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ひめごと

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 きっとオレ達を助けたのは、この魔石の発見があったからなんだろう。
 アオの者はでっち上げで、ベア国が何かを企んでいると推測がつく。でも証拠が必要だ。自分たちが逃げるのも大変なのに、だからオレ達も助けた。

 「もしかして、その冒険者連合に入らないと、その魔石を売ってくれないとか?」

 ロンドさんが聞くと、カールさんが首を横に振った。そういう事ではないらしい。

 「さっきも言ったように、こだわりはベア国にある。キツネ国は、半分がミックスなのだ」

 そこまでミックスを毛嫌いしているのか。
 純血にこだわっているのか、エルフが嫌なのか。

 「まあ今はエルフとの交流はほとんどない。この大陸にエルフ国はないからな。昔に交流が盛んな時期があった。魔法を使う国だ」
 「……もしかして、エルフ以外は魔法を使えないのか?」
 「ミックスの者で使える者はいるが、少数派だ。我々は、元々使えない」

 そういう事か。だからあの時、鎧を着た兵士がどよめいたんだ。
 今までの話からすると、ベア族なら更に魔法なんて馴染みがないだろうから。
 ふとカールさんを見ると、オレをジッと見つめていた。ヤンさんもだ。
 きっと、魔法を使えるのかという事を知りたいのかも。

 「あのミックス嫌いのドンが、ヒソカくんに関心を示していた。もしかして魔法を使えるのか? 武器がどうのとか言っていたがあれはどういう意味だ」

 なんと答えればいいんだ。そもそも地球にいた時は魔法を使えていない。こっちにきて魔法を使えるようになった。というか、一応魔法になるんだよな。
 それよりも、装備召喚って彼らが言う兵器にあたらないか? だからドンは、あんなに執着していたのか!
 オレを操れれば、兵器とはいかなくても武器防具を召喚出来る。きっとこっちにはない、凄い装備が手に入ると思っているに違いない。
 そしてそれは、このことを知れば他の獣人もきっと同じ考えに至るだろう。
 い、言えない。言ったら殺される!

 「ドンは思い違いをしているだけで、それを逆手にとっただけだ。彼は、ウサギと一緒に自分の世界から召喚されて来ただけだったんだ」

 え? そう思っていたの?
 レックスさんが、オレを見て軽くうなずいた。
 あ、オレをかばってくれたんだ。レックスさん達もカールさんから話を聞いて、オレの装備召喚の事を言ったらまずいと気が付いたんだ。
 ほっと、一安心。一緒に召喚されたのが、彼らでよかった。

 「まあ、そういう事にしておくか」
 「最後に、冒険者連合の事をもっと詳しく聞きたい」

 ロンドさんが聞いた。
 彼らの世界には、モンスターはいるけど、やっぱり冒険者連合とかないみたいだな。

 「この世界にはモンスターという知性を持たない魔物が存在する。ベア国は独自に倒す組織を編成しているが、戦闘種族ではない国も存在する為、モンスターを倒す冒険者という組織を作り、加盟した国に冒険者ギルドを設立し冒険者にモンスターを倒してもらう。加入国は、その資金を出す国って事だな」
 「そう私の国の様な者には、すごくありがたい仕組みですな」

 ヤンさんが、そう付け加える。
 冒険者って、今やファンタジーの定番だよな。
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