異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ

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第二部 二章 新たな仲間、新たな岐路

誰もいない決着 (初音視点)

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 筆舌に尽くし難い速度で迫る地表。
 呪物に操られたじいが苦しまぬようにと、頭から地面に落下した衝撃は予想に反する物じゃった。
 ワシらは不透明な膜に被われ、辛うじて一命を取り留めたらしい。
 どういう訳か、ワシの周りを囲う膜だけが音もなく霧消むしょうすると、静かに地面へと降り立つ。

「この力は……ぐぶっ!」

 大量の吐血。
 己の口から漏れ出たというに、初めて見る光景に動揺せずにはいられなかった。
 体内に留めようとするが湧水のように溢れ、急速に失われる活力は立っている事すら叶わず、足元から崩れ落ちる。

女媧ジョカ…さま……どうして…」

 命をけた覚悟を邪魔されてしまい、その意味を問おうと目を向けると、状況は一変しておった。

『想定された分岐点を確認。定められたプロトコルに従い、システムへの侵入を実行します』

「な…にを……言…」

 明らかに様子がおかしい。
 表現する言葉は見つからぬが…絶対、いつもの女媧ジョカ様ではない!

『侵入――エラー――侵入――エラー――侵入…』

 これまでとは違う、空虚で無機質な声。
 意味不明な言葉を繰り返し、微動だにしなくなった女神に驚嘆するばかり。
 あの御方に関して、未知の部分が多かったのは認める。
 じゃが、いま目の前で起きておるのは全くの別物!
 難しい事は分からぬが――ワシの…いや、日ノ本の範疇はんちゅうにない領域なのは明白ぞ!

『侵入――――――ハッキングに成功。
 引き続き、第2プログラムを起動――』

 あしなときゃんぷをしておる間、随分と不可思議なモノに触れる機会に恵まれたが、この感じは飯綱いずなの自宅に近い雰囲気じゃ。

『第2、第3プログラム完了。
 システムは順次書き換えられます。
 想定される時間まで――』

「敵への……警戒が……甘いな……」

 異様な光景に目を奪われていた為か、ばくを解いたじいに気づくのが遅れてしまい、声を上げるよりも早く女媧ジョカ様の体を一閃する!

女媧ジョカさ……!?」

 我が目を疑わざるを得なかった。
 それは女神を手に掛けたじいも同じ!

「な……なんだ……貴様……何者だ!」

 正気を失った者でさえ動揺を隠せない。
 無理もなかろう…。
 の地にあまねく全てを斬るという話は決して虚言ではなく、神をも例外ではなかった。
 だが、女媧ジョカ様は胴から真っ二つにされたというに、まるで気にした様子もなく意味不明な独り言をつぶやき続けた。

『システムの一部改ざんに成功。
 シナリオの改変まで残り――』

何故なぜだ! 何故なぜ死なぬ!?」

 人智を超えた現象が理解を拒んだのか、それとも己の矜持きょうじが傷ついたのかは分からぬが、じいは見る陰もなく取り乱し、女媧ジョカ様の体を散々に切り刻む。

「あ、あ、貴女は…貴女様は一体……」

 痛みを忘れて女神に問う。
 女媧ジョカ様は――どう言えばよいのか…。
 全身バラバラに引き裂かれてもなお、それでも意識を保ったまま宙に浮き、見聞きした事もない文字のような物を身にまとっておられる、としか表現しようがない…。

『私は端末に過ぎません。
 けれど……貴方達と一緒にいて、旅をして、とても……充実した一時ひとときを過ごせたのです。なんだか私、変ですよね…』

「面妖な……は、放せぇ!」

 女媧ジョカ様のまとう文字が渦を巻き、取り乱したじいを有無も言わさず拘束する。

『今日まで夢のようでした。本当に…。
 貴方達と過ごした日々は、膨大なデータのどこを探しても見つかりません。私の…大切な、大切な思い出』

 胸を掻きむしる嫌な予感!
 この感じは…母上が亡くなられた時と似ておる!

女媧ジョカさ…ごぼっ…がっ! ぁ…」

 肺が絞り尽くされ、空気が漏れ出ていく。
 足元から血の気が引き、徐々に感覚と熱が失われていくのを実感した。
 あぁ、これまでじゃな…。

『お別れの時です。
 最後に、創造主様からのメッセージをお伝えいたします。――今度こそ、必ず君を救ってみせる』

 その言葉を口にした直後、女神は文字の集合体に身を変え、凄まじい竜巻となってじいを空高く舞い上げていく。
 数え切れない程の文字はあらゆる物を透過し、既に殆どの五感が失われていたのに、見た事のない景色、聞いた事のない音楽、触れた事のない刺激の全てをもたらした。

「よき……冥土めいどの…土産……ぞ…」

 今際いまわきわ、光なき世界の終わりで母上が微笑んでおられたのを、確かに感じた――。

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

ここまでのAwazonポイント収支

『妖刀 村正むらまさを破壊――20000ポイント』

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