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第一部 ニ章 異世界キャンパー編
渾身の一撃! (八兵衛視点)
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入口を被う粘液を一閃して凪ぎ払う。
それにしても、先程の生物は一体?
地中から襲ってくるなど、見聞きした事もない!
身体の特徴としては鯰のように思えたのだが、あれ程の個体が日ノ本に居たとは思わなんだ。
「食った犬を消化するには時間が掛かるはず。
食料調達のついでに腹をば掻っ捌いてくれるわ!」
食生活を指摘した手前、魚を持っていくのは気が引けるが仕方あるまい。
穴の奥へ進んでいくと大量の残骸が転がっており、人も獣も関係なしに襲われているようだ。
「修験者達の成れ果てに…こちらは盗賊か?
襲い、喰らい、吐き捨てるとは…なんたる醜悪な所業! 奴は何処に消えた?」
長年の風雨によって巣穴を構成する石貝岩が侵食され、内部は迷路のように入り組んでいた。
不退転の覚悟で飛び込んだものの、かなり厄介だと言わざるを得ない。
奥に行けば殆ど日光が届かず、当方の夜目をもってしても僅かに輪郭を捉えるのが精一杯。
しかし、戻ったところで馬骨では役に立たず、姫様を危険にさらすなど論外!
ここは当方の独力で切り抜けるしかないのだ。
「犬よ! 貴様もタテガミギンロウの端くれならば、腹の底で一矢報いてみせい!」
静寂に耳を澄ませる。
しかし、返ってくるのは水の滴る音ばかり。
やはり徒労に終わるのか…。
諦めかけたその時、前方奥の暗闇から確かに聞こえたのは――。
「くぐもった犬の鳴き声と鈴の音!」
即座に落ちていた骨を拾い、毛皮や衣服の断片を巻き付けて燧石で火を灯す。
即席の松明《たいまつ》を得た事で段違いに捜索が捗り、声のした方向へ進むと――。
「これは…なんと見事な…!」
そこは20畳を超える洞窟の大広間!
更に、身の丈5尺8寸(約176cm)に届く当方が不自由なく歩ける程の高さ。
このような巨大な穴だったとは思いもよらず、自然の造形に感嘆の息を漏らす。
だが、肝心要の鳴き声は何処から聞こえてはいるが、次第に弱まりつつあった。
急がなければならない!
「鯰の化物め、堂々と姿をみせよ!」
道中の膨大な吐き溜めに加え、あれだけの巨体を維持するのであれば、犬一匹で事足りるとは到底思えぬ。
敵が姿を現さぬならば、我が身を餌にして誘き寄せるのみ!
岩壁にあった手頃な窪みに松明を置き、自身は広間の中央へと進む。
「さあ、何処からでも打ち込んで参れ!」
あの巨体から繰り出される攻撃は確かに脅威である一方、所詮は泥を這うだけの魚に過ぎない。
奴が地中から襲ってくると分かった以上、もはや当方に不意討ちは通用せぬ。
こうして全神経を足元に集中すれば、必ずや先手を打つは必定なり!
15歩…12歩…10歩…8歩…5歩…3歩…2歩…1歩…そこだ!
鯰が地中から姿を現したと同時に一刀が放たれ、交錯した刹那に深手を与えた――はずだった。
「むぅ、ここにきて限界を迎えたか!」
……無念なり。
衝突の際に受けた重さは想定を遥かに超え、遂に我が愛刀は柄だけを残して折れてしまった。
殆どの力が分散してしまった結果、致命傷を与えるには至らなかったのだろう。
手傷を負った鯰は体躯を翻し、こちらに向かってきている。
「済まぬ、ギンレイ……。
務めを果たせず申し訳も御座いませぬ、姫様…」
万策が尽き、死を待つだけとなった身に成す術などあるはずもない――。
それにしても、先程の生物は一体?
地中から襲ってくるなど、見聞きした事もない!
身体の特徴としては鯰のように思えたのだが、あれ程の個体が日ノ本に居たとは思わなんだ。
「食った犬を消化するには時間が掛かるはず。
食料調達のついでに腹をば掻っ捌いてくれるわ!」
食生活を指摘した手前、魚を持っていくのは気が引けるが仕方あるまい。
穴の奥へ進んでいくと大量の残骸が転がっており、人も獣も関係なしに襲われているようだ。
「修験者達の成れ果てに…こちらは盗賊か?
襲い、喰らい、吐き捨てるとは…なんたる醜悪な所業! 奴は何処に消えた?」
長年の風雨によって巣穴を構成する石貝岩が侵食され、内部は迷路のように入り組んでいた。
不退転の覚悟で飛び込んだものの、かなり厄介だと言わざるを得ない。
奥に行けば殆ど日光が届かず、当方の夜目をもってしても僅かに輪郭を捉えるのが精一杯。
しかし、戻ったところで馬骨では役に立たず、姫様を危険にさらすなど論外!
ここは当方の独力で切り抜けるしかないのだ。
「犬よ! 貴様もタテガミギンロウの端くれならば、腹の底で一矢報いてみせい!」
静寂に耳を澄ませる。
しかし、返ってくるのは水の滴る音ばかり。
やはり徒労に終わるのか…。
諦めかけたその時、前方奥の暗闇から確かに聞こえたのは――。
「くぐもった犬の鳴き声と鈴の音!」
即座に落ちていた骨を拾い、毛皮や衣服の断片を巻き付けて燧石で火を灯す。
即席の松明《たいまつ》を得た事で段違いに捜索が捗り、声のした方向へ進むと――。
「これは…なんと見事な…!」
そこは20畳を超える洞窟の大広間!
更に、身の丈5尺8寸(約176cm)に届く当方が不自由なく歩ける程の高さ。
このような巨大な穴だったとは思いもよらず、自然の造形に感嘆の息を漏らす。
だが、肝心要の鳴き声は何処から聞こえてはいるが、次第に弱まりつつあった。
急がなければならない!
「鯰の化物め、堂々と姿をみせよ!」
道中の膨大な吐き溜めに加え、あれだけの巨体を維持するのであれば、犬一匹で事足りるとは到底思えぬ。
敵が姿を現さぬならば、我が身を餌にして誘き寄せるのみ!
岩壁にあった手頃な窪みに松明を置き、自身は広間の中央へと進む。
「さあ、何処からでも打ち込んで参れ!」
あの巨体から繰り出される攻撃は確かに脅威である一方、所詮は泥を這うだけの魚に過ぎない。
奴が地中から襲ってくると分かった以上、もはや当方に不意討ちは通用せぬ。
こうして全神経を足元に集中すれば、必ずや先手を打つは必定なり!
15歩…12歩…10歩…8歩…5歩…3歩…2歩…1歩…そこだ!
鯰が地中から姿を現したと同時に一刀が放たれ、交錯した刹那に深手を与えた――はずだった。
「むぅ、ここにきて限界を迎えたか!」
……無念なり。
衝突の際に受けた重さは想定を遥かに超え、遂に我が愛刀は柄だけを残して折れてしまった。
殆どの力が分散してしまった結果、致命傷を与えるには至らなかったのだろう。
手傷を負った鯰は体躯を翻し、こちらに向かってきている。
「済まぬ、ギンレイ……。
務めを果たせず申し訳も御座いませぬ、姫様…」
万策が尽き、死を待つだけとなった身に成す術などあるはずもない――。
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