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手の平返し

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 「一体、どういうつもりですかな?」

 ドンがギロリとその者を睨む。

 「見ていたのだよ。兵士がその腕輪を外し、それを元に戻したのを。さて、なぜ元に戻したのか」
 「それを私に聞かれても。外した者に聞かないとな」

 独断でそんな事をしたのではなく、ドンが指示したのだろうけど。その指示された者が、素直にそう答えるだろうか。否、何か言い訳をするだけだ。
 猫族の人は、レックスさんの言葉にその行動がそういう意図があったのだと気付いたのだろう。つまり、レックスさんの言っている事は正しいと判断した。

 「あなたの仕業という事で宜しいのですか?」

 ドンが、自分に武器を向ける猫族に言った。
 自分に歯向かうなら罪を擦り付けるという魂胆らしい。なんて酷い奴だ。

 「よく考えればわかる事だ。まだアオの者だと言っていた方が助かる見込みがあるのに、わざわざ自分から魔の者だと言った。この世界で、魔の者がどういう扱いをされるか知らないからだろう」
 「ほう。魔の者だと信じると?」

 二人は睨み合う。
 あの~、どうせならどういう扱いをされるかまで説明お願いできませんか……。
 信じたのは、魔の者だと言ったからだったらしいけど、いつ言ったんだ?

 「信じる」

 そう猫族の者が言うと、驚く事に獣人全員がドンに武器を向けた。一体どうなってるの? あっさり手の平返し。

 「元々、他種族とは仲が悪かったようだな」

 ぼぞっとレックスさんが呟く。
 そういう事か。で、一体この人達ここで何をやっていたんだろう。

 「いいのですか? 私にそんなものを突き付ければ、この国からは生きて帰れませが」
 「元々そのつもりだったのだろう? だからこそ、この国で会合を開いた。違うか?」

 会合だって? では、ここにいる人達はみんな偉い人なんだ。
 会合中に賊が現れて、その賊の一味かもしれないオレ達よりドンを疑うとは、彼は余程嫌われているらしい。オレ達にしたら助かったけど。

 「なるほど、そういう事か。やっとわかった」

 レックスさんが、頷いた。一体何がわかったんだろう。

 「アオの者という賊をでっちあげるのに、他種族の者も必要だった。だがでっちあげる他種族を手配できなかったのだろう? だから召喚して俺達を用意した」

 そうなのか。それならつじつまは合うけど。オレは必要なかったよね? まあ選んで召喚しているわけじゃないだろうけど。
 レックスさんって頭いい。

 「なるほど、そういう事にするのですか」

 ドンは、オレ達が結託しているという風に頷いた。
 もしかしたら本当に他の種族も国に返すつもりがなかったか、人質みたいにするつもりだったかもしれない。

 「往生際が悪いですな、ドン殿」
 「何を言います。魔の者だと信じるなどあり得ない。いや、信じたとしてその者の側につく者などと、協力し合えません」
 「では聞こう。あのアオの者達の目的を! 殺さず生かしておけば聞けたのに。この者達は、召喚されたと言っている。なので目的を聞いてもわからないと答えるだろう」
 「知れた事。我が国が冒険者連合に入るのに反対する組織……」
 「それはないな。彼らが仲間ならな」

 猫族がドンの答えにくいっとオレ達に顎をむけた。うーん、オレ達がアオの者だとなぜそうなるのか……。

 「ベア国が他国と結託するのを批判する者が、ベア国の者と一緒に組織を作る? あり得ると思うか? ベア国の者だけだと分が悪いと思い用意したのだと思うが残念だったな」

 逆におかしいだろうと言う事か。レックスさんが言ったように、他の種族を用意できなかったようだ。アオの者にされたベア族の者だって、殺されると思っていなかったかもしれない。

 「決裂というわけか。いいだろう」

 ドンの言葉に、ベア国の兵士達も槍を構え、他種族に向けた。
 って、争いが起きちゃったみたいなんだけどぉ。どうすんのこれ。
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