厄災の魔女と疫病神と呼ばれた英雄

ケイ

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3話 魔女と戦争

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最初に教わったのが、魔法の属性の種類だ。


 火魔法。水魔法。木魔法。土魔法。風魔法。
 これらは5属性魔法と呼ばれ比較的使える者が多く、応用性に優れているが其処まで強力ではないらしい。

 炎魔法。雷魔法。嵐魔法。大地魔法。
 これら4属性は災害魔法と呼ばれ5属の上位の魔法である。
 風と火を極めた者が炎魔法を、水と風を極めた者が嵐魔法を、土と木を極めた者が大地魔法を使えるようになるという。
 だが雷魔法だけは条件が分かっておらず、使い手が少ないが、他の上位魔法と比べても強力な魔法も多く、それ故に上位魔法として数えられているらしい。

 聖魔法。闇魔法。
 この2属性も使い手が少なく稀有な魔法で、攻撃魔法は皆無だが、それでも強力な魔法と言われているという。

 空間魔法。召喚魔法。結界魔法。時空魔法。
 この4属性は無属性魔法と呼ばれ他の魔法よりも更に希少で、使い手など歴史上でも2人しか確認されていないとか。


 というのがナタリシアから教わった属性の種類だ。
 因みにナタリシアは全ての属性の魔法を使えるらしい。
 歴史上でも2人しか使い手がいない無属性魔法を全て使えるってどういう事だ。1人はお前なのかよ。と突っ込みたくなるが、『1000年も暇な時間があれば誰でも全て使えるようになるわよ』という事だ。
 んー確かに1000年あれば如何にかなりそうな気がしない事もないが、そもそも適正がないと使えないという設定は何処にいったんだと、やはり突っ込まざるを得ない気がしないでもないが。
 そこはナタリシアだから、という事で無理矢理納得する事にしておく。

 そんなこんなで簡単な雷魔法を教わる事が出来た。


 ん?空間魔法はどうしたのかって?言うなよ。
 空間の『く』の字も出来かけてねえよ。というより出来る気がしねえよ。
 だって『空間に穴を開けるイメージ』とか言われたって、そもそも空間に穴なんて開かねえよ。って話だよ。
 流石に歴史上でも2人しかいないとされるだけあって、直ぐに習得とはいかないようだ。

 まぁ空間魔法は今後の課題として、取り敢えずは魔法を使えるようになったし、遂にこの何もない辛気臭い場所とはおさらばだ。

 いや、まあ、また帰ってくるんだけどな?


『ねぇ、本当にもう行くの?』
「ああ。また時間になったら呼んでくれや」
『それは勿論だけど。帰ったら手をあらって、寝る前にトイレにはいくのよ?知らない人には着いていったら駄目だからね?お菓子を貰っては駄目よ?寝る時は布団をきちんと被って、それから』
「俺は子供か!」


 いざ行くとなると何故かナタリシアの方が慌て始め、遠足に行く子供を見送る母親の様に入らぬお節介を焼いてくる。
 19時間後にまた強制的に呼び出す気だろうに、どれだけ人恋しいんだか。
 まあ今までずっと1人で居たんだ。
 久々の人との会話ーーナタリシアは喋ってはいないがーーが名残惜しいのだろう。

 そう思うと多少の事は大目にみてやるか、という気持ちにもなるというものだ。


『あ、そうだわ!ねぇ、ヨーマ。少し前屈みになってくれる?』
「ん?なんだ?何する……っ!?」


 言われるままに前屈みになると、突然額に柔らかい感触を感じた。
 あろう事かナタリシアが額にキスをしてきたのだ。
 いきなり額にキスをされて驚いたが、殆ど密着しているナタリシアの体を、腰に手を回しそのまま抱き寄せる。

 女性特有の甘い香りが鼻を擽る。


『!?ヨ、ヨーマ?い、いきなりどうしたの?』
「それはこっちのセリフだ。いきなり誘ってきやがって。本当に襲うぞ」


 いきなり抱き寄せられた事に驚いてか、照れているのか、顔を真っ赤に染め上げ慌てふためく。

 真っ赤になった耳元にそっと、優しく囁いた。


『さ、誘う?わ、私はヨーマにおまじないを掛けてあげようと思って‥‥‥。ご、御免なさい。嫌だった?』
「お、おまじない?」


 未だ頬を赤くし、どもりながらさっきの行為の説明を始めるが、挙句怒っていると勘違いしたのか、落ち込みながら不安げな表情で謝ってくる。


「い、いや。嫌じゃない。そ、そうか、おまじないか。ありがとな」


 ‥‥‥そうだった。こいつはこういった事には免疫がないんだった。
 くそっ勘違いして、こっちまで恥ずかしくなるじゃないか。


『う、ううん!ヨーマが喜んでくれたなら良かったわ!でも、ふふっ。ヨーマも案外、可愛いらしい所があるのね』
「可愛らしい所?」


 お礼を言われたのが嬉しかったのか、落ち込んでいたのが嘘のように上機嫌になり、楽しそうに可愛いらしく小さな声を上げて笑い出す。


『だってそうでしょ?私と離れるのが寂しくて、行ってきますのハグをしてきたんでしょ?本当は家族以外にはあまりしては駄目なんだけど、ヨーマならいいわ。はいっ。おいで』


 上機嫌な表情のまま両手を広げ、からかうように無邪気に笑い、両手を広げたまま器用に手招きをしてくる。

 勘違いでこいつを抱き締めたのを、どうやらこいつは寂しがってハグしてきたんだと思ったらしい。
 どんだけ天然なんだ‥‥‥。
 いや、いい感じに勘違いしてくれてるからいいんだけど。
 その内しょうもない男に騙されるんじゃないだろうか。

 まぁ、俺以外こいつに会う奴はいないんだろうが。


「や、やらねえよ。そろそろ俺を外に出してくれ」
『え?し、しないの?むぅ。分かったわ。また時間になったら呼ぶからね!逃げたら駄目よ!』


 若干言葉を詰まらせながら広げた両手を拒むと、頬を膨らませて途端に不機嫌な表情になる。
 喜怒哀楽の激しい奴だな。
 だがどれだけ不機嫌になっても、俺をここに連れて来ることは止めないようだ。

 というより逃げられねえよ。強制だろうが。


『それじゃまたね、ヨーマ。待ってるから。転移』


 そう言って微笑んで、手を振ってくる。
 さっきの不機嫌な顔が嘘のようだ。
 くそっ。ホントこいつといると調子が狂うな。


 だが誰かに必要とされるってのは……まあ、悪くはない気分だ。



 そんな事を考えながら、微笑みながら手を振るナタリシアが見えなくなるまで、その造形物のように綺麗な顔を見つめ続けていた。




 ^o^╹◡╹^o^



 ナタリシアの姿が消え、視界には先程とは全く違う景色を見せている。
 無事にナタリシアの居る場所から外に出られたようだ。
 現状を把握する為、辺りを見渡し自分が何処に居るのかを確認する。
 ナタリシアは1000年もの間あの場所で過ごしていた為、現在の国や街を把握していないと言っていた。
 なので多分まだ現存しているであろうという、半ば当てずっぽうな理由でカルロリア大国という国の正門付近に飛ばすという事だった。

 ‥‥‥だったのだが。


「やっぱりあいつ‥‥‥一発ぶん殴っておくんだったわ‥‥‥」


 鼻は血と肉が焼け焦げたような匂いに詰まり咽せ返り、周辺は硝煙が波立つように充満し、耳には大勢の怒声とそれを掻き消すように爆音が何度も響き渡り、何千もの軍勢が互いに‥‥‥ってこれさ‥‥‥


「何でいきなり戦場なんだよ!!巫山戯んな!」


 本当にあいつには調子を狂わされる。
 いきなり戦場に飛ばされてどうしろっていうんだ。
 下手すれば異世界来て数時間で死ぬ事になってるぞ。これ。

 まぁ、俺でなければ。の話だがな。


「はっ。上等じゃねえか。暗殺者舐めんなよ。俺は正面突破でも百戦錬磨だって事見せてやるよ」


 そうは言ってもナタリシアが見てる訳でもないのだが。

 まぁ目の前で戦争が起きてるというのなら、殺しのプロとしては参加しないと男が廃るというものだ。

 となると問題はどちらに参加するかだが‥‥‥。

 ん?ちょっと待てよ。よく見ると片方は殆ど人間のようだが角を生やしている奴や背中から黒い翼が生えている奴ばかりだぞ。
 ‥‥‥もしかして、魔族という奴だろうか。
 成る程な。人間対魔族の種族争いってことか。
 そういう事なら勿論、人間側に加勢するに決まっている。
 よく見ると人間側がかなり押されているしな。
 そうと決まれば、まずは人間側の総大将に会わなければならない。
 場所はまぁ、戦争中に頭がいる所っていえば大体検討はつくが、手ぶらで会いに行けば門前払いされるのがオチだろう。
 敵の大将クラスの奴でも手土産に持って行けばいいな。


「死ねぇ!人間風情が!」
「おぉっとっ」


 足を止め何もせず突っ立っていたからか、此処ぞとばかりに魔族の1人が俺目掛けて剣を突き立てる。
 それを難なく躱すと、懐に潜り込みそのまま魔族を組み伏せ膝を使い首をへし折る。


「あっがぁっ」
「この剣貰うな」

 息の根を止めた事を確認し魔族から剣を奪うと、最も兵が集まっている場所へと駆け出す。
 そこで人間側の兵を二メートル近くあろう大剣で纏めて薙ぎ払っている男を見つける。


「すげぇな。馬鹿力過ぎるだろ」


 素直に感嘆の声を漏らしたながらも、頬を釣り上げ大男に向かってその細腕に似合わぬ豪腕で剣を振り下ろす。


「むぐっ。何だお前は!」


 流石は魔族という所だろう。奇襲にも関わららず体勢を崩しながらでも全力で力を込めた剣を受け止めている。
 だがやはり余裕綽々とはいかず、顔を歪ませて思わず声を上げる大男の姿が目にはいる。


「お前は、強いのか?」
「人間風情が。誰に物を言っている。我は魔王フロメテス軍幹部第2軍団長ロデオだ。貴様ら人間なぞ我が叩き斬ってくれる!」
「軍団長?団長が、こんな激戦区まで出てくるのか?」
「ふん。我の体に傷を付けられる人間などいるわけなかろう。後ろで構えていたのではいつまで経っても人間を叩き斬れぬわ!」


 どうやら当たりを引いたようだ。こいつの首を持って行けば門前払いされる事は無いだろう。


「あ、そう。なら、その首持ってくけどいいよな?」
「お前がか?ふっ。随分と舐めたられたものだな。お前如きが我を討つというか!直ぐ様その胴体切り離してくれる!」


 魔族の大男が叫ぶと同時に、地面を蹴り上げその巨体に似合わぬ速度で剣を横腹へと突き立てる。
 流石に軍団長ともなれば、その実力は本物のようだ。
 剣の腹で受け止めたが、強烈な衝撃が剣を握っていた手へと伝う。

 仕方ない。まだ覚えたてだが、あれを使うか。


「 身体強化 能力増幅 雷付与ライトニングブースト」
「なっ!雷だと!?」


 そう口にしたと同時に、青白い閃光が纏うように体を覆う。
 その姿に大男が驚愕し、ほんの一瞬だが動きを止める。
 百戦錬磨の俺が、その瞬間を逃す筈はない。
 動きを止めた一瞬で、大男へと詰め寄りその巨体を横に2つに切り離す。


「こ、古代魔法の‥‥‥使い、手だ、と‥‥‥きさ、まは、いったい、何者なの、だ」


 真っ二つに切り裂かれた大男は最後の力を振り絞るように問いてくる。



「朝霧葉真。お前を倒した男の名だ。覚えて地獄へ逝け」



 そう言い捨て、大男の上半身を担ぎ人間側の総大将がいるであろう元へと向かっていった。

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