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第81話 旅立ちの前夜

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「貴方様のお陰で九死に一生を得る事が叶いました。私共一同、改めて厚く御恩礼申し上げます」

 森田屋の女将や中居さんが全員揃って平伏する姿は壮観、と言うよりも俺にとっては針のむしろも同然だった。

 だってそうだろう?
 俺がやった事と言えばAwazonで薬を買って渡しただけなんだから。
 そこには何の努力も存在しておらず、強いて言うなら未だ謎のままであるAwazonの技術と、薬を開発してくれた人達に贈られるべき謝辞。

 そんな物が受け取れるはずもなく、まるで他人の手柄を横取りしたような、後味の悪さを噛み締めていた。

「葦拿様のご都合さえ宜しければ、末長く森田屋に滞在して頂きたく存じ上げます。
 勿論、御代は結構です。…私の姉も貴方様の滞在を強く望んでおります故」

 急に話を振られたお江さんは平伏したままで、首筋から耳まで紅潮させているのがハッキリと分かった。

 …言葉に出来ない心苦しさ。
 この人達の信頼や好意が深ければ深い程、今から言わなければならない言葉が重く伸し掛かる。

「…身に余る御提案を頂き恐縮の限り。
 ですが…私達は一度国元へ帰ろうと思います。折角のお誘いを無下にしてしまい申し訳ございません」

 水を打ったよう静まり返る人々。
 皆が驚愕と疑問に駆られ、理解できないといった表情で奇異の視線を向ける。

 それだけなら我慢もできよう。
 しかし、突然の告白に耐え切れず涙を流して立ち去ってしまったお江さんの姿を見るや、正直心が折れそうになった。

 今は……耐える時…。

 ――――――――――

「すまない、あしな…。
 辛い役目を背負わせてしまったのう…」

 珍しくしおらしい態度を見せる初音。
 森田屋の人達を不測の事態に巻き込まない為とはいえ、『仕方がない』の一言で済ませるには………重い。

「…明日の朝食後にここを発とう。
 お鈴ちゃんに最後の挨拶をしておきなよ」

「……分かっておる…」

 ――――――――――
 今日までのAwazonポイント収支

 ログインボーナス4日分――1200P
 大型リュック購入――(-3000P)
 町を発見――3000P
 初商売と成功――10000P
 初めての参拝――1000P
 初めての宿泊――1000P
 現地の人間との交流――3000P
 抗インフルエンザ薬購入――(-20000P)
 現地の人間を救助――50000P
 レディース水着を購入――(-5000P)
 初めての海水浴――1000P
 初めての被弾――10000P
 ネットランチャー購入――(-25000P)
 暗殺者を撃退――50000P

 手元の9100Pと合わせると合計86,300ポイント。

 ここにきて一気にポイントが貯まったのは嬉しい一方、人の命に関わる事が多かったのが原因なのか?
 お藍さんや忍者とは一つ選択を違えれば、万が一の事態に発展する可能性もあり得た。

 特に拳銃で撃たれるなど今思い返せば常軌を逸しており、本当に死んでいても全く不思議ではない。

 このまま初音と一緒に居れば、俺も巻き込まれていくのは必至。
 …どうするべきなのか、真剣に考えなければならない時がきたようだ…。
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