は少し笑ってから「分かった。それじゃあ、昼餉の用意をしてくるよ」と言い残し、静かに部屋を出ていった。
奉公人にはすでに、善太郎には記憶がなく雪太郎が拾ったという事を、前もって善右衛門が説明している。蒼介は緊張で顔が強張った。気合を入れるため腹に力を込める。隣では紐に繋がれた茶介が尻尾を振り、道具箱を持った雪太郎が立っている。
「さぁ、行きましょう」
善右衛門の言葉が合図となり『清田屋』の暖簾をくぐる。まだ昼九つ(十二時頃)のせいか、広々とした土間と店の間には客の姿がない。
「皆、善太郎が帰ってたよ」
声を聴いてすぐに、帳場格子に座っていた三十年配の番頭ふうの男が駆け寄ってきた。
「若旦那、お帰りなさいませ。ああ――よくぞ無事に帰って来てくださった。なんてこった、すっかり痩せちまって……」
愕然とした表情で男が言った。鼻が高く、輪郭が男らしい。鋭い目つきには意思の強さを感じた。仕事が出来そうな男だ。
「善太郎、番頭の虎次だよ。二十年以上ここで働いているから、お前の事は赤子の時から知っている」
紹介されて気まずくなり、蒼介は頭をかいた。
「すまねぇ、俺は頭を打ったようで、記憶が……」
「ええ、ええ。旦那様から聞いております、若旦那。ご無理なく身体を直して下さい」
精一杯の芝居をする蒼介と、気遣う虎次。雪太郎は目の前の番頭の様子を伺った。善太郎の顔を見たときの反応を思慮深く読み取ろうといた。
会話が聞こえたのか、店の奥から若い中居が姿を見せた。暖簾をくぐり小走りで駆け寄ってくる。
「……若旦那! お帰りになったんですね」
女中は十七、十八くらいに見える。丸顔に、まだあどけない表情が残っていた。
次々と現れる旅籠の者に、蒼介は強張る表情のまま固まり、雪太郎は軽く会釈をした。
「虎次、お春。こちらが、見つけて下さった雪太郎さんだよ」
「それはそれは、ありがとうございます」
「よくぞ、見つけてくださいやした」
二人は深々と頭を下げた。善右衛門は続けて説明をする。
「雪太郎さんは、見ての通り大工だ。これも縁だと思って、お店と居住棟の修繕をお願いしたんだ」
「そうですか。それは重ね重ねお世話になります」
虎次が頷いている。すると茶介が急に興奮して紐を引いた。知らない場所で人が多いせいだろう。
それを見たお春が「可愛い犬ですね。やっぱり若旦那が拾ったんですか?」と言った。
「……雨の中、その……彷徨っている時に。震えている……この子を見つけたんだ」
蒼介は途切れ途切れになりながら、なんとか答えた。どのように善太郎を演じれば良いか分からず困却している。
「くっ、犬を」
小さく声を漏らし、虎次が目尻を抑えている。小春も袖で涙をぬぐっていた。
ここの者たちは犬を見つけると涙するのだろうか。
「若旦那? 顔色がすぐれないようですが」
虎次が心配したような声で問いかけると同時に、「若旦那、お帰りなさいませ」や「まぁ、お帰りになられたのですね」と、背後から複数の声が聞こえた時には軽い眩暈がしてよろけた。ただでさえ悪い顔色に拍車がかかる。見ているものには、体調不良に見えるだろう。雪太郎が片手で支えると、善右衛門は皆に声をかけた。
「そろそろ、善太郎を休ませなきゃな。では失礼するよ。皆は先に昼餉をとっておくれ。雪太郎さんも、お話があるのでこちらに」
「へい、分かりやした」
「……すまない、雪太郎。もう大丈夫だ」
蒼介がよろめきながら善右衛門の後についていく。その背中を見て雪太郎は不安になった。ずいぶんと具合が悪そうだが、あれも演技なのだろうか。
通り庭を抜けて居住棟に向かうと、奥庭が見えた。青々とした木々が、陽光を浴びて凛と立つ。茶介を放つと嬉しそうに走り回っていた。
縁側の方から部屋にまわり、善右衛門に言われるまま二人は畳に腰を下ろした。
ひっそりと佇む仏壇が見えた。善右衛門の女房、お仙のものだ。善一郎と善太郎が幼い頃に流行り病で亡くなっていると聞いている。
今では長男の善一郎は勘当となり、次男の善太郎は家に帰らず、事実上は欠落(家出)となっている。善右衛門が一人この部屋に帰り、生活している姿を想像すると、何とも言えない気持ちになった。部屋がやけに広く感じる。
「ご無理をさせてしまいまして、申し訳ありません。お春に昼餉の用意と寝床を頼みますので、一度休まれた方が……」
雪太郎と善右衛門が心配そうな表情を浮かべた。
「いや、心配無用」
あれしきの事でふら付くとは……。
浪人になり病を患ってから、武士の矜持が崩れ落ちている。俺は仕事をしに来たのであって迷惑をかけに来たのではない。
「おいおい善右衛門さん。若旦那も、口調、口調」
雪太郎が声を潜める。どこで誰が聞いているか分からない。『清田屋』では父と倅に見えなければらないから、『清田屋』善太郎としてお互いに振る舞おうと約束していた。
「すみません。そうでしたね」
善右衛門は眉を下げた。約束は覚えていたが、あえて滝本蒼介に話しかけてしまった。別人だとわかっているのに、ふとした瞬間に倅だと思ってしまう。帰ってきたのではないかと錯覚してしまう。夢にまで見た光景が、今は胸をしめつけた。
首を振り、穏やかな口調で善右衛門は『倅』に話しかけた。
「善太郎、大丈夫かい? お春に昼餉の用意と寝床を頼んだからね。休んだ方がいい」
「あ……ああ。はい」
顔を赤くしながら、蒼介が答えた。すると雪太郎が「顔が赤いぜ。熱があんのかい」と覗き込んできたので、善右衛門は声を荒げた。
「それは大変だ。医者を呼ばないと!」
蒼介は口をポカンと開けた。熱などないので、「医者はいい。少しゆっくりしたいんだ。お……おとっつぁん」と目を逸らしながら言うと、善右衛門は少し笑ってから「分かった。それじゃあ、昼餉の用意をしてくるよ」と言い残し、静かに部屋を出ていった。
8
あなたにおすすめの小説
剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末
松風勇水(松 勇)
歴史・時代
旧題:剣客居酒屋 草間の陰
第9回歴史・時代小説大賞「読めばお腹がすく江戸グルメ賞」受賞作。
本作は『剣客居酒屋 草間の陰』から『剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末』と改題いたしました。
2025年11月28書籍刊行。
なお、レンタル部分は修正した書籍と同様のものとなっておりますが、一部の描写が割愛されたため、後続の話とは繋がりが悪くなっております。ご了承ください。
酒と肴と剣と闇
江戸情緒を添えて
江戸は本所にある居酒屋『草間』。
美味い肴が食えるということで有名なこの店の主人は、絶世の色男にして、無双の剣客でもある。
自分のことをほとんど話さないこの男、冬吉には実は隠された壮絶な過去があった。
多くの江戸の人々と関わり、その舌を満足させながら、剣の腕でも人々を救う。
その慌し日々の中で、己の過去と江戸の闇に巣食う者たちとの浅からぬ因縁に気付いていく。
店の奉公人や常連客と共に江戸を救う、包丁人にして剣客、冬吉の物語。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
無用庵隠居清左衛門
蔵屋
歴史・時代
前老中田沼意次から引き継いで老中となった松平定信は、厳しい倹約令として|寛政の改革《かんせいのかいかく》を実施した。
第8代将軍徳川吉宗によって実施された|享保の改革《きょうほうのかいかく》、|天保の改革《てんぽうのかいかく》と合わせて幕政改革の三大改革という。
松平定信は厳しい倹約令を実施したのだった。江戸幕府は町人たちを中心とした貨幣経済の発達に伴い|逼迫《ひっぱく》した幕府の財政で苦しんでいた。
幕府の財政再建を目的とした改革を実施する事は江戸幕府にとって緊急の課題であった。
この時期、各地方の諸藩に於いても藩政改革が行われていたのであった。
そんな中、徳川家直参旗本であった緒方清左衛門は、己の出世の事しか考えない同僚に嫌気がさしていた。
清左衛門は無欲の徳川家直参旗本であった。
俸禄も入らず、出世欲もなく、ただひたすら、女房の千歳と娘の弥生と、三人仲睦まじく暮らす平穏な日々であればよかったのである。
清左衛門は『あらゆる欲を捨て去り、何もこだわらぬ無の境地になって千歳と弥生の幸せだけを願い、最後は無欲で死にたい』と思っていたのだ。
ある日、清左衛門に理不尽な言いがかりが同僚立花右近からあったのだ。
清左衛門は右近の言いがかりを相手にせず、
無視したのであった。
そして、松平定信に対して、隠居願いを提出したのであった。
「おぬし、本当にそれで良いのだな」
「拙者、一向に構いません」
「分かった。好きにするがよい」
こうして、清左衛門は隠居生活に入ったのである。
【時代小説】 黄昏夫婦
蔵屋
歴史・時代
江戸時代、東北地方の秋田藩は貧かった。
そんな中、真面目なひとりの武士がいた。同僚からは馬鹿にされていたが真面目な男であった。俸禄は低く貧しい。娘二人と実母との4人暮らし。
秋田藩での仕事は勘定方である。
仕事が終わると真っ直ぐ帰宅する。
ただひたすら日中は城中では勘定方の仕事をまじめにして、帰宅すれば論語を読んで知識を習得する。
そんな毎日であった。彼の名前は立花清左衛門。年齢は35歳。
娘は二人いて、一人はとめ15歳。もう一人は梅、8歳。
さて|黄昏《たそがれ》は、一日のうち日没直後、雲のない西の空に夕焼けの名残りの「赤さ」が残る時間帯のことを言う。「|黄昏時《たそがれどき)」。 「黄昏れる《たそがれる》」という動詞形もある。
「たそがれ」は、江戸時代になるまでは「たそかれ」といい、「たそかれどき」の略でよく知られていた。夕暮れの人の顔の識別がつかない暗さになると誰かれとなく、「そこにいるのは誰ですか」「誰そ彼(誰ですかあなたは)」とたずねる頃合いという意味で日常会話でよく使われた。
今回の私の小説のテーマはこの黄昏である。
この風習は広く日本で行われている。
「おはようさんです」「これからですか」「お晩でございます。いまお帰りですか」と尋ねられれば相手も答えざるを得ず、互いに誰であるかチェックすることでヨソ者を排除する意図があったとされている。
「たそかれ」という言葉は『万葉集』に
誰そ彼と われをな問ひそ 九月の 露に濡れつつ 君待つわれそ」
— 『万葉集』第10巻2240番
と登場するが、これは文字通り「誰ですかあなたは」という意味である。
「平安時代には『うつほ物語』に「たそかれどき」の用例が現れ、さらに『源氏物語』に
「寄りてこそ それかとも見め たそかれに ほのぼの見つる 夕顔の花」
— 『源氏物語』「夕顔」光源氏
と、現在のように「たそかれ」で時間帯を表す用例が現れる。
なおこの歌は、帖と登場人物の名「夕顔」の由来になった夕顔の歌への返歌である。
またこの言葉の比喩として、「最盛期は過ぎたが、多少は余力があり、滅亡するにはまだ早い状態」をという語句の用い方をする。
漢語「|黄昏《コウコン》」は日没後のまだ完全に暗くなっていない時刻を指す。「初昏」とも呼んでいた。十二時辰では「戌時」(午後7時から9時)に相当する。
「たそがれ」の動詞化の用法。日暮れの薄暗くなり始めるころを指して「空が黄昏れる」や、人生の盛りを過ぎ衰えるさまを表現して「黄昏た人」などのように使用されることがある。
この物語はフィクションです。登場人物、団体等実際に同じであっても一切関係ありません。
それでは、小説「黄昏夫婦」をお楽しみ下さい。
読者の皆様の何かにお役に立てれば幸いです。
作家 蔵屋日唱
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
【読者賞】江戸の飯屋『やわらぎ亭』〜元武家娘が一膳でほぐす人と心〜
旅する書斎(☆ほしい)
歴史・時代
【第11回歴史・時代小説大賞 読者賞(読者投票1位)受賞】
文化文政の江戸・深川。
人知れず佇む一軒の飯屋――『やわらぎ亭』。
暖簾を掲げるのは、元武家の娘・おし乃。
家も家族も失い、父の形見の包丁一つで町に飛び込んだ彼女は、
「旨い飯で人の心をほどく」を信条に、今日も竈に火を入れる。
常連は、職人、火消し、子どもたち、そして──町奉行・遠山金四郎!?
変装してまで通い詰めるその理由は、一膳に込められた想いと味。
鯛茶漬け、芋がらの煮物、あんこう鍋……
その料理の奥に、江戸の暮らしと誇りが宿る。
涙も笑いも、湯気とともに立ち上る。
これは、舌と心を温める、江戸人情グルメ劇。
竜頭――柔太郎と清次郎――
神光寺かをり
歴史・時代
幕末の信州上田藩。
藤井松平家の下級藩士・芦田家に、柔太郎と清次郎の兄弟が居た。
兄・柔太郎は儒学を学ぶため昌平黌《しょうへいこう》へ、弟・清次郎は数学を学ぶため瑪得瑪弟加塾《まてまてかじゅく》へ、それぞれ江戸遊学をした。
嘉永6年(1853年)、兄弟は十日の休暇をとって、浦賀まで「黒船の大きさを測定する」ための旅に向かう。
品川宿で待ち合わせをした兄弟であったが、弟・清次郎は約束の時間までにはやってこなかった。
時は経ち――。
兄・柔太郎は学問を終えて帰郷し、藩校で教鞭を執るようになった。
遅れて一時帰郷した清次郎だったが、藩命による出仕を拒み、遊学の延長を望んでいた。
----------
幕末期の兵学者・赤松小三郎先生と、その実兄で儒者の芦田柔太郎のお話。
※この作品は史実を元にしたフィクションです。
※時系列・人物の性格などは、史実と違う部分があります。
【ゆっくりのんびり更新中】
石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
めぐみ
歴史・時代
お民は江戸は町外れ徳平店(とくべいだな)に夫源治と二人暮らし。
源治はお民より年下で、お民は再婚である。前の亭主との間には一人息子がいたが、川に落ちて夭折してしまった。その後、どれだけ望んでも、子どもは授からなかった。
長屋暮らしは慎ましいものだが、お民は夫に愛されて、女としても満ち足りた日々を過ごしている。
そんなある日、徳平店が近々、取り壊されるという話が持ちあがる。徳平店の土地をもっているのは大身旗本の石澤嘉門(いしざわかもん)だ。その嘉門、実はお民をふとしたことから見初め、お民を期間限定の側室として差し出すなら、長屋取り壊しの話も考え直しても良いという。
明らかにお民を手に入れんがための策略、しかし、お民は長屋に住む皆のことを考えて、殿様の取引に応じるのだった。
〝行くな!〟と懸命に止める夫に哀しく微笑み、〝約束の1年が過ぎたから、きっとお前さんの元に帰ってくるよ〟と残して―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる