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序章
これが俺のジャスティス
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唸りを上げるエンジンは速度メーターを振り切り、長閑な裏通りを疾走する。
指定された時刻の10分前になって、ようやく駅前のロータリーが見えてきた。
「ここまでやったんだからな、頼むからギリセーフで間に合ってくれ!」
事は一刻を争うが故に、一秒でも時間が惜しい。
だが、ここで焦ってしまっては元も子もない。
駅前の混雑する通りを避け、なるべく裏口の目立たないルートを選んで廃墟裏に車を停めた。
「さて……こっからだぜ」
入念に肺の空気を入れ替え、クラクションを二度鳴らした。
「今だ!」
直後、急いで車を出て敷地の外へ移動。
物陰で相手の反応をうかがっていると、怒号と共に10人近いヤンキーがぞろぞろ出てくる。
その中にいた包帯野郎は見覚えがあった。
「おいおい、今日はずいぶんと友達が多いじゃん……。名前は知らんけど、一週間前に気の弱そうな生徒をカツアゲしてた奴だな。俺と目が合っただけでケンカを吹っかけてきたっけ。その時ボコボコにしてやった腹いせかよ」
あまりにも下らない動機に腹が立ってきた。
テメェの重犯罪を阻止する為に、俺は授業を早退させられた挙げ句、見つかったら退学確定の軽犯罪に手を染めているんだぞ!
すぐにでもブン殴ってやりたい衝動を抑え、無人となった表口から廃墟に侵入する。
「中は思ったより広い。女子生徒はどこに居る?」
柱の影に身を潜め、突入の準備を進めながら次の手を打っておく。
外では口汚い罵声と、激しい金属音が鳴り響いている。
奴等はこの状況で、俺がまだ車内に隠れていると思っているのか?
だとすれば、救いようのないバカ集団だ。
そんな単純バカが女子生徒をどこに監禁しておくのか、よくよく考えれば簡単に予想がつく。
「バカと煙は高いところが好きってな。最上階か屋上のどちらかだろう」
廃墟は三階建てになっており、まともに通れる階段は一つしか残っていなかった。
瓦礫とゴミだらけの階段を慎重に進み、コンクリート柱だけが立ち並ぶ二階にたどり着く。
ガラスの割れた窓からは、獣じみた大歓声と樹脂が焼ける臭いが漂う。
「あーあ、放火までしちまってよぉ。ま、俺の車じゃないし全然OK」
ついでに車を借りたのもバカ共のせいにしよう。
再び階段を進んでいくと、ようやく三階に到着した。
ここも視界を遮るものは殆ど残っておらず、奥の方まで筒抜けだ。
「……見つけた!」
女子生徒は目と口を布で覆われた状態で柱に縛り付けられ、身動きできずにいた。
俺は周囲に注意しながら走り寄り、小声で助けが来たことを告げた。
しかし、彼女はひどく怯えているのか、何かを伝えようと必死に口を動かしている。
「なんだ? 何が言いたい?」
口元の布に手を伸ばした瞬間、無防備な背中に猛烈な痛みが走り、思わず床に転がった。
俺と女子生徒しか居なかった三階に、下衆な笑い声が響く。
「よォ、ヒーロー様の御登場か? お前、俺らの仲間内で結構な有名人だぜ。金髪のぼっちヤンキーってよ」
不意打ち野郎は金属バットをこれ見よがしに担ぎ上げ、勝ち誇った表情で見下ろすが――。
「……ネーミングセンス30点。ぼっちでヤンキーは余計だろ」
悶絶して動けないと思い込んでいた下衆は驚き、俺が立ち上がって埃を払うまで言葉が出ない様子。
よく見ると部屋の隅に大きなキャビネットがあり、そこに隠れていたのだろう。
「て、テメェ! どうなってやがんだ! 背骨まできっちり……」
「折れてないんだなぁ、コレのおかげでさ」
廃墟に侵入した直後、コイツを仕込んでおいて正解だった。
背中に手を伸ばすと、ブレザーと開襟シャツの間から錆だらけの鉄パイプを引き抜く。
鉄パイプは折れ曲がるほど変形しており、本気で背骨を折るつもりだったのが分かる。
「あーあー、なるほど、なるほど。その気なら遠慮は要らないってことね」
「だったら今度こそ死ねぇ!」
「もうちょい右だ。そうそう、そこがジャストだぜ!」
殺意に満ちた金属バットを紙一重で避け、カウンターの右拳が下衆の顔面を捉える。
渾身の一撃は骨と歯を瞬時に砕き、不健康な体は衝撃に耐えきれず、窓をブチ破って三階から吹っ飛ばされた。
数瞬後、酒井の車が身を挺して若者の命を救う。
「 完 ・ 璧 ♪ 狙いはバッチリだったろ?」
車をキャンプファイヤーの如く炎上させたヤンキー共は、突然降ってきた仲間に肝を潰している様子だったが、連中が本当に驚くのはここからだ。
「お、おい! 警官に囲まれてんぞ!」
事前に通報しておいたパトカーが到着し、事態を呑み込めない連中を一斉に検挙し始めた。
建造物侵入罪に拉致監禁、放火と暴行罪のダブル役満に加え、乗用車窃盗罪の裏ドラは補導では済まないだろう。
「さて、後始末は大人に任せて、そろそろ帰るとするか。君はここで待ってなよ。すぐに警察が来ると思うよ」
いまだ目と口を覆われた女子生徒は身振りで嫌がるが、ここで留まっていると俺までヤバい。
俺は無言で謝罪の意を示すと、警官相手に捨て身の抵抗をみせる少年達を尻目に、災害用避難ロープで華麗な脱出を果たした。
◇◇◇
指定された時刻の10分前になって、ようやく駅前のロータリーが見えてきた。
「ここまでやったんだからな、頼むからギリセーフで間に合ってくれ!」
事は一刻を争うが故に、一秒でも時間が惜しい。
だが、ここで焦ってしまっては元も子もない。
駅前の混雑する通りを避け、なるべく裏口の目立たないルートを選んで廃墟裏に車を停めた。
「さて……こっからだぜ」
入念に肺の空気を入れ替え、クラクションを二度鳴らした。
「今だ!」
直後、急いで車を出て敷地の外へ移動。
物陰で相手の反応をうかがっていると、怒号と共に10人近いヤンキーがぞろぞろ出てくる。
その中にいた包帯野郎は見覚えがあった。
「おいおい、今日はずいぶんと友達が多いじゃん……。名前は知らんけど、一週間前に気の弱そうな生徒をカツアゲしてた奴だな。俺と目が合っただけでケンカを吹っかけてきたっけ。その時ボコボコにしてやった腹いせかよ」
あまりにも下らない動機に腹が立ってきた。
テメェの重犯罪を阻止する為に、俺は授業を早退させられた挙げ句、見つかったら退学確定の軽犯罪に手を染めているんだぞ!
すぐにでもブン殴ってやりたい衝動を抑え、無人となった表口から廃墟に侵入する。
「中は思ったより広い。女子生徒はどこに居る?」
柱の影に身を潜め、突入の準備を進めながら次の手を打っておく。
外では口汚い罵声と、激しい金属音が鳴り響いている。
奴等はこの状況で、俺がまだ車内に隠れていると思っているのか?
だとすれば、救いようのないバカ集団だ。
そんな単純バカが女子生徒をどこに監禁しておくのか、よくよく考えれば簡単に予想がつく。
「バカと煙は高いところが好きってな。最上階か屋上のどちらかだろう」
廃墟は三階建てになっており、まともに通れる階段は一つしか残っていなかった。
瓦礫とゴミだらけの階段を慎重に進み、コンクリート柱だけが立ち並ぶ二階にたどり着く。
ガラスの割れた窓からは、獣じみた大歓声と樹脂が焼ける臭いが漂う。
「あーあ、放火までしちまってよぉ。ま、俺の車じゃないし全然OK」
ついでに車を借りたのもバカ共のせいにしよう。
再び階段を進んでいくと、ようやく三階に到着した。
ここも視界を遮るものは殆ど残っておらず、奥の方まで筒抜けだ。
「……見つけた!」
女子生徒は目と口を布で覆われた状態で柱に縛り付けられ、身動きできずにいた。
俺は周囲に注意しながら走り寄り、小声で助けが来たことを告げた。
しかし、彼女はひどく怯えているのか、何かを伝えようと必死に口を動かしている。
「なんだ? 何が言いたい?」
口元の布に手を伸ばした瞬間、無防備な背中に猛烈な痛みが走り、思わず床に転がった。
俺と女子生徒しか居なかった三階に、下衆な笑い声が響く。
「よォ、ヒーロー様の御登場か? お前、俺らの仲間内で結構な有名人だぜ。金髪のぼっちヤンキーってよ」
不意打ち野郎は金属バットをこれ見よがしに担ぎ上げ、勝ち誇った表情で見下ろすが――。
「……ネーミングセンス30点。ぼっちでヤンキーは余計だろ」
悶絶して動けないと思い込んでいた下衆は驚き、俺が立ち上がって埃を払うまで言葉が出ない様子。
よく見ると部屋の隅に大きなキャビネットがあり、そこに隠れていたのだろう。
「て、テメェ! どうなってやがんだ! 背骨まできっちり……」
「折れてないんだなぁ、コレのおかげでさ」
廃墟に侵入した直後、コイツを仕込んでおいて正解だった。
背中に手を伸ばすと、ブレザーと開襟シャツの間から錆だらけの鉄パイプを引き抜く。
鉄パイプは折れ曲がるほど変形しており、本気で背骨を折るつもりだったのが分かる。
「あーあー、なるほど、なるほど。その気なら遠慮は要らないってことね」
「だったら今度こそ死ねぇ!」
「もうちょい右だ。そうそう、そこがジャストだぜ!」
殺意に満ちた金属バットを紙一重で避け、カウンターの右拳が下衆の顔面を捉える。
渾身の一撃は骨と歯を瞬時に砕き、不健康な体は衝撃に耐えきれず、窓をブチ破って三階から吹っ飛ばされた。
数瞬後、酒井の車が身を挺して若者の命を救う。
「 完 ・ 璧 ♪ 狙いはバッチリだったろ?」
車をキャンプファイヤーの如く炎上させたヤンキー共は、突然降ってきた仲間に肝を潰している様子だったが、連中が本当に驚くのはここからだ。
「お、おい! 警官に囲まれてんぞ!」
事前に通報しておいたパトカーが到着し、事態を呑み込めない連中を一斉に検挙し始めた。
建造物侵入罪に拉致監禁、放火と暴行罪のダブル役満に加え、乗用車窃盗罪の裏ドラは補導では済まないだろう。
「さて、後始末は大人に任せて、そろそろ帰るとするか。君はここで待ってなよ。すぐに警察が来ると思うよ」
いまだ目と口を覆われた女子生徒は身振りで嫌がるが、ここで留まっていると俺までヤバい。
俺は無言で謝罪の意を示すと、警官相手に捨て身の抵抗をみせる少年達を尻目に、災害用避難ロープで華麗な脱出を果たした。
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