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プロローグ
Ⅱ,試練
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空は相変わらず晴れていて、満点の星空が映し出されています。
しかし寂しいことに、鳥は飛んでいません。
ここには動物はいないのです。
海は穏やかに波を立てていて、月が映っていて綺麗でした。
ちなみに今日は三日月です。
星々は地上を優しく照らし、月は海に映り、幻想的な景色を生み出していました。
そんな誰もいない、美しくも閑静な世界「星の海」。
月と星の光に照らされキラキラと輝いている砂浜には、涼しげな音を立てながら波が、来たり引いたりしています。
ザーッ、ザーッ……。
波が行ったり来たりしているだけの砂浜には、男の子と女の子がいました。
フレイとフレイヤです。
「どうして神さまはこんなに簡単な試練にしたんだろう」
「なんでかしら」
神様が天に帰ったあと、彼らは砂浜で砂のお城を作りながらそう喋っていました。
どうしてこのような試練にしたのか、理解できなかったのです。
人間に関わって何を学べるというのでしょうか。
人間の悩み事など解決して、なんの得になるのでしょうか。
彼らは人間を軽く見下していたのです。
「……わからないなぁ」
「わからないね」
結局彼らはその答えを探すのをやめました。
飽きたからなのか、面倒くさくなったのか、あるいは人間に興味がないからなのか、やめた理由は定かではありません。
そのあと彼らは、楽しそうに砂のお城を作っていました。
手先が器用なフレイはフレイヤに言われた通りに美しい砂の城を作り上げ、手先が不器用なフレイヤはどんな城を作るか創造力を働かせました。
運がいいことに、波によって砂の城が崩されることはないのです。
相変わらず波は穏やかですから。
静かに音を立てながら、第2の星空を映し出していました。
「砂って不思議だよね」
ペタペタと砂のお城を触りながら、フレイはそう呟きました。
「どうして不思議なの?」
フレイヤには理解できませんでした。
フレイは乾いた砂をさらさらと手から落としていきます。
月や星の光が反射して、砂はきらきらと光っていました。
フレイはそれに見とれていました。
「すごく不思議さ」
するとフレイは立ち上がり、海の方に駆けていきました。
「え?」
突然の出来事で、フレイヤは少しだけ驚きました。
バシャバシャッ!!
フレイは膝下まで水が浸かるところまで、走っていきました。
泳ぐことはありません。
あまり深いところに行ってはいけません、神様にそう言われていたのです。
「フレイ、あまり深いところにいっては行けないわ」
フレイヤもフレイを追いかけて、海に走って行きました。
バシャバシャッ!
フレイヤも海に入ると、フレイを見ました。
フレイは何を思ってこうしたのでしょう。
その疑問はすぐに解けました。
「何を探しているの?」
フレイは何やら自分の足元を手で探っています。
「これだよ」
その手にあったのは、ただの泥でした。
「ただの泥じゃない」
「そうだね、ただの泥だ」
フレイはそうだと頷きました。
「砂は乾いているとサラサラだけど、水に濡らすとドロドロになるよね。僕は、すごく不思議だと思うんだ」
「砂が濡れれば泥になるのは当たり前じゃない」
「確かに当たり前だね。でも僕からしたら不思議でおかしなことだ。さらさらだったあの砂が、どろどろとした全く別の物に変わってしまうんだから」
フレイは不思議で不思議でたまりませんでした。
バシャバシャッ!
泥で汚れた腕を、フレイは洗い流します。
「ねぇフレイヤ」
フレイはフレイヤに声をかけます。
「なぁにフレイ?」
「当たり前のことほど、僕は最近不思議に思えてくるんだ」
フレイは夜の大海原を眺めてそう言います。
「こうやって、僕らが一緒にいること、ここにいること、全てが不思議なんだ」
「そうかしら」
フレイヤは首を傾げました。
それらは当たり前の「日常」だから、不思議だと思えなかったのです。
「もし、この日常が終わったら、無くなったら、僕らはどうなるんだろう?僕は少し怖いよフレイヤ」
「私はそうは思わないわフレイ」
「どうして?」
フレイはフレイヤを見つめ、応えを待ちます。
フレイヤもフレイを見つめ、こう応えました。
「今が楽しいのなら、私はそれでいいから。ここにいて、毎日フレイと一緒に遊ぶこの日常が終わったとしても、私たちはきっと離れることはないわ。だって神さまは私たちがどれだけ仲が良いのか知っているもの」
神様が私たちを引き離すわけがない、フレイヤはそう固く信じていたのです。
フレイもその考えに納得でした。
「確かにそうだね!僕は少し考え過ぎていたのかも。ありがとうフレイヤ」
「いいのよフレイ」
フレイヤは優しく微笑みました。
月の光に照らされたその笑顔が、フレイは好きでした。
「フレイヤは何か、抱え込んでいない?」
「そうね、フレイみたいに深刻なものではないけれど」
「いいよ、言ってみて」
フレイは真っ直ぐな瞳でフレイヤを見つめます。
星の光が反射した曇りのないその瞳が、フレイヤは好きでした。
「私たちに、あしたはあるのかしら?」
「あした?僕らは毎日あしたを過ごしているじゃないか」
フレイヤは頭を捻ります。
「神さまは、あしたから人間たちがここに来る、と言っていたけれど、ここには夜しかないわ。あしたというのは再び朝を迎えることだから、ここにあしたなんてないはずなのよ」
「朝、月じゃなくて太陽が昇る時間だね」
フレイは三日月を見上げてそう呟きました。
フレイヤもつられるように三日月を見上げました。
「太陽は、一体どんなものなのかしら」
彼らは太陽を見たことがありませんでした。
生まれてからずっと、空に浮かんでいたのは月だけなのです。
だから夜以外のここの景色を知りませんでした。
「神さまは太陽を、暖かいものだって言ってたね」
「そうね。そしてとても眩しいものだとも言っていたわ」
神様は彼らに知恵を授けましたが、実物を見せてくれることはありません。
彼らにとっての太陽は夢の産物でしかないのです。
例えて言うなら、我々にとってのユニコーンのような存在です。
「暖かくて、眩しい……うぅん、そんなものが空に浮かんでいるんだ、あしたは」
「現実味がないわね。この星の海はいつだって涼しいし、月が優しく照らしてくれている。今の状態とあしたは真逆と言うことなのかしら」
「そうかもしれないね。なんだか、不思議」
砂浜にゴロンと寝転んだフレイは、夜空をぼんやりと眺めていました。
そのすぐ隣でフレイヤは両膝を抱え地べたに座り込み、夜空が映る大海原を光を灯した瞳で眺めていました。
そんな暖かい【太陽】を彼らは無意識のうちに、いつもいつも、いつも夢見ていたのです。
しかし寂しいことに、鳥は飛んでいません。
ここには動物はいないのです。
海は穏やかに波を立てていて、月が映っていて綺麗でした。
ちなみに今日は三日月です。
星々は地上を優しく照らし、月は海に映り、幻想的な景色を生み出していました。
そんな誰もいない、美しくも閑静な世界「星の海」。
月と星の光に照らされキラキラと輝いている砂浜には、涼しげな音を立てながら波が、来たり引いたりしています。
ザーッ、ザーッ……。
波が行ったり来たりしているだけの砂浜には、男の子と女の子がいました。
フレイとフレイヤです。
「どうして神さまはこんなに簡単な試練にしたんだろう」
「なんでかしら」
神様が天に帰ったあと、彼らは砂浜で砂のお城を作りながらそう喋っていました。
どうしてこのような試練にしたのか、理解できなかったのです。
人間に関わって何を学べるというのでしょうか。
人間の悩み事など解決して、なんの得になるのでしょうか。
彼らは人間を軽く見下していたのです。
「……わからないなぁ」
「わからないね」
結局彼らはその答えを探すのをやめました。
飽きたからなのか、面倒くさくなったのか、あるいは人間に興味がないからなのか、やめた理由は定かではありません。
そのあと彼らは、楽しそうに砂のお城を作っていました。
手先が器用なフレイはフレイヤに言われた通りに美しい砂の城を作り上げ、手先が不器用なフレイヤはどんな城を作るか創造力を働かせました。
運がいいことに、波によって砂の城が崩されることはないのです。
相変わらず波は穏やかですから。
静かに音を立てながら、第2の星空を映し出していました。
「砂って不思議だよね」
ペタペタと砂のお城を触りながら、フレイはそう呟きました。
「どうして不思議なの?」
フレイヤには理解できませんでした。
フレイは乾いた砂をさらさらと手から落としていきます。
月や星の光が反射して、砂はきらきらと光っていました。
フレイはそれに見とれていました。
「すごく不思議さ」
するとフレイは立ち上がり、海の方に駆けていきました。
「え?」
突然の出来事で、フレイヤは少しだけ驚きました。
バシャバシャッ!!
フレイは膝下まで水が浸かるところまで、走っていきました。
泳ぐことはありません。
あまり深いところに行ってはいけません、神様にそう言われていたのです。
「フレイ、あまり深いところにいっては行けないわ」
フレイヤもフレイを追いかけて、海に走って行きました。
バシャバシャッ!
フレイヤも海に入ると、フレイを見ました。
フレイは何を思ってこうしたのでしょう。
その疑問はすぐに解けました。
「何を探しているの?」
フレイは何やら自分の足元を手で探っています。
「これだよ」
その手にあったのは、ただの泥でした。
「ただの泥じゃない」
「そうだね、ただの泥だ」
フレイはそうだと頷きました。
「砂は乾いているとサラサラだけど、水に濡らすとドロドロになるよね。僕は、すごく不思議だと思うんだ」
「砂が濡れれば泥になるのは当たり前じゃない」
「確かに当たり前だね。でも僕からしたら不思議でおかしなことだ。さらさらだったあの砂が、どろどろとした全く別の物に変わってしまうんだから」
フレイは不思議で不思議でたまりませんでした。
バシャバシャッ!
泥で汚れた腕を、フレイは洗い流します。
「ねぇフレイヤ」
フレイはフレイヤに声をかけます。
「なぁにフレイ?」
「当たり前のことほど、僕は最近不思議に思えてくるんだ」
フレイは夜の大海原を眺めてそう言います。
「こうやって、僕らが一緒にいること、ここにいること、全てが不思議なんだ」
「そうかしら」
フレイヤは首を傾げました。
それらは当たり前の「日常」だから、不思議だと思えなかったのです。
「もし、この日常が終わったら、無くなったら、僕らはどうなるんだろう?僕は少し怖いよフレイヤ」
「私はそうは思わないわフレイ」
「どうして?」
フレイはフレイヤを見つめ、応えを待ちます。
フレイヤもフレイを見つめ、こう応えました。
「今が楽しいのなら、私はそれでいいから。ここにいて、毎日フレイと一緒に遊ぶこの日常が終わったとしても、私たちはきっと離れることはないわ。だって神さまは私たちがどれだけ仲が良いのか知っているもの」
神様が私たちを引き離すわけがない、フレイヤはそう固く信じていたのです。
フレイもその考えに納得でした。
「確かにそうだね!僕は少し考え過ぎていたのかも。ありがとうフレイヤ」
「いいのよフレイ」
フレイヤは優しく微笑みました。
月の光に照らされたその笑顔が、フレイは好きでした。
「フレイヤは何か、抱え込んでいない?」
「そうね、フレイみたいに深刻なものではないけれど」
「いいよ、言ってみて」
フレイは真っ直ぐな瞳でフレイヤを見つめます。
星の光が反射した曇りのないその瞳が、フレイヤは好きでした。
「私たちに、あしたはあるのかしら?」
「あした?僕らは毎日あしたを過ごしているじゃないか」
フレイヤは頭を捻ります。
「神さまは、あしたから人間たちがここに来る、と言っていたけれど、ここには夜しかないわ。あしたというのは再び朝を迎えることだから、ここにあしたなんてないはずなのよ」
「朝、月じゃなくて太陽が昇る時間だね」
フレイは三日月を見上げてそう呟きました。
フレイヤもつられるように三日月を見上げました。
「太陽は、一体どんなものなのかしら」
彼らは太陽を見たことがありませんでした。
生まれてからずっと、空に浮かんでいたのは月だけなのです。
だから夜以外のここの景色を知りませんでした。
「神さまは太陽を、暖かいものだって言ってたね」
「そうね。そしてとても眩しいものだとも言っていたわ」
神様は彼らに知恵を授けましたが、実物を見せてくれることはありません。
彼らにとっての太陽は夢の産物でしかないのです。
例えて言うなら、我々にとってのユニコーンのような存在です。
「暖かくて、眩しい……うぅん、そんなものが空に浮かんでいるんだ、あしたは」
「現実味がないわね。この星の海はいつだって涼しいし、月が優しく照らしてくれている。今の状態とあしたは真逆と言うことなのかしら」
「そうかもしれないね。なんだか、不思議」
砂浜にゴロンと寝転んだフレイは、夜空をぼんやりと眺めていました。
そのすぐ隣でフレイヤは両膝を抱え地べたに座り込み、夜空が映る大海原を光を灯した瞳で眺めていました。
そんな暖かい【太陽】を彼らは無意識のうちに、いつもいつも、いつも夢見ていたのです。
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