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第二部 二章 新たな仲間、新たな岐路
家出娘の後悔
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「鬼夜叉が出没するという町までは15里(60km)といったところか。それにしても…恐ろしい話じゃ」
本来なら通り魔程度で済ませる噂話。
しかし、ここは異世界 日ノ本。
少なくとも狂った辻斬りか、腕試しに山賊狩りを行う剣豪クラスの仕業と考えるべきだろう。
どちらにしろ狂気じみた話ながらも、類い稀な剣の腕前を持つ者には違いない。
「アニキには悪いんすけど、今回はムダ足になると思いやすぜ」
道すがら、万治郎は珍しく否定的な言葉を口にすると、俺からは見えない角度で素朴な景色に視線を移す。
少ない情報だけで何故そう思ったのか、理由は聞かなくても分かっている。
「お前が言いたい事は理解しているつもりだよ。
俺も八兵衛と関わって日が浅いけど、あの人は無闇に他人を傷つけるような事は絶対にしない。噂の鬼夜叉が八兵衛さんだとは思ってないさ」
初めて会った時は勘違いされた末に、激昂して殺されそうになったけどな。
余計な部分を伏せたお陰で、万治郎は父親への想いを少しずつ吐露していく。
「当方の親父殿はロクすっぽ家にも帰らねぇ男だった。九鬼家に仕えてんのは知ってたが、稀に顔を合わせても殆ど喋った覚えもねぇ」
初音への躾には厳しいイメージがあった反面、家庭に戻った時には寡黙で実直な側面が強かったのかもしれない。
「その…爺…じゃなくて、八兵衛なる男は九鬼家での勤めについて、何か言っておったかのう? たとえば……姫とか――教育とか…」
自分の知らないところで守役がどう思っていたのか、今までの初音なら気にもしなかっただろう。
彼の息子を通じて心意を問う。
「あぁ? それこそ最後に話したのは、お袋の葬儀だが…そうだな……。恐ろしく手の掛かる姫サマの面倒見てるとか、そのお陰でお袋の死に目にも会えなかったとか…もう、10年も前の話だぜ?」
「10…! そ、そうか……母上の…。
す、済まなかった! あぁ…ワシのせいで…」
かなりショックだったのか、初音は頭を抱えて座り込む。
事情を知らない万治郎は気づいていない様子だったが、そろそろ言っておかなければならない。
「驚かずに聞いて欲しい。実は――」
「よい、ワシから…ワシに話させてくれ」
言葉を切った初音の表情は今まで見てきた顔つきよりも、若干大人びたように思えた。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「九鬼の……姫サマ!?
それってぇと…親父殿を探す理由ってのは…」
これまでの経緯を含め、全ての事柄を彼に打ち明けた。
俺が別世界から飛ばされてきた事。
初音と旅をするようになった理由。
そして、八兵衛さんが失踪するに至った理由。
奇しくも父親と同様に、想像もしていなかったであろう数々の真実は容易には飲み込めず、半信半疑といった様子だった彼も、初音がつば広帽を脱いで鬼属の証である角を見せた事で確信を得る。
「全部…本当だと…!?
アニキが別世界の人間で…あのゴえもんも…!
オマケに、九鬼家が散々探し回ってるって噂の姫が…ここに!」
馬威駆の隣で並ぶバギーに目を向け、驚嘆の息を吐く万治郎。
驚くなと言ったけど、無理な話だろうな。
その後、いつものように質問攻めに会う俺達だったが、初音も今回ばかりは借りてきた猫の如く縮こまり、何度も謝罪の言葉を口にするばかりであった。
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本来なら通り魔程度で済ませる噂話。
しかし、ここは異世界 日ノ本。
少なくとも狂った辻斬りか、腕試しに山賊狩りを行う剣豪クラスの仕業と考えるべきだろう。
どちらにしろ狂気じみた話ながらも、類い稀な剣の腕前を持つ者には違いない。
「アニキには悪いんすけど、今回はムダ足になると思いやすぜ」
道すがら、万治郎は珍しく否定的な言葉を口にすると、俺からは見えない角度で素朴な景色に視線を移す。
少ない情報だけで何故そう思ったのか、理由は聞かなくても分かっている。
「お前が言いたい事は理解しているつもりだよ。
俺も八兵衛と関わって日が浅いけど、あの人は無闇に他人を傷つけるような事は絶対にしない。噂の鬼夜叉が八兵衛さんだとは思ってないさ」
初めて会った時は勘違いされた末に、激昂して殺されそうになったけどな。
余計な部分を伏せたお陰で、万治郎は父親への想いを少しずつ吐露していく。
「当方の親父殿はロクすっぽ家にも帰らねぇ男だった。九鬼家に仕えてんのは知ってたが、稀に顔を合わせても殆ど喋った覚えもねぇ」
初音への躾には厳しいイメージがあった反面、家庭に戻った時には寡黙で実直な側面が強かったのかもしれない。
「その…爺…じゃなくて、八兵衛なる男は九鬼家での勤めについて、何か言っておったかのう? たとえば……姫とか――教育とか…」
自分の知らないところで守役がどう思っていたのか、今までの初音なら気にもしなかっただろう。
彼の息子を通じて心意を問う。
「あぁ? それこそ最後に話したのは、お袋の葬儀だが…そうだな……。恐ろしく手の掛かる姫サマの面倒見てるとか、そのお陰でお袋の死に目にも会えなかったとか…もう、10年も前の話だぜ?」
「10…! そ、そうか……母上の…。
す、済まなかった! あぁ…ワシのせいで…」
かなりショックだったのか、初音は頭を抱えて座り込む。
事情を知らない万治郎は気づいていない様子だったが、そろそろ言っておかなければならない。
「驚かずに聞いて欲しい。実は――」
「よい、ワシから…ワシに話させてくれ」
言葉を切った初音の表情は今まで見てきた顔つきよりも、若干大人びたように思えた。
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「九鬼の……姫サマ!?
それってぇと…親父殿を探す理由ってのは…」
これまでの経緯を含め、全ての事柄を彼に打ち明けた。
俺が別世界から飛ばされてきた事。
初音と旅をするようになった理由。
そして、八兵衛さんが失踪するに至った理由。
奇しくも父親と同様に、想像もしていなかったであろう数々の真実は容易には飲み込めず、半信半疑といった様子だった彼も、初音がつば広帽を脱いで鬼属の証である角を見せた事で確信を得る。
「全部…本当だと…!?
アニキが別世界の人間で…あのゴえもんも…!
オマケに、九鬼家が散々探し回ってるって噂の姫が…ここに!」
馬威駆の隣で並ぶバギーに目を向け、驚嘆の息を吐く万治郎。
驚くなと言ったけど、無理な話だろうな。
その後、いつものように質問攻めに会う俺達だったが、初音も今回ばかりは借りてきた猫の如く縮こまり、何度も謝罪の言葉を口にするばかりであった。
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