異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ

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第二部 最終章 one more camp!

苦渋の決断

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「まて、まてまてまて!
 落ち着いて状況を整理しよう」

 このままでは証拠もないのに、議論だけが有らぬ方向へと進んでしまう。
 一抹いちまつの懸念を抱いた俺は一旦議論を打ち切ると、宿の台所から湯を借り、残っていたヒグレタンポポの珈琲を皆に振る舞う。
 部屋に充満するヒリついた空気に珈琲の芳香が交わり、ほんの僅かだが緊張の糸がほぐれたように感じる。

「うぉ、苦! なんすかこれ。
 こうへい? 渡来の茶なんぞ見たことねぇ」

「ふっふーん、珈琲も知らぬとは万治郎はお子ちゃまじゃのう。あ、砂糖ましましが旨いぞ」

 珈琲体験二度目でもうマウント取るのかよ。
 初音はAwazonで買った貴重な砂糖をドバドバ放り込み、もはや珈琲というより砂糖湯にして飲んでいる。
 人それぞれの楽しみ方に否定はしないけど、それで他人を子供呼ばわりするとは…。

飯綱いずながここに居ない以上、無用な憶測はやめておこう。それよりも――」

 珈琲を飲み終えた初音へ視線を向けると、鬼の巫女は服の裾を正して今日の本題を告げた。

「各地で暗躍しておる悪党の目星はついた。
 しかし、同時にワシらが森田屋にる事も露見し、このままでは遠からぬ内に敵方てきがたを入れて接触するは明白。そこでワシらは再び神奈備かんなびもりへ――」

「待ちな、それってぇのはよ…逃げるってことかよ? 冗談じゃねぇぞ!」

 それまで冷静さを保ってきた万治郎がとうとうえ、我慢の限界を迎えてしまったようだ。
 けれど、ここで本題を有耶無耶うやむやにする気はない。

「待て」

 それ以上は言うな。
 短い言葉だったが十分に俺の意思は伝わったのか、万治郎は口をつぐんだまま、部屋には重苦しい静寂が漂う。
 その最中さなか、ゆっくりと話のせきを切ったのは初音であった。

「では…どうする? お主達が森田屋の者を巻き込みたくないのは分かる。
 だが、それはワシも同じじゃ。相手は一国の城主と忍びの頭領、どうやっても勝ち目などない」

 理屈では分かっている。
 それでも、納得できるかどうかは別の話だ。
 …決断しなければならない。

「…あの忍者インキャには逃げられたけど、相当な怪我を負ったはず。
 だとすれば、直ぐには動けない。
 明日の朝、ここを出てホームへ戻ろう。
 それからの事は…その時に決めよう」

 再び静寂。
 これが現段階で取れる最善、そう信じたい。
 初音も無言でうなずき、一応の同意を得られた。
 万治郎は憮然とした表情のままだったが、自分でも無茶を承知しているのか、それ以上の事は口にしなかった。

 だが、そんな重苦しい空気の中で小さな息を潜ませ、ふすまの向こうで会話を聞いてしまった者が居た事など、俺達には知るよしもない。

「いや…初音ちゃん…折角、お友達になれたのに…遠くへ行っちゃうの?」

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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