24 / 51
24話
しおりを挟む
バシャ。
「どうなさいました。洗面器の湯が熱かったでしょうか?」
洗面器から勢いよく右手を出したメルティを見て、侍女のセーラが驚いて聞いた。
翌日の朝。いつもの予言の時間で、驚いただけだ。
「え? あ、いえ。だ、大丈夫よ」
メルティは、少し同様していた。
予言が思ってもみなかったモノだったからだ。
ルイスとダンスをする自分の姿だった。
(どういう事? もしかして、今日のダンスの相手ってルイス殿下なの? 王城へ行くのかしら)
今日は、リンアールペ侯爵夫人が迎えに来てダンスの練習に行く。集中して行う為に、この屋敷の外で行うと言う。
クラリサの話では、リンアールペ侯爵夫人宅に行く事になっていたはず。ルイスを招待したのだろうか。二人が、いえ、リンアールペ侯爵夫人が王家と親しいとは思わなかったメルティは、驚く。
(どちらにしても行ってみればわかるわ)
その後、支度を終えたメルティをリンアールペ侯爵夫人が迎えに来た。家族全員でお出迎えをする。
「おはようございます。今日は朝から娘にご指導頂けるとはありがとうございます」
「まあ、今日のドレスも素敵ですわね。侯爵夫人」
イヒニオやファニタがペコペコして、リンアールペ侯爵夫人のご機嫌を伺う。
「ありがとうございます。では、行きましょうかメルティ嬢」
「あの、侯爵夫人。ご相談なのですが、もう一人の娘、姉のクラリサもダンスのご指導をお願いできないでしょうか」
「も、もちろん、代金はお支払いいたします」
ファニタがお願いすると、すかさずイヒニオが代金を支払うのでと付け加えた。
「申し訳ありませんが、前にも言いました通り彼女には、教える事はできません。参りますよ、メルティ嬢」
「あ、はい。行って来ます」
メルティが乗り込む姿を呆然と見つめる三人。
ルイスにお誘いを受けたという報告を聞いたイヒニオ達は、それならリンアールペ侯爵夫人の条件もクリアしたのではないか。そう思いクラリサを連れて行ってもらおうと考えた。
もちろん、パーティーに参加しているクラリサの方がメルティよりダンスは上手い。
ダンスを見れば、クラリサの方が優秀だと思うに違いない。これを機に一緒に授業を受けられるかもしれないと、甘い考えをしていたのだ。
「どういう事? 連れて行ってくれるはずだと言ったよね」
クラリサが、悔しそうに言う。
「きっと、ルイス殿下との事はまだ、耳に入っていないのよ」
「そうだな。次回はきっと連れて行ってくれる」
「そうよ。メルティは、触りを少し習っただけだもの。ずっと踊っていないのだし、教えるのに値しないとすぐに帰って来るわよ」
「でもメルティだけ、リンアールペ侯爵夫人宅にお呼ばれするなんんて許せないわ!」
自分を差し置いて、養女のメルティがリンアールペ侯爵夫人の授業を受けるだけでも許せないのに、その彼女の家にお呼ばれされたのだ。正確には、ダンスをする為に招かれたのだが、クラリサにすれば一緒だった。
「そもそもお父様がいけないのよ。確認もせずにサインをなさるから!」
「な、何を言う。どちらにしても、サインをしないわけにはいかなかったんだ」
気づかずに契約書にサインをしたとは言え、気づいたとしてもラボランジュ公爵から紹介されたリンアールペ侯爵夫人を断る事などできるはずもない。
気が付いて出来たとすれば、クラリサも一緒にと言う事だろう。
しかしそれも、きっぱりと断られている。
連れて行ってもらえると思ったクラリサは、張り切って身支度をした。それはもう、ダンスパーティー行く恰好だ。
メルティは、いつもと同じく着古したドレス。
気合からして違うはずなのにと、クラリサは地団太を踏む。
「まあ、おちついて、クラリサ。おしゃれをしたのだもの、今日は買い物でも行きましょう」
「……そうね」
では少し休んでから出発しようと、屋敷の中へと三人は戻っていくのだった。
◇
「メルティ嬢、お尋ねしたいのですが、クラリサ嬢が着ているようなドレスはお持ち?」
「え?」
「いつもそのような、ドレスよね」
ジッとメルティを見つめリンアールペ侯爵夫人が問う。
リンアールペ侯爵夫人も気づいていた。このドレスは、クラリサからのお下がりなのだろうと。流行も全然合っていない。かなり古いものだ。
「えーと……」
「いいえ。結構よ」
答えづらそうなのでそう言えば、メルティはシュンとして俯く。
三か月後にデビュタントだと伝えているのにも拘らず、イヒニオ達はメルティにデビュタント用のドレスを用意している気配がない。
一つ上の姉は、可愛がっているというのに。やはり自分の子ではないからか。
ラボランジュ公爵夫人から依頼を受けた時に、彼女の境遇は聞いていた。だから夫妻の様子を見て来てほしいと頼まれた事も承諾した。
病弱だと聞いてはいたが、今は至って健康に見える。厳しく指導したが、具合が悪くなったことなど一度もない。
彼女の事が不憫に思えて来た。必ずやデビュタントを成功させてあげたくなったのだった。
「どうなさいました。洗面器の湯が熱かったでしょうか?」
洗面器から勢いよく右手を出したメルティを見て、侍女のセーラが驚いて聞いた。
翌日の朝。いつもの予言の時間で、驚いただけだ。
「え? あ、いえ。だ、大丈夫よ」
メルティは、少し同様していた。
予言が思ってもみなかったモノだったからだ。
ルイスとダンスをする自分の姿だった。
(どういう事? もしかして、今日のダンスの相手ってルイス殿下なの? 王城へ行くのかしら)
今日は、リンアールペ侯爵夫人が迎えに来てダンスの練習に行く。集中して行う為に、この屋敷の外で行うと言う。
クラリサの話では、リンアールペ侯爵夫人宅に行く事になっていたはず。ルイスを招待したのだろうか。二人が、いえ、リンアールペ侯爵夫人が王家と親しいとは思わなかったメルティは、驚く。
(どちらにしても行ってみればわかるわ)
その後、支度を終えたメルティをリンアールペ侯爵夫人が迎えに来た。家族全員でお出迎えをする。
「おはようございます。今日は朝から娘にご指導頂けるとはありがとうございます」
「まあ、今日のドレスも素敵ですわね。侯爵夫人」
イヒニオやファニタがペコペコして、リンアールペ侯爵夫人のご機嫌を伺う。
「ありがとうございます。では、行きましょうかメルティ嬢」
「あの、侯爵夫人。ご相談なのですが、もう一人の娘、姉のクラリサもダンスのご指導をお願いできないでしょうか」
「も、もちろん、代金はお支払いいたします」
ファニタがお願いすると、すかさずイヒニオが代金を支払うのでと付け加えた。
「申し訳ありませんが、前にも言いました通り彼女には、教える事はできません。参りますよ、メルティ嬢」
「あ、はい。行って来ます」
メルティが乗り込む姿を呆然と見つめる三人。
ルイスにお誘いを受けたという報告を聞いたイヒニオ達は、それならリンアールペ侯爵夫人の条件もクリアしたのではないか。そう思いクラリサを連れて行ってもらおうと考えた。
もちろん、パーティーに参加しているクラリサの方がメルティよりダンスは上手い。
ダンスを見れば、クラリサの方が優秀だと思うに違いない。これを機に一緒に授業を受けられるかもしれないと、甘い考えをしていたのだ。
「どういう事? 連れて行ってくれるはずだと言ったよね」
クラリサが、悔しそうに言う。
「きっと、ルイス殿下との事はまだ、耳に入っていないのよ」
「そうだな。次回はきっと連れて行ってくれる」
「そうよ。メルティは、触りを少し習っただけだもの。ずっと踊っていないのだし、教えるのに値しないとすぐに帰って来るわよ」
「でもメルティだけ、リンアールペ侯爵夫人宅にお呼ばれするなんんて許せないわ!」
自分を差し置いて、養女のメルティがリンアールペ侯爵夫人の授業を受けるだけでも許せないのに、その彼女の家にお呼ばれされたのだ。正確には、ダンスをする為に招かれたのだが、クラリサにすれば一緒だった。
「そもそもお父様がいけないのよ。確認もせずにサインをなさるから!」
「な、何を言う。どちらにしても、サインをしないわけにはいかなかったんだ」
気づかずに契約書にサインをしたとは言え、気づいたとしてもラボランジュ公爵から紹介されたリンアールペ侯爵夫人を断る事などできるはずもない。
気が付いて出来たとすれば、クラリサも一緒にと言う事だろう。
しかしそれも、きっぱりと断られている。
連れて行ってもらえると思ったクラリサは、張り切って身支度をした。それはもう、ダンスパーティー行く恰好だ。
メルティは、いつもと同じく着古したドレス。
気合からして違うはずなのにと、クラリサは地団太を踏む。
「まあ、おちついて、クラリサ。おしゃれをしたのだもの、今日は買い物でも行きましょう」
「……そうね」
では少し休んでから出発しようと、屋敷の中へと三人は戻っていくのだった。
◇
「メルティ嬢、お尋ねしたいのですが、クラリサ嬢が着ているようなドレスはお持ち?」
「え?」
「いつもそのような、ドレスよね」
ジッとメルティを見つめリンアールペ侯爵夫人が問う。
リンアールペ侯爵夫人も気づいていた。このドレスは、クラリサからのお下がりなのだろうと。流行も全然合っていない。かなり古いものだ。
「えーと……」
「いいえ。結構よ」
答えづらそうなのでそう言えば、メルティはシュンとして俯く。
三か月後にデビュタントだと伝えているのにも拘らず、イヒニオ達はメルティにデビュタント用のドレスを用意している気配がない。
一つ上の姉は、可愛がっているというのに。やはり自分の子ではないからか。
ラボランジュ公爵夫人から依頼を受けた時に、彼女の境遇は聞いていた。だから夫妻の様子を見て来てほしいと頼まれた事も承諾した。
病弱だと聞いてはいたが、今は至って健康に見える。厳しく指導したが、具合が悪くなったことなど一度もない。
彼女の事が不憫に思えて来た。必ずやデビュタントを成功させてあげたくなったのだった。
147
あなたにおすすめの小説
差し出された毒杯
しろねこ。
恋愛
深い森の中。
一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。
「あなたのその表情が見たかった」
毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。
王妃は少女の美しさが妬ましかった。
そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。
スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。
お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。
か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。
ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。
同名キャラで複数の作品を書いています。
立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。
ところどころリンクもしています。
※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!
虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。
ラディ
恋愛
一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。
家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。
劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。
一人の男が現れる。
彼女の人生は彼の登場により一変する。
この機を逃さぬよう、彼女は。
幸せになることに、決めた。
■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です!
■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました!
■感想や御要望などお気軽にどうぞ!
■エールやいいねも励みになります!
■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。
※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。
【完結】婚約破棄された令嬢の毒はいかがでしょうか
まさかの
恋愛
皇太子の未来の王妃だったカナリアは突如として、父親の罪によって婚約破棄をされてしまった。
己の命が助かる方法は、友好国の悪評のある第二王子と婚約すること。
カナリアはその提案をのんだが、最初の夜会で毒を盛られてしまった。
誰も味方がいない状況で心がすり減っていくが、婚約者のシリウスだけは他の者たちとは違った。
ある時、シリウスの悪評の原因に気付いたカナリアの手でシリウスは穏やかな性格を取り戻したのだった。
シリウスはカナリアへ愛を囁き、カナリアもまた少しずつ彼の愛を受け入れていく。
そんな時に、義姉のヒルダがカナリアへ多くの嫌がらせを行い、女の戦いが始まる。
嫁いできただけの女と甘く見ている者たちに分からせよう。
カナリア・ノートメアシュトラーセがどんな女かを──。
小説家になろう、エブリスタ、アルファポリス、カクヨムで投稿しています。
【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!
風見ゆうみ
恋愛
「王族に嫁いだ者は、夫を二人もつ事を義務化とする」
第二王子の婚約者である私の親友に恋をした第三王子のワガママなお願いを無効にするまでのもう一人の夫候補として思い浮かんだのは、私に思いを寄せてくれていた次期公爵。
夫候補をお願いしたことにより第一王子だけでなく次期公爵からも溺愛される事に?!
彼らを好きな令嬢やお姫様達ともひと悶着ありですが、親友と一緒に頑張ります!
/「小説家になろう」で完結済みです。本作からお読みいただいてもわかるようにしておりますが、拙作の「身を引いたつもりが逆効果でした」の続編になります。
基本はヒロインが王子と次期公爵から溺愛される三角関係メインの甘めな話です。揺れるヒロインが苦手な方は、ご遠慮下さい。
【完結】亡くなった婚約者の弟と婚約させられたけど⋯⋯【正しい婚約破棄計画】
との
恋愛
「彼が亡くなった?」
突然の悲報に青褪めたライラは婚約者の葬儀の直後、彼の弟と婚約させられてしまった。
「あり得ないわ⋯⋯あんな粗野で自分勝手な奴と婚約だなんて!
家の為だからと言われても、優しかった婚約者の面影が消えないうちに決めるなんて耐えられない」
次々に変わる恋人を腕に抱いて暴言を吐く新婚約者に苛立ちが募っていく。
家と会社の不正、生徒会での横領事件。
「わたくしは⋯⋯完全なる婚約破棄を準備致します!」
『彼』がいるから、そして『彼』がいたから⋯⋯ずっと前を向いていられる。
人が亡くなるシーンの描写がちょっとあります。グロくはないと思います⋯⋯。
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済。
R15は念の為・・
シスコン婚約者の最愛の妹が婚約解消されました。
ねーさん
恋愛
リネットは自身の婚約者セドリックが実の妹リリアをかわいがり過ぎていて、若干引き気味。
シスコンって極めるとどうなるのかしら…?
と考えていた時、王太子殿下が男爵令嬢との「真実の愛」に目覚め、公爵令嬢との婚約を破棄するという事件が勃発!
リネット自身には関係のない事件と思っていたのに、リリアの婚約者である第二王子がリネットに…
お姉様優先な我が家は、このままでは破産です
編端みどり
恋愛
我が家では、なんでも姉が優先。 経費を全て公開しないといけない国で良かったわ。なんとか体裁を保てる予算をわたくしにも回して貰える。
だけどお姉様、どうしてそんな地雷男を選ぶんですか?! 結婚前から愛人ですって?!
愛人の予算もうちが出すのよ?! わかってる?! このままでは更にわたくしの予算は減ってしまうわ。そもそも愛人5人いる男と同居なんて無理!
姉の結婚までにこの家から逃げたい!
相談した親友にセッティングされた辺境伯とのお見合いは、理想の殿方との出会いだった。
前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる