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第二部 最終章 one more camp!
旅立ちの前夜
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「貴方様のお陰で九死に一生を得る事が叶いました。私共一同、改めて厚く御恩礼申し上げます」
森田屋の女将や中居さんが全員揃って平伏する姿は壮観、と言うよりも俺にとっては針の筵も同然だった。
だってそうだろう?
俺がやった事と言えばAwazonで薬を買って渡しただけなんだから。
そこには何の努力も存在しておらず、強いて言うなら未だ謎のままであるAwazonの技術と、薬を開発してくれた人達に贈られるべき謝辞。
そんな物が受け取れるはずもなく、まるで他人の手柄を横取りしたような、後味の悪さを噛み締めていた。
「葦拿様のご都合さえ宜しければ、末長く森田屋に滞在して頂きたく存じ上げます。
勿論、御代は結構です。…私の姉も貴方様の滞在を強く望んでおります故」
急に話を振られたお江さんは平伏したままで、首筋から耳まで紅潮させているのがハッキリと分かった。
…言葉に出来ない心苦しさ。
この人達の信頼や好意が深ければ深い程、今から言わなければならない言葉が重くのし掛かる。
「…身に余る御提案を頂き恐縮の至り。
ですが、私達は一度国元へ帰ろうと思います。折角のお誘いを無下にしてしまい、申し訳ございません」
水を打ったよう静まり返る人々。
皆が驚愕と疑問に駆られ、理解できないといった表情で奇異の視線を向ける。
それだけなら我慢できる。
しかし、突然の告白に耐え切れず、涙を流して立ち去ってしまったお江さんの姿を見ると――正直、心が折れそうになった。
今は――耐える時。
「すまない、あしな…。
辛い役目を背負わせてしまったのう…」
珍しく改まった態度を見せる初音。
森田屋の人達を不測の事態に巻き込まない為とはいえ、『仕方がない』の一言で済ませるには……重い。
「…明日の朝食後、ここを発とう。
お鈴ちゃんに最後の挨拶をしておきなよ」
「……分かっておる…」
仕方がなかった。
こうするしかなかった。
――全てが手前勝手な都合に思えてしまう。
どれだけ言葉を重ねようとも、お江さんや森田屋の人達の厚意を反故にしてしまったという事実は覆せない。
「はぁ~~……」
がっくりと項垂れたまま、スマホに目を落とすとAwazonの通知欄が目につく。
ここにきて一気にポイントが貯まったのは嬉しい一方、特に人命に関わる事が多かったように思える。
お藍さんや八兵衛さんとの戦いは、一つでも選択を違えれば万が一の事態に発展する可能性もあり得た。
いや、実際には女媧様が身を挺してくれたから、俺達は寸でのところで命を救われたのだ。
クノイチの一件だけを考えても、ヒメユリトウロウの猛毒を受けたり、拳銃で撃たれたりした事は、いま思い返しても常軌を逸しており、本当に俺以外の誰かが死んでいても全く不思議ではない。
「こんな生活が…いつまで続くんだ?」
このまま初音と一緒に居れば、俺も巻き込まれていくのは必至。
どうするべきなのか、真剣に考えなければならない時がきたようだ…。
「準備だけは…しておくべきだろうな――」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
森田屋の女将や中居さんが全員揃って平伏する姿は壮観、と言うよりも俺にとっては針の筵も同然だった。
だってそうだろう?
俺がやった事と言えばAwazonで薬を買って渡しただけなんだから。
そこには何の努力も存在しておらず、強いて言うなら未だ謎のままであるAwazonの技術と、薬を開発してくれた人達に贈られるべき謝辞。
そんな物が受け取れるはずもなく、まるで他人の手柄を横取りしたような、後味の悪さを噛み締めていた。
「葦拿様のご都合さえ宜しければ、末長く森田屋に滞在して頂きたく存じ上げます。
勿論、御代は結構です。…私の姉も貴方様の滞在を強く望んでおります故」
急に話を振られたお江さんは平伏したままで、首筋から耳まで紅潮させているのがハッキリと分かった。
…言葉に出来ない心苦しさ。
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「…身に余る御提案を頂き恐縮の至り。
ですが、私達は一度国元へ帰ろうと思います。折角のお誘いを無下にしてしまい、申し訳ございません」
水を打ったよう静まり返る人々。
皆が驚愕と疑問に駆られ、理解できないといった表情で奇異の視線を向ける。
それだけなら我慢できる。
しかし、突然の告白に耐え切れず、涙を流して立ち去ってしまったお江さんの姿を見ると――正直、心が折れそうになった。
今は――耐える時。
「すまない、あしな…。
辛い役目を背負わせてしまったのう…」
珍しく改まった態度を見せる初音。
森田屋の人達を不測の事態に巻き込まない為とはいえ、『仕方がない』の一言で済ませるには……重い。
「…明日の朝食後、ここを発とう。
お鈴ちゃんに最後の挨拶をしておきなよ」
「……分かっておる…」
仕方がなかった。
こうするしかなかった。
――全てが手前勝手な都合に思えてしまう。
どれだけ言葉を重ねようとも、お江さんや森田屋の人達の厚意を反故にしてしまったという事実は覆せない。
「はぁ~~……」
がっくりと項垂れたまま、スマホに目を落とすとAwazonの通知欄が目につく。
ここにきて一気にポイントが貯まったのは嬉しい一方、特に人命に関わる事が多かったように思える。
お藍さんや八兵衛さんとの戦いは、一つでも選択を違えれば万が一の事態に発展する可能性もあり得た。
いや、実際には女媧様が身を挺してくれたから、俺達は寸でのところで命を救われたのだ。
クノイチの一件だけを考えても、ヒメユリトウロウの猛毒を受けたり、拳銃で撃たれたりした事は、いま思い返しても常軌を逸しており、本当に俺以外の誰かが死んでいても全く不思議ではない。
「こんな生活が…いつまで続くんだ?」
このまま初音と一緒に居れば、俺も巻き込まれていくのは必至。
どうするべきなのか、真剣に考えなければならない時がきたようだ…。
「準備だけは…しておくべきだろうな――」
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