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こげ茶色の髪で鼻の下に髭を蓄え丸い眼鏡をかけた20代の紳士と、黒っぽい灰色の長い髪にアクアマリン色の瞳の凛とした20代の夫人が、侍女に抱かれ泣き叫ぶ2歳ぐらいの女の子に優しく何かを話しかけている。
紳士は、5歳ぐらいの男の子と手を繋いでいた。灰色の髪だが紳士と顔つきがよく似ていた。
「泣かないでメルティ」
夫人が侍女にあやされている女の子の黒に近い茶色い髪を撫でる。
「行って来る」
紳士がそう言うと、三人は女の子に背を向けた。
◇
「行ってはダメー!」
ハッとして、メルティは目を覚ます。
「またいつもの夢だわ。あの人たちは誰?」
メルティは、ベッドから起き上がると、姿見に映った自身の姿を確認した。
夢に出て来た夫人の様にストレートの長い髪は、黒に近い茶色い髪。黒ではないが、隣に茶色の髪の者が居れば黒に見えるだろう。
そして、クリッとしたアクアマリン色の瞳は、海の様に澄んでいる。
鏡は、14歳のレディになったメルティを映し出していた。
(夢の中の女の子は、私よね)
しかし、メルティの両親は夢に出て来た者達ではない。
メルティは、レドゼンツ伯爵家の次女。父親のイヒニオは、王城で財務の仕事をしている。
イヒニオは、夢の紳士と同じこげ茶色の髪だが違う人物だ。母親のファニタなど全然夢に出て来た夫人と違う、ワインレッドの髪と瞳。
柔らかな瞳の夢の中の夫人とは違い、母親はちょっときつめの目つき。
夢では、男の子――兄だが、メルティにいるのは一つ年上の姉クラリサだけだ。そのクラリサは、ファニタと同じワインレッドの髪にイヒニオと同じこげ茶色の瞳をしている。
たまに夢に出てくる三人。しかし一度も会った事がない人物だった。
「お嬢様。おはようございます」
ノックと共にドアの向こうから侍女のセーラの声がかかる。
「おはよう」と返すと、失礼しますとセーラが入って来た。
無表情の彼女は、いつも通り洗面器をテーブルの上に置く。
洗面器を覗き込めば、両眼を腫らした自分が映し出されている。昨日は、結局泣きながら寝てしまった。昼間も泣いていたし、こうなるのは必然だろう。
メルティは、ため息を一つして洗面器の水に右手を浸した。
すると、水面がパーッと光を帯び、それは消える。そう見えているのは、メルティだけだ。
そしてその後、水面にはある場面が映し出されていた。
母親のファニタが凄い形相で手を振り上げている姿だ。あまりの形相に恐怖を覚える程だった。
「お嬢様、身支度の用意が整いました」
「あ、今、終わらせるわ」
セーラは、メルティが洗面器を覗いている間に身支度の準備を整えていた。
「今日は、食後にあのドレスに着替えますから忙しいですよ」
あのドレスと言われ、昨日届いたばかりのドレスに目をやる。
行きたくない。あんなの着たくない。
でも、行かなければ、姉であるクラリサが帰って来るなり、祝賀会の話をするだろう。それもまた聞きたくなかった。
(お姉様は、偽物の姿を褒められてそこまで嬉しいのかしら)
寝間着から部屋着へと着替えたメルティは、ダイニングルームと向かう。
「いいか。この事はまだメルティには内緒だぞ」
「まあ、どうしましょう」
「よかったわね。クラリサ」
そんな家族の話が開いていたドアから漏れ出し聞こえて来た。
(私だけ、やっぱり除け者なのね)
「おはようございます」
ノックをした後、メルティは何も聞こえなかった様に部屋へと入る。
そこにはもう、家族三人が席についていた。
「おはよう、メルティ」
三人は、声を揃え挨拶を返す。
仲が良さそうにみえる。だがメルティは、いつからか蚊帳の外になっていた。
食事のセッティングが終わると使用人達は、ダイニングルームから出て行く。食事は、家族水入らずと言う事になっている。だがそれは建前で、本当はメルティが今日見えた映像の話をする為だった。
「で、今日はどうだった」
「いえ。特には」
「そうか」
「この頃、三日に一回程度になったようだけど、何か原因があるのかしら?」
「いえ。思い当たりません。毎日夢を見ないのと一緒なのではないでしょか」
母親のファニタの質問に、つーんとしてメルティはそう答えた。
初めは毎回見える映像を伝えていたが、蚊帳の外だと感じてからは少しずつ見た映像の事を言わなくなっていった。
(今日見えたのは、絶対に言えないわ)
彼らが求めているのは、陛下に伝えて得になる情報だ。だが、そういう映像はあまりない。彼女が見えるのは、自身に関係があるモノが多いからだ。
「そうなの? 今日、祝賀会で伝えて自慢したかったのに」
姉であるクラリサは、さも残念そうに言った。
メルティが見た映像をこの場で伝え、イヒニオと一緒に聖女である姉が登城し陛下に申し伝える。まだそれは一度も叶っていないが。
メルティ以外楽しみな祝賀会でクラリサは、集まった皆の前で見えた映像を聖女の言葉として伝えるつもりだった。
聖女だと言われるこの能力が妹のメルティである事は、家族以外知らない。
だから使用人達もダイニングルームから追い出し、朝の食事をする時に報告を受けているのだ。
気づけばそうなっていた。
どうしてそうなったのか。映像は小さな頃から見えていた。それが現実に起こる事だとわかったある出来事があったのだ。
それまでは空想だと思われていた。
紳士は、5歳ぐらいの男の子と手を繋いでいた。灰色の髪だが紳士と顔つきがよく似ていた。
「泣かないでメルティ」
夫人が侍女にあやされている女の子の黒に近い茶色い髪を撫でる。
「行って来る」
紳士がそう言うと、三人は女の子に背を向けた。
◇
「行ってはダメー!」
ハッとして、メルティは目を覚ます。
「またいつもの夢だわ。あの人たちは誰?」
メルティは、ベッドから起き上がると、姿見に映った自身の姿を確認した。
夢に出て来た夫人の様にストレートの長い髪は、黒に近い茶色い髪。黒ではないが、隣に茶色の髪の者が居れば黒に見えるだろう。
そして、クリッとしたアクアマリン色の瞳は、海の様に澄んでいる。
鏡は、14歳のレディになったメルティを映し出していた。
(夢の中の女の子は、私よね)
しかし、メルティの両親は夢に出て来た者達ではない。
メルティは、レドゼンツ伯爵家の次女。父親のイヒニオは、王城で財務の仕事をしている。
イヒニオは、夢の紳士と同じこげ茶色の髪だが違う人物だ。母親のファニタなど全然夢に出て来た夫人と違う、ワインレッドの髪と瞳。
柔らかな瞳の夢の中の夫人とは違い、母親はちょっときつめの目つき。
夢では、男の子――兄だが、メルティにいるのは一つ年上の姉クラリサだけだ。そのクラリサは、ファニタと同じワインレッドの髪にイヒニオと同じこげ茶色の瞳をしている。
たまに夢に出てくる三人。しかし一度も会った事がない人物だった。
「お嬢様。おはようございます」
ノックと共にドアの向こうから侍女のセーラの声がかかる。
「おはよう」と返すと、失礼しますとセーラが入って来た。
無表情の彼女は、いつも通り洗面器をテーブルの上に置く。
洗面器を覗き込めば、両眼を腫らした自分が映し出されている。昨日は、結局泣きながら寝てしまった。昼間も泣いていたし、こうなるのは必然だろう。
メルティは、ため息を一つして洗面器の水に右手を浸した。
すると、水面がパーッと光を帯び、それは消える。そう見えているのは、メルティだけだ。
そしてその後、水面にはある場面が映し出されていた。
母親のファニタが凄い形相で手を振り上げている姿だ。あまりの形相に恐怖を覚える程だった。
「お嬢様、身支度の用意が整いました」
「あ、今、終わらせるわ」
セーラは、メルティが洗面器を覗いている間に身支度の準備を整えていた。
「今日は、食後にあのドレスに着替えますから忙しいですよ」
あのドレスと言われ、昨日届いたばかりのドレスに目をやる。
行きたくない。あんなの着たくない。
でも、行かなければ、姉であるクラリサが帰って来るなり、祝賀会の話をするだろう。それもまた聞きたくなかった。
(お姉様は、偽物の姿を褒められてそこまで嬉しいのかしら)
寝間着から部屋着へと着替えたメルティは、ダイニングルームと向かう。
「いいか。この事はまだメルティには内緒だぞ」
「まあ、どうしましょう」
「よかったわね。クラリサ」
そんな家族の話が開いていたドアから漏れ出し聞こえて来た。
(私だけ、やっぱり除け者なのね)
「おはようございます」
ノックをした後、メルティは何も聞こえなかった様に部屋へと入る。
そこにはもう、家族三人が席についていた。
「おはよう、メルティ」
三人は、声を揃え挨拶を返す。
仲が良さそうにみえる。だがメルティは、いつからか蚊帳の外になっていた。
食事のセッティングが終わると使用人達は、ダイニングルームから出て行く。食事は、家族水入らずと言う事になっている。だがそれは建前で、本当はメルティが今日見えた映像の話をする為だった。
「で、今日はどうだった」
「いえ。特には」
「そうか」
「この頃、三日に一回程度になったようだけど、何か原因があるのかしら?」
「いえ。思い当たりません。毎日夢を見ないのと一緒なのではないでしょか」
母親のファニタの質問に、つーんとしてメルティはそう答えた。
初めは毎回見える映像を伝えていたが、蚊帳の外だと感じてからは少しずつ見た映像の事を言わなくなっていった。
(今日見えたのは、絶対に言えないわ)
彼らが求めているのは、陛下に伝えて得になる情報だ。だが、そういう映像はあまりない。彼女が見えるのは、自身に関係があるモノが多いからだ。
「そうなの? 今日、祝賀会で伝えて自慢したかったのに」
姉であるクラリサは、さも残念そうに言った。
メルティが見た映像をこの場で伝え、イヒニオと一緒に聖女である姉が登城し陛下に申し伝える。まだそれは一度も叶っていないが。
メルティ以外楽しみな祝賀会でクラリサは、集まった皆の前で見えた映像を聖女の言葉として伝えるつもりだった。
聖女だと言われるこの能力が妹のメルティである事は、家族以外知らない。
だから使用人達もダイニングルームから追い出し、朝の食事をする時に報告を受けているのだ。
気づけばそうなっていた。
どうしてそうなったのか。映像は小さな頃から見えていた。それが現実に起こる事だとわかったある出来事があったのだ。
それまでは空想だと思われていた。
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