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第二部 二章 新たな仲間、新たな岐路
告白 (初音視点)
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「あしなよ、お主とは色々と馬鹿をやったものよなぁ。狩りをしたり、神奈備の杜に赴いたり…」
遠くから激しく争う音が聞こえる。
「覚えておるかや?
ワシらは一緒に湯浴みした仲なんじゃぞ?
お主は一度も直視してくれんかったがのう」
風に乗って漂う匂い――血の…匂い。
「お主の作る飯が好きじゃった。
朝餉も昼餉も夕餉も、全部じゃ!」
月明かり――こんなにも美しい…。
「イワガニモドキを覚えておるよな?
あれは楽しかったのう~!
何度も勧めたというに、お主は最後まで固辞しよったわ。お陰で一緒に世界を取る夢も泡と消えてしもうたのじゃぞ? 惜しい事をしたものぞ!」
地を飛び跳ね、肉を斬り裂く音。
お願いじゃ、もう少しだけ…。
「ワシ、実は邪風に罹ったのは二度目でのう。ずーっと幼い頃に三日三晩も高熱にうなされ、母上に付きっきりで看病してもらったそうじゃが、全然記憶に無くてな。そのような事でも母上との思い出、忘れず覚えておきたかった…」
弾けたように噴き出す血飛沫。
暗闇の奥から、誰かが地に倒れ伏す気配がする。
一瞬にして背筋が凍りつき、善からぬ考えによって動悸が早まっていく。
「あ、ぁ…わ、ワシ、お主にも…ギン…レイにも、ちゃんと…礼を……あ、あの時の…」
万治郎の絶叫。
木刀を叩きつける音が聞こえてくる。
何度も…何度も!
「お、思えば…お主には苦労ばかり掛けてきた。
いきなり洞窟に転がり込んだり、『ふぁいあーすたーと』を折ってしもうたりもした」
何者かが歩いてくる音。
誰かは分からぬが――足音は一人だけ…。
「ワシ…わ、ワシ!
し、知っておったか?
ワシ……お主のことが…好いておったのじゃ…。
知…って……おったか?
済まぬ、言うのが……遅れてしもうたわ…」
月明かりに照らされ、止め処なく血の涙を流す爺と対面する。
奴はもはや、進退極まっておるのじゃろう。
だが、止めねばならぬ。
それが、せめてもの――主従の務め。
「あしな、いってくる…。
なになに、心配するな!
すぐに後を追う故、ギンレイと共に辺境の地で待っておるがよい」
名残惜しいが、しばし別れの時がきた。
つば広帽子をあしなの胸に置き、ゆっくり立ち上がると揺れ動く女媧様はワシを見て、どうあっても理解し難いという表情を向けられた。
あしなとの会話中、ずっと頭の中で逃げるように諭してくださったからのう。
神を無下にするなどと、巫女にあるまじき行いじゃ!
――本当に申し訳ない。
『君まで……どうして…?』
「どうしてと仰られても……のう。
こればっかりは理屈ではないとしか…。
誠に申し訳も御座いませぬ」
女媧様への謝罪を皮切りに、月夜に妖しく光る白刃が浮かぶ。
僅かな逡巡すら感じさせない一刀が振り下ろされ、空間を切り裂く轟音を伴って明確な殺気が迫る。
突き上げた鬼の拳と妖刀 村正が真正面からぶつかり、生み出された余波だけで周囲7間(約半径6m)が吹き飛ぶ!
「おぉ、よき……覚悟なり!」
「…参ったのう、これは骨が折れそうじゃ」
全力で叩き込んだ拳は前腕部まで裂け、地面に向かってだらしなく垂れ下がっておるというに、対する村正は折れるどころか刃毀れ一つ起こしておらん。
いやはや、この分じゃと鬼属の誇りとやらが先に折れそうじゃわい!
遠くから激しく争う音が聞こえる。
「覚えておるかや?
ワシらは一緒に湯浴みした仲なんじゃぞ?
お主は一度も直視してくれんかったがのう」
風に乗って漂う匂い――血の…匂い。
「お主の作る飯が好きじゃった。
朝餉も昼餉も夕餉も、全部じゃ!」
月明かり――こんなにも美しい…。
「イワガニモドキを覚えておるよな?
あれは楽しかったのう~!
何度も勧めたというに、お主は最後まで固辞しよったわ。お陰で一緒に世界を取る夢も泡と消えてしもうたのじゃぞ? 惜しい事をしたものぞ!」
地を飛び跳ね、肉を斬り裂く音。
お願いじゃ、もう少しだけ…。
「ワシ、実は邪風に罹ったのは二度目でのう。ずーっと幼い頃に三日三晩も高熱にうなされ、母上に付きっきりで看病してもらったそうじゃが、全然記憶に無くてな。そのような事でも母上との思い出、忘れず覚えておきたかった…」
弾けたように噴き出す血飛沫。
暗闇の奥から、誰かが地に倒れ伏す気配がする。
一瞬にして背筋が凍りつき、善からぬ考えによって動悸が早まっていく。
「あ、ぁ…わ、ワシ、お主にも…ギン…レイにも、ちゃんと…礼を……あ、あの時の…」
万治郎の絶叫。
木刀を叩きつける音が聞こえてくる。
何度も…何度も!
「お、思えば…お主には苦労ばかり掛けてきた。
いきなり洞窟に転がり込んだり、『ふぁいあーすたーと』を折ってしもうたりもした」
何者かが歩いてくる音。
誰かは分からぬが――足音は一人だけ…。
「ワシ…わ、ワシ!
し、知っておったか?
ワシ……お主のことが…好いておったのじゃ…。
知…って……おったか?
済まぬ、言うのが……遅れてしもうたわ…」
月明かりに照らされ、止め処なく血の涙を流す爺と対面する。
奴はもはや、進退極まっておるのじゃろう。
だが、止めねばならぬ。
それが、せめてもの――主従の務め。
「あしな、いってくる…。
なになに、心配するな!
すぐに後を追う故、ギンレイと共に辺境の地で待っておるがよい」
名残惜しいが、しばし別れの時がきた。
つば広帽子をあしなの胸に置き、ゆっくり立ち上がると揺れ動く女媧様はワシを見て、どうあっても理解し難いという表情を向けられた。
あしなとの会話中、ずっと頭の中で逃げるように諭してくださったからのう。
神を無下にするなどと、巫女にあるまじき行いじゃ!
――本当に申し訳ない。
『君まで……どうして…?』
「どうしてと仰られても……のう。
こればっかりは理屈ではないとしか…。
誠に申し訳も御座いませぬ」
女媧様への謝罪を皮切りに、月夜に妖しく光る白刃が浮かぶ。
僅かな逡巡すら感じさせない一刀が振り下ろされ、空間を切り裂く轟音を伴って明確な殺気が迫る。
突き上げた鬼の拳と妖刀 村正が真正面からぶつかり、生み出された余波だけで周囲7間(約半径6m)が吹き飛ぶ!
「おぉ、よき……覚悟なり!」
「…参ったのう、これは骨が折れそうじゃ」
全力で叩き込んだ拳は前腕部まで裂け、地面に向かってだらしなく垂れ下がっておるというに、対する村正は折れるどころか刃毀れ一つ起こしておらん。
いやはや、この分じゃと鬼属の誇りとやらが先に折れそうじゃわい!
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