6 / 51
6話
部屋に戻ったメルティは、木箱を開けた。
古びた木箱には、煌びやかなメルティの瞳と同じアクアマリン色の宝石がついた首飾りが入っている。
「凄く、高そう。それに……」
自分には似合わなそう。そう思えた。
見た目が幼いので、もう少し大人っぽくならないと。これは、大人の淑女がつけるものだろうと思い蓋をする。そうっと、引き出しにしまう。
「クラリサだけど」
ノックの音と共に、クラリサの声が聞こえた。
「おります。なんでしょう」
ドアを開けると、不機嫌そうなクラリサが立っている。
そして、何も言わず部屋に入ると、ドアをバタンと閉めた。
「あなたねぇ。予言を見ていないと言ったじゃない!」
「だって。使用人の事を伝えても仕方がないでしょう。それにお姉様、私に告げろっておっしゃたじゃない」
「確かにね。でも私が何も把握していなければ、対処できないでしょう。アールがいなくなったって、使用人が私の所に来たのよ。はしごがどうのって!」
「あ……」
何も聞いていないクラリサは、はじめ何を言われているのかわからなかった。予言にはしごが出てきて、それをメルティが使用人に告げたのだと知る。
なので、メルティに告げた事以外はわからないと言って難を逃れたのだ。
メルティも、こんな事態になるとは思っていなかったので、クラリサには結局言っていなかった。
本人にさえ言えば、解決すると思い込んでいたが、こういう事態も発生するんだと気が付く。
「ごめんなさい。こんな事態になるなんて予想もつかなくて……」
「ふん。予言も大したことないわよね。アールもはしごの件を聞いたならそのはしごがある場所へ行かなければいいのに!」
確かにそうだと心の中で頷くも、そうまでして持って来たかったのかとも思った。
「明日からは、使用人の事だったら使用人だと言って。私に誰がどうなるかぐらいは報告してよ」
「わかったわ」
「わかっていないわよ。責任は私に降りかかるのよ!」
「責任?」
「そうよ。予言して外れたら何を言われるやら。かと言って、当たってもいい事でなければ、また何か言われるものよ」
「………」
まさにそれを自分がしていると、クラリサ自体気づいていない。
ムッとした顔をすれば、クラリサの不機嫌さが増す。
「何よその顔。感謝しなさいよね」
「感謝? なぜ」
「だから言ったじゃない。私が責任を負うからよ」
「だったら最初から私が聖女になるわよ! ちゃんと自分で責任を取るわ。だったら問題ないでしょう」
今まで黙っていたが、堪忍の緒が切れた。
聖女になったと喜んでいたのは誰だ。まるで自分が称賛されたが如く語っていたのは誰だ。
おいしいところは当たり前で、責任は負いたくない。そう聞こえる。
「何を言っているの? 今更言えるわけないでしょう」
「まだ大丈夫よ! 寝込んでいた私の代わりに軽い気持ちで行ったら、聖女になってしまって言い出せなかったと言えばいいわ。その後、数日して嘘をつきそう通すのは無理だと気が付いて、ごめんなさいと謝ればいいわよ。妹の代わりに登城しただけだったと」
「な! 私に恥をかかせる気?」
「恥? どうして恥になるのよ。お礼を言われて、聖女になってくださいと言われて帰って来ただけなのよね? 後々の事を考えればやっぱり、替え玉なんて無理よ」
使用人に対しても、色々と不都合が生じた。これがずっと続けば、気づくかもしれない。
「替え玉ですって! 何を言っているのよ」
「え? 替え玉でしょう?」
「ち、違うわよ。代理よ」
「それを替え玉って言うのでしょう? 言い方じゃない」
「とにかく、そんな事したら家を追い出されるわよ!」
「………」
聖女であるメルティが追い出されるわけがないと思うが、イヒニオは面目丸つぶれだとか、顔に泥を塗ったとか。激怒するだろうことは、予想出来る。
だがバレるのと、自分で告白するのでは、全然違うだろう。
「私、夕食時にお父様を説得するわ」
「何を言い出すのよ! あ、王子様と結婚したいわけ?」
「王子様? 会った事もないのに? 王子様と結婚したいのはお姉様でしょう」
「そ、そうよ」
「え……」
「だから協力しなさいよ。きっと謝礼金みたいなの貰えるわよ。それはあなたがもらえばいいわ」
開き直ったクラリサがいい案だと頷くが、そんなお金は全てイヒニオの懐に入るだろう。この国は16歳で大人と認められる。14歳の子供に管理できるわけがないと、親である自分が管理すると言って。
はっきり言って、クラリサが替え玉をする事にメルティに何の利益はないのだ。
「いい? 我がまま言わないで、大人しく従っていなさいよ」
「我がままって……どっちが」
「まあ、姉に向かってなんて言う口の利き方なのかしら?」
「今、姉かどうかって意味あります?」
「もういいわよ! お父様に言ったら叱られるのはあなたなのだからね!」
ぷんぷんと怒りながらクラリサが部屋を出て行った。
記憶がある中で、喧嘩など初めてかもしれない。
でも、さも当たり前の態度に納得がいかなかったのだった。
古びた木箱には、煌びやかなメルティの瞳と同じアクアマリン色の宝石がついた首飾りが入っている。
「凄く、高そう。それに……」
自分には似合わなそう。そう思えた。
見た目が幼いので、もう少し大人っぽくならないと。これは、大人の淑女がつけるものだろうと思い蓋をする。そうっと、引き出しにしまう。
「クラリサだけど」
ノックの音と共に、クラリサの声が聞こえた。
「おります。なんでしょう」
ドアを開けると、不機嫌そうなクラリサが立っている。
そして、何も言わず部屋に入ると、ドアをバタンと閉めた。
「あなたねぇ。予言を見ていないと言ったじゃない!」
「だって。使用人の事を伝えても仕方がないでしょう。それにお姉様、私に告げろっておっしゃたじゃない」
「確かにね。でも私が何も把握していなければ、対処できないでしょう。アールがいなくなったって、使用人が私の所に来たのよ。はしごがどうのって!」
「あ……」
何も聞いていないクラリサは、はじめ何を言われているのかわからなかった。予言にはしごが出てきて、それをメルティが使用人に告げたのだと知る。
なので、メルティに告げた事以外はわからないと言って難を逃れたのだ。
メルティも、こんな事態になるとは思っていなかったので、クラリサには結局言っていなかった。
本人にさえ言えば、解決すると思い込んでいたが、こういう事態も発生するんだと気が付く。
「ごめんなさい。こんな事態になるなんて予想もつかなくて……」
「ふん。予言も大したことないわよね。アールもはしごの件を聞いたならそのはしごがある場所へ行かなければいいのに!」
確かにそうだと心の中で頷くも、そうまでして持って来たかったのかとも思った。
「明日からは、使用人の事だったら使用人だと言って。私に誰がどうなるかぐらいは報告してよ」
「わかったわ」
「わかっていないわよ。責任は私に降りかかるのよ!」
「責任?」
「そうよ。予言して外れたら何を言われるやら。かと言って、当たってもいい事でなければ、また何か言われるものよ」
「………」
まさにそれを自分がしていると、クラリサ自体気づいていない。
ムッとした顔をすれば、クラリサの不機嫌さが増す。
「何よその顔。感謝しなさいよね」
「感謝? なぜ」
「だから言ったじゃない。私が責任を負うからよ」
「だったら最初から私が聖女になるわよ! ちゃんと自分で責任を取るわ。だったら問題ないでしょう」
今まで黙っていたが、堪忍の緒が切れた。
聖女になったと喜んでいたのは誰だ。まるで自分が称賛されたが如く語っていたのは誰だ。
おいしいところは当たり前で、責任は負いたくない。そう聞こえる。
「何を言っているの? 今更言えるわけないでしょう」
「まだ大丈夫よ! 寝込んでいた私の代わりに軽い気持ちで行ったら、聖女になってしまって言い出せなかったと言えばいいわ。その後、数日して嘘をつきそう通すのは無理だと気が付いて、ごめんなさいと謝ればいいわよ。妹の代わりに登城しただけだったと」
「な! 私に恥をかかせる気?」
「恥? どうして恥になるのよ。お礼を言われて、聖女になってくださいと言われて帰って来ただけなのよね? 後々の事を考えればやっぱり、替え玉なんて無理よ」
使用人に対しても、色々と不都合が生じた。これがずっと続けば、気づくかもしれない。
「替え玉ですって! 何を言っているのよ」
「え? 替え玉でしょう?」
「ち、違うわよ。代理よ」
「それを替え玉って言うのでしょう? 言い方じゃない」
「とにかく、そんな事したら家を追い出されるわよ!」
「………」
聖女であるメルティが追い出されるわけがないと思うが、イヒニオは面目丸つぶれだとか、顔に泥を塗ったとか。激怒するだろうことは、予想出来る。
だがバレるのと、自分で告白するのでは、全然違うだろう。
「私、夕食時にお父様を説得するわ」
「何を言い出すのよ! あ、王子様と結婚したいわけ?」
「王子様? 会った事もないのに? 王子様と結婚したいのはお姉様でしょう」
「そ、そうよ」
「え……」
「だから協力しなさいよ。きっと謝礼金みたいなの貰えるわよ。それはあなたがもらえばいいわ」
開き直ったクラリサがいい案だと頷くが、そんなお金は全てイヒニオの懐に入るだろう。この国は16歳で大人と認められる。14歳の子供に管理できるわけがないと、親である自分が管理すると言って。
はっきり言って、クラリサが替え玉をする事にメルティに何の利益はないのだ。
「いい? 我がまま言わないで、大人しく従っていなさいよ」
「我がままって……どっちが」
「まあ、姉に向かってなんて言う口の利き方なのかしら?」
「今、姉かどうかって意味あります?」
「もういいわよ! お父様に言ったら叱られるのはあなたなのだからね!」
ぷんぷんと怒りながらクラリサが部屋を出て行った。
記憶がある中で、喧嘩など初めてかもしれない。
でも、さも当たり前の態度に納得がいかなかったのだった。
あなたにおすすめの小説
【完結】姉を追い出して当主になった悪女ですが、何か?
堀多 ボルダ
恋愛
「お姉様、このマクレディ伯爵家は私が後を継ぎます。お姉様は邪魔なので今すぐこの家から出ていってください」
両親の急逝後、伯爵家を切り盛りしていた姉を強引に追い出して妹ダリアは当主となった。しかし、それが原因で社交界からは稀代の悪女として嫌われるようになった。
そんな彼女の元を訪ねたのは、婿に来てほしい男ナンバーワンと噂される、社交界で人気の高い幼馴染だった……。
◆架空の世界にある架空の国が舞台の架空のお話です。
◆カクヨムにも掲載しています。
愛しているだなんて戯言を言われても迷惑です
風見ゆうみ
恋愛
わたくし、ルキア・レイング伯爵令嬢は、政略結婚により、ドーウッド伯爵家の次男であるミゲル・ドーウッドと結婚いたしました。
ミゲルは次男ですから、ドーウッド家を継げないため、レイング家の婿養子となり、レイング家の伯爵の爵位を継ぐ事になったのです。
女性でも爵位を継げる国ではありましたが、そうしなかったのは、わたくしは泣き虫で、声も小さく、何か言われるたびに、怯えてビクビクしていましたから。
結婚式の日の晩、寝室に向かうと、わたくしはミゲルから「本当は君の様な女性とは結婚したくなかった。爵位の為だ。君の事なんて愛してもいないし、これから、愛せるわけがない」と言われてしまいます。
何もかも嫌になった、わたくしは、死を選んだのですが…。
「はあ? なんで、私が死なないといけないの!? 悪いのはあっちじゃないの!」
死んだはずのルキアの身体に事故で亡くなった、私、スズの魂が入り込んでしまった。
今のところ、爵位はミゲルにはなく、父のままである。
この男に渡すくらいなら、私が女伯爵になるわ!
性格が変わった私に、ミゲルは態度を変えてきたけど、絶対に離婚! 当たり前でしょ。
※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。
※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観です。
※ざまぁは過度ではありません。
※話が気に入らない場合は閉じて下さいませ。
虐げられた伯爵令嬢は獅子公爵様に愛される
高福あさひ
恋愛
リリム王国辺境伯エインズワース伯爵家の長女、ユーニス・エインズワース。伯爵令嬢であるはずなのに、生活は使用人以下で、まともに育てられたことはない。それでも心優しく強かに育った彼女は、ある日、隣国との国境である森で二人の怪我をした男性を見つけて……?※不定期更新です。2024/5/14、18話が抜けていたため追加しました。
【2024/9/25 追記】
次回34話以降は10/30より、他サイト様と同時の更新予定です。
【完結】さよならのかわりに
たろ
恋愛
大好きな婚約者に最後のプレゼントを用意した。それは婚約解消すること。
だからわたしは悪女になります。
彼を自由にさせてあげたかった。
彼には愛する人と幸せになって欲しかった。
わたくしのことなど忘れて欲しかった。
だってわたくしはもうすぐ死ぬのだから。
さよならのかわりに……
とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、
屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。
そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。
母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。
そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。
しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。
メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、
財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼!
学んだことを生かし、商会を設立。
孤児院から人材を引き取り育成もスタート。
出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。
そこに隣国の王子も参戦してきて?!
本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る
とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
追放聖女の再就職 〜長年仕えた王家からニセモノと追い出されたわたしですが頑張りますね、魔王さま!〜
三崎ちさ
恋愛
メリアは王宮に勤める聖女、だった。
「真なる聖女はこの世に一人、エミリーのみ! お前はニセモノだ!」
ある日突然いきりたった王子から国外追放、そして婚約破棄もオマケのように言い渡される。
「困ったわ、追放されても生きてはいけるけど、どうやってお金を稼ごうかしら」
メリアには病気の両親がいる。王宮で聖女として働いていたのも両親の治療費のためだった。国の外には魔物がウロウロ、しかし聖女として活躍してきたメリアには魔物は大した脅威ではない。ただ心配なことは『お金の稼ぎ方』だけである。
そんな中、メリアはひょんなことから封印されていたはずの魔族と出会い、魔王のもとで働くことになる。
「頑張りますね、魔王さま!」
「……」(かわいい……)
一方、メリアを独断で追放した王子は父の激昂を招いていた。
「メリアを魔族と引き合わせるわけにはいかん!」
国王はメリアと魔族について、何か秘密があるようで……?
即オチ真面目魔王さまと両親のためにお金を稼ぎたい!ニセモノ疑惑聖女のラブコメです。
※小説家になろうさんにも掲載
【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し
有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。
30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。
1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。
だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。
そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。
史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。
世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。
全くのフィクションですので、歴史考察はありません。
*あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。
ヒロインに躱されて落ちていく途中で悪役令嬢に転生したのを思い出しました。時遅く断罪・追放されて、冒険者になろうとしたら護衛騎士に馬鹿にされ
古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
第二回ドリコムメディア大賞一次選考通過作品。
ドジな公爵令嬢キャサリンは憎き聖女を王宮の大階段から突き落とそうとして、躱されて、死のダイブをしてしまった。そして、その瞬間、前世の記憶を取り戻したのだ。
そして、黒服の神様にこの異世界小説の世界の中に悪役令嬢として転移させられたことを思い出したのだ。でも、こんな時に思いしてもどうするのよ! しかし、キャサリンは何とか、チートスキルを見つけ出して命だけはなんとか助かるのだ。しかし、それから断罪が始まってはかない抵抗をするも隣国に追放させられてしまう。
「でも、良いわ。私はこのチートスキルで隣国で冒険者として生きて行くのよ」そのキャサリンを白い目で見る護衛騎士との冒険者生活が今始まる。
冒険者がどんなものか全く知らない公爵令嬢とそれに仕方なしに付き合わされる最強騎士の恋愛物語になるはずです。でも、その騎士も訳アリで…。ハッピーエンドはお約束。毎日更新目指して頑張ります。
皆様のお陰でHOTランキング第4位になりました。有難うございます。
小説家になろう、カクヨムでも連載中です。