塵の涙。

青太郎

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第1章

Ⅳ,戻したい

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 「お城、頑張って作ろうか」
私が目から雨を溢すのをやっと辞められたときだ。
フレイはそう言って、泥のお山作りを再開し始めた。
どれくらい泣いたのだろう。
そして散々降らせた雨はどこへ行ったのだろう。

泥を手に取り、小高くなり始めている山にぺたぺたと泥を付ける。

「……」
小さい、子供みたいだと思ってしまった。
子供であることに変わりはないけど、彼のその見た目よりもずっと、本当に小さい、私の膝下くらいしかない背丈の子供くらいだと、思ってしまった。

「リンも、やりましょう?」
フレイヤもフレイと同じように、泥山を作り始めた。

ぺたぺたと、山を触る。
「はい」
私も泥を手に持って、一緒にやり始めた。

この作業を楽しいとは思わなかったけど、誰かと一緒に何かをする、ということは楽しかった。
だから、
「リンは、楽しい?」
と、フレイヤに聞かれたときに、
「もちろんです」
と、笑顔で答えられた。

「早く完成できるといいな」
「そうね」
フレイとフレイヤも、多分楽しそうだった。

「お2人はいつもこうやって遊んでいるんですか?」
泥山をぺたぺたしながら、気になっていたことを聞いてみる。
「そう!いつもここに僕らはいる」
「あなたが来る前は、海に入って遊んでいたわ」
「そうだったんですね」

この島はとにかく何もない。
島をぐるっと見渡しても、ヤシの木が一本立っているだけで植物は他に見当たらない。
あとは全部、砂浜が広がっている。
動物も何もいない。

ほんと少しだけ、寂しい場所だと思った。

2人がこの島にいなかったら今頃私は寂しさと恐怖に包まれ、泣いていたんじゃないだろうか。
この2人も、2人でいなければそうに違いない。
「どうしてお2人はここにいるんですか?遭難して、助けが来ないとか?」
普通に考えてそうだろう。
食べ物とかは大丈夫だったのだろうか。
「違うよ」
「えぇ、違うわ」
2人は私の考えを否定した。
「それならどうしてこんな島に……」

「神様に願ったからさ」

目の前で泥山を作りの作業をしているフレイは、相変わらず太陽のような表情でいる。
教えてくれたその声は、最初のときよりも少し低く感じた。
「私たちの願いは叶えてくれたのね、神様」
泥山を見つめながらフレイヤも呟く。
相変わらず無表情で、声は透明感があり耳あたりが良かった。
神様に願った。
この島に居たい、と願ったのだろうか。
こんな何もない島の何が気に入ったのだろうか、家のベッドで寝てることが好きな私には理解できなかった。

どうしてそんな願いは叶えて私の願いは叶えてくれないのだろう。

「だったらなんでリンの願いは、叶えてくれないんだろう?」
フレイが明るい声で疑問を口にし、首を傾げた。
「な、なんででしょうね本当に」
「きっと気分屋なのよ、あの方は」
残念なことにね、と変わらないトーンでフレイヤが言う。
このときの私はきっとため息をついて、肩をガックリ下げていたに違いない。
それくらい、ショックだった。

「そういえばリンのお願い事って何だったの?」
泥山を撫でながらフレイが私の目を見て聞いてくる。
「私の願い、ですか」
「うん」
「うぅん、でも叶うわけがないんです。私の願いは。あり得ない、空想の話ですし」
「そう」
フレイヤが目を見て頷いてくれる。

「それならあなたが望んでいる空想世界のお話しを聞きたいわ。願いそうにないなら、せめて望めばいいのよ」

フレイヤは顎に指を当て、考えるような格好をしている。
「でも結局叶わないなら、望んだって意味ないじゃないですか」
純粋な疑問だった。
叶わないくらいなら忘れたほうが楽になれる気がした。
「いいえ。人間は自分が叶えたいことを知って、望んで、願って、そして叶えていくの。叶えたいことを知って、忘れるってすごく難しいことなのよ。だから望んでいたほうが生きていく上では、楽」
「……」
それでもあまり納得がいかなかった私は、頷けなかった。

「ま、とにかく話してみてよ!リンの願いごと。話してみれば何かと変わるよ」
「ここにはあなたの意見を否定する人間はいないわ。思う存分、話してみて?」
そうだ。
私はハッとした。
ここにはフレイヤとフレイ以外、何もいない。
だから話しても誰かに聞かれる可能性なんてないんだ。
話さなければ何も変わらないし、話せば逆に今までとは違う考え方ができるようになるかもしれない。
それにこの2人はきっと、他人を馬鹿にするような人たちではない。

「私、中学生時代にどうしても、戻りたくているんです」
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