ランクアップ!~枕が誘(いざな)う夢の世界で……

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
24 / 61
待っているからね。しばしのお別れ

024

しおりを挟む
 「あの、詩人でお願いします!」

 「ではなつめさんに、詩人の素質を与えます。ステム様のご加護がありますように」


 やっと決まったかという顔つきで神官が言っていたけど、無事に二つ目のジョブを手に入れました!


 「うん? 右上に今まで無かった物が表示されている! これが地図?」


 右上に地図らしき物が表示されていて、私が歩くとスクロールしています。ずっと見ていると酔いそうです……。


 「それが地図ね。それもマップオープンで色々設定できるから。今はまだ線だけの感じだろうけど、ランクアップさせれば、場所の名前表示とか……。そうだ! フレンドを表示させる事も出来るわよ!」

 「へえ、そうなんだ。私的にはそれは使わないと思う……。でもまあ便利よね」

 「あ、その地図は、なつめが行った事あるところなら確認出来るよ。ランクが上がれば書き込みも出来るし」


 書き込みかぁ。まあ地図は追々ランクアップさせるかな。まずは歌だよね。


 『ミチルだけど、もう少しで着くから沼で待ってて』


 え? もう着くの? 私一時間近く悩んでいたんだ。そりゃ、神官もあんな顔つきをする訳だ。


 「ミチルへ――わかった。向かいます……どうぞ」


 歌のランクアップは、後にしますか。
 毒の沼に着くと、ミチルが直ぐにやってきた。


 「お待たせ。あ、これが手数料ね。五人分で500G」

 「ありがとう。ミチルは、手数料貰ってるの?」

 「いや。俺はいいの。こういうので恩を売っておくのも手だから気にすんな」


 別にそういうのを気にしている訳じゃないんだけどね。


 「じゃ、今回も頼むな」


 私は巾着袋を受け取った。
 足を毒の沼に一歩踏み入れた時だった。


 《後一時間でこの世界を離脱します》


 ――と、聞こえたのは……。
 どういう事?


 「後一時間で目を覚ますみたいですね」

 「そういう事……」


 私とシシリーはぼぞぼぞと会話を交わす。
 どうやら後一時間で起こされるようです。で、こういう場合はどうしたらいいんでしょか? 取りあえず、五つ葉の採取は終わらせよう。

 20分程で終わり、ミチルに手渡す。

 「おう、ご苦労さん。で、直ぐに出発しても大丈夫か?」

 「その事なんだけど……採取を始める時に、後一時間で離脱ですって聞こえて……」

 「何?! じゃ、このまま行っても離脱前には村にたどり着けないぞ……。どうすっかなぁ」

 「あ、それ持って村に戻っていいですよ。待ってますよね。頼んだ人……」


 ミチルは腕を組んで考え込んでいる。
 別にいいのに。あ、そっか。村に行きたいっていったからか。

 「あ、私の事はいいから。明日INしたらまったり向かうから気にしないで」

 「わかった。取りあえずこれは、渡しておくわ。で、明日一緒に村に行こうぜ。INしたら話しかけて。うんじゃ、また明日!」

 「え!? だから、いいってば……。行っちゃった」

 「いいんじゃない? 護衛したいって言ってるんだし」

 「はぁ……。まあ、いっか。離脱するまでの間、歌のランクアップでもするかな」

 「うんうん。それがいいね」

 私は木陰に向かった。
 着いてからランクアップする前に歌を見てみた。


 「ステータスオープン」


 歌【ランク:1(500)/HP回復の歌】


 効果が表示されていないけどHPが回復するのはわかる。タッチしてみると、詳細が出て来た。


 HP回復の歌【歌詞:優しい風よ。傷を癒せよ。/効果:チーム全員のHPをそれぞれ10%回復する】


 歌って言うより、詩だね。で、10%か。これランクアップしていくと%増えるのかな?
 ……さてやりますか。


 「歌をランクアップ!」

 《歌がランク2になりました》


 よし、上がった! さあ寝ましょう。
 私は寝袋に入り込む。

 う~ん、おかしい。何か全回復が遅い。そう思ってステータスを見てみる事にした。


 「ステータスオープン」


 レベル10だとSPが25あって、SP回復が3だから9分かかるんだ。
 どうりで遅いなぁって思ったわけだ。

 9分って結構長いなぁ……。

 少し経って全回復し、寝袋から出てまたランクアップする。それを繰り返し、ランク4になった時だった。


 《後五分で離脱します》


 ――そうアナウンスが聞こえた。

 後五分か。今日はここまでにしよう。
 そそくさと寝袋に入る。

 歌どうなったかな?


 「ステータスオープン」


 歌【ランク:4(3,000)/HP回復の歌・物理攻撃の歌・魔法攻撃の歌・物理防御の歌】


 おぉ、増えてる。確認して見ると――
 物理攻撃が+10%、魔法攻撃が+10%、物理防御が+20%になるらしい。歌えばだけどね。
 いっぺんに4つは無理かな。取りあえずHP回復は覚えよう。


 《離脱まで後60秒……》


 あと一分切ったか。


 「シシリー。今日はありがとうね」

 「うん。……ランクアップしてくれてありがとう」

 「え?!」


 シシリーは照れながら言って、後ろを向いた。


 《離脱まで後30秒……》


 よかった。嫌ではなかったのね。


 「また明日ね。待ってるからね」

 「うん。また明日」


 《離脱まで10秒……8、7、……》


 カウントダウンが始まり、私はこの世界から離脱した――。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...