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二人の意思

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 レックスさんとロンドさんが、ドンに向かって行くが猫族は誰一人動かない。いや動けないのか!
 よく見ると、猫族の足に蔦の様なモノが絡みついている。それは猫族の武器では切れないようで、少しずつ蔦が上へと這い上がる。
 あんなのどうすればいいんだ。武器が効かないなんて。
 そうだ。二人は……あ。

 「くそ、なんだこれは!」
 「この為に一人で乗り込んできたのか!」

 ドンは、レックスさんの言葉にニヤリとする。
 ドンだけが動けるようだ。きっと敵も味方もなくドン以外に巻き付く。だから一人で乗り込んで来たのだろう。
 オレに巻き付かないのは、ある程度遠いからだ。ヤンさんとカールさんも離れていたから蔦は巻き付いていない。
 二人は、今まで通りドンを睨みつけているだけだ。そう成り行きを見守っているだけ。

 「さてヒソカ。私と一緒に来い。さもなくば、この二人の腕輪をこの場で外す」
 「そ、そんな」

 ドンならやるだろう。というか、オレが行くと言っても外すかもしれない。

 「行く。だから絶対に外さないで」

 オレがそう懇願すると、ドンが頷いた。

 「まだ対策はされていないようだな」
 「え……」

 頷いたのは、それが確認できたからなのか。

 「ちゃんとついていくから」
 「ダメだ! こっちへ来るな! 逃げろ!」
 「ヤンさんの所へ行け。ワープで逃げるんだ」

 オレが一歩近づこうとすると、二人が叫ぶ。
 ヤンさんの所へ行けとロンドさんが言うも、ヤンさんは来いとも来るなとも言わない。
 オレの判断に任せているのか。それともオレ達を見捨てるつもりなのか。わからない……。

 オレは、死にたくないしドンの操り人形にもなりたくない。でも二人を殺されたくもない。

 「二人から離れて。いう事を聞くから」
 「ヒソカの枷になるぐらいなら!」

 レックスさんがそういうと、信じられない事に自分で腕輪を外した。

 「レックスさん!!」
 「いいか! こいつにだけは捕まるな。ヤンさんの所へいけ!」
 「やめて~!!」

 オレが叫ぶも、ロンドさんも外した。二人はその場に倒れ込む。
 そんな。なぜオレなんかの為に自分の命を差し出すんだ。ヤンさん達がオレをどうするかもわからないのに。
 せっかく助けたオレを殺すかもしれないのに。

 「うううう……レックスさん、ロンドさん」
 「逃げずに最初から言うことを聞いていれば、こうはならなかったのにな。さあ、来い」
 「うるさい!」

 オレは、叫んで耳をふさぐ。
 気持ちが揺さぶられる。行きたくない。行くならヤンさんの所だ。

 『一矢報いましょう。弓を構えるのよ』

 そうだ。ドンを殺せばいい。
 オレは震える手で弓を構えた。

 「ヒソカ。弓というのは矢があって初めて武器になる」

 バカにしたようにドンがオレに言う。そんなの知っている!
 だから弓を選んだのだから!
 なぜか弓はくれたけど、矢はくれなかった。だから所持してないだけ。まああれだけ下手なら武器を選ぶなら弓をやめたほうが本当ならいいだろう。
 でもオレは――。

 ぐっと弦を引く。

 「ドン、覚悟しろ!」
 「魔法の矢でも撃つというのか?」
 「そうだよ。魔法の矢だよ!」

 オレは、怒鳴るようにドンに返すと彼は、目を見開く。
 きっと他にも魔法を使えたのかと驚いたのだろう。みせてやるよ。二人の敵を討ってやる!
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