異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ

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第一部 ニ章 異世界キャンパー編

止まらない老侍 (八兵衛視点)

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 おかしい――何故なにゆえに姫様は機嫌を損ねられた?

 あれから体力の限界まで暴走を続けた結果、力尽きて寝込んでしまわれるとは…。
 姫様は以前、当方や大殿には御気持ちを察することあたわずとおっしゃられた。
 ――確かに分からぬ…。
 昨夜、意識を失った葦拿あしなを運ぼうとした際、姫様は御自分でやると言って決して譲らなかった。
 その御様子から、少なからず御好意を抱いていると思っていたのだが――当方の見当違いだったのだろうか?
 先程までの会話をかんがみても、当方の具申ぐしんかんさわるような落ち度などなく、そこまで取り乱す事態に陥るとは考えられぬ。

 ――待てよ……しばし待て……。
 もしや、当方は重大な思い違いをしていたのではあるまいか?
 考えてみれば姫様も、鬼属きぞくとして御歳おんとし39の多感な頃合い。
 獄卒ごくそつの如き身分の者に心中を言い当てられ、憤慨ふんがいなされたのではあるまいか!?
 だとするなら……なんたる失態!!
 斯様かような大罪をそそぐに相応しい行いは一つしかなかろう!

「姫様!
 御休みのところ、恐れながら申し上げまする!」

「お、おお…どうしたというのじゃ?」

 粗末な床から身を起こされた姫様は、かなり衰弱された御様子。
 それだけの御心痛を与えてしまった次第は、臣下として一命をして平伏に処する覚悟なり!

「これより矢旗やはた 八兵衛が一世一代の腹切りにて御覧致しまする。初音姫様におかれましては、どうか当方の辞世を見届けて頂きたく存じ上げまするそうろう。では、いざ――」

「ちょぉぉぉおおおいいぃぃいいい!?
 待てやぁあああああコラァァアアアア!!
 なんで!? なんで急に腹を切るんじゃあ!?
 えらーえらー理解不能意味分からんいみふ!!
 分かっとんのか!? 死ぬんじゃぞ!?」

 ………………は?
 ――姫様の御心中、皆目かいもく見当すらつかぬ…!
 当方が持ち得る最大限の謝罪をも拒絶されてしまわれるとは…。
 これでは葦拿あしなとの間で取り交わした密約も水泡とし、いつまで経っても熊野へ戻ってくださらぬとなれば――武士の面目めんもく丸潰れではないか!
 否……否、否!
 当方の面目めんもくなど取るに足らず!
 このままでは守役もりやくの重責すら果たせぬ!

「やはり、腹を切る他あるまい!
 こればかりは姫様のめいにも応じる訳にはいき申さん! 御免!!」

「あああああ! まてまてまてまてまて!
 ワシの方こそゴメンて! 謝るから!
 もう我儘わがままも言わぬから、腹を切るのだけは勘弁してもれ~!」

 ――波切り八兵衛、困惑の極みなり!
 神奈備かんなびもりに姫様の懇願が響き渡る――。

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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