異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ

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第二部 最終章 one more camp!

宵一刻、一酔の夢

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「――にしてもよぉ、ほンっと! ソックリそのまンまじゃねェか。大した技術だぜ」

 飯綱いずなの声…。
 俺は帰ってこれたのか?

「――…に成功したのは君のお陰だよ。
 私だけでは到底不可能だった。
 本当に、君にはどうお礼を言えばいいのか…」

 まただ。
 また、あの男の声…。

「き、気にすンじゃねェよ!
 それよか、今はコッチさ。
 もう目を開けてアンタを見てるぜ」

 男の顔。
 コイツは――知ってる。
 知っている……はずだ。
 なのに思い出せない。

「初めまして…かな?
 なんだか妙な気分だよ。
 君、というか…お前と話すのは初めてなのに」

「お前…は……誰だ?」

 男はどう答えたものか迷っていたが、しばらくして唯一の答えを口にした。

「私はお前だよ」

 意味が分からない…。
 けど、本当にそうとしか言えないのだろう。
 俺は互いの顔を見合わせ、妙に納得したのを思い出す。

「私達はパートナーだ。
 目的の為に互いを助け合うパートナー。
 今度こそ…必ず、初音を救うんだ」

 初音…………あぁ、そうか。
 そうだった。
 どうして今まで――。

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「――い! おい! 目ェ開けろ!」

 誰…? あぁ、おかしいな…。
 お前はここに居ちゃダメだろ。

「馬ッ鹿野郎! この…大馬鹿っ!
 いつもいつも、無茶ばっかしやがって!
 目ェ開けてくれよぉ……うぇぇ…」

 熱い涙。
 飯綱いずなが俺の為に泣いてくれている…。
 けど、俺はもう――。

「起きろよぉお!」

 両手で拳大の石を振りかぶり、体全体で加速させていく。
 しかも、狙いは俺の顔だ。
 まさか…アレを落とすつもりか!?

「殺す気かああああああ!?」

 咄嗟とっさに顔を反らす。
 頭の隣2cmしか離れていない場所に石が落とされ、呆けていた意識が半ば強制的に覚醒する。

「あ、危ねぇ……。
 おま、お前! 俺を――」

 同じ台詞を口にする前に飯綱いずなは俺に覆い被さり、声を上げて激しく泣き続けた。
 伊勢に残ったはずの飯綱いずなが、どうしてここにいるのか。
 八兵衛さんに斬られて死んだはずの俺が、何故なぜ生きているのか。
 そして何よりも、初音達は無事なのか。
 聞きたい事は山程あった――はずだったのに…。

「心配かけてごめんな」

 自分でも驚くような優しい声。
 飯綱いずなには随分と心配させてしまったようだ。

「うぅ、アンタは…怖くねェのかよ…。
 何度も何度も、死ぬ目にあったのに!」

 どう答えればいいのか…。
 多分、正解とか100点の答えは存在しない。
 だったら、こう言うしかないじゃないか。

「怖いよ。怖い…。
 死ぬのなんて一度っきりで十分すぎる。
 だからもう、二度と死にたくねぇな」

「なンだよ…それ。馬っ鹿じゃね…」

 こうして抱き合っていると妙な気分だ。
 まるで恋人同士みたいな――。

「ほぉ~、ほぉほぉ。
 なかなか見せつけてくれるものよ…のう?」

「初音! 無事…ぃぶお!」

 地面に倒れたままの所を思いっきり踏まれた。
 無慈悲に押し潰される頬が、足裏を通じて燃え盛る嫉妬しっとを感じ取る。

初音ばづねざん…ぶ、無事ぶびでひたか」

「んん~? ワシは元気じゃよ。
 それより、自分の心配をするべきじゃのう。
 このまま頭蓋ずがいを踏み潰してやろうか?」

 ヤバい……コイツ、本気や!

 必死に押し返そうとするが全く歯が立たない。
 アカン、本当に死ぬ! こ、殺される!

「その辺でいいだろ、お嬢。
 アニキ、当方は…親父殿はどうなった?」

 万治郎は憔悴しょうすいした表情を浮かべていたものの、幸いにも大きな怪我を負った様子はなく、木刀を引きずりながら事の顛末てんまつを問う。

「俺達が生きてるって事は、八兵衛さんに見逃してもらえたって事だろう。また、どこかへ消えてしまったらしいが…」

 開幕早々に脱落した俺にはそれ以上の事は分からない。
 ギンレイは俺が目を覚ましたと知った途端、猛烈な勢いで走り寄り、体当たりに近い形で鼻を擦りつけてきた。
 良かった、どこも怪我をしていないようだ。

「あだっ! ちょっ、おち、落ち着けって!
 ところで、誰か女媧ジョカ様を見なかったか?」

 太陽の位置から予測すると時刻は朝の8時頃。
 日光が苦手な夜の女神ならば、この時間帯は日陰で姿を隠しているはず。

「つーか、隠れる日陰も……何もない」

 昨夜の一戦がどれ程のものだったのか。
 俺達の視界には隕石の落下跡を思わせるクレーターと、台風が通り過ぎた後のような瓦礫がれきの山だけが残された。
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