【完結】メルティは諦めない~立派なレディになったなら

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
37 / 51

37話

しおりを挟む
 「メルティ! ここに居たのか。帰るぞ!」

 ノックと同時にドアが開き、メルティを見つけるとイヒニオが焦った様に言い放つ。

 「あら、随分と慌てていらっしゃいますね」

 涙のあとを拭きつつ立ち上がった、ラボランジュ公爵夫人が言った。

 「メルティのお披露目は終わりましたので、連れて帰ります」
 「いいえ。今日は自宅へご招待しているの」
 「そ、そんな話は聞いておりません! 帰るぞ、メルティ」

 メルティに近づいたと思ったらイヒニオは、彼女の手首を掴んだ。

 「待って下さい。
 「叔父様だと……」

 凄い形相でイヒニオが振り向いた。

 「やはりあなたが、契約者でしたか。契約を破るとはな」
 「契約は破っておりませんわよ」
 「メルティが、レドゼンツ家の爵位を継ぐ年齢になるまでは、契約の事は告げない事になっていたはずですが」
 「何のお話ですの?」

 一緒に訪れていたクラリサが、一人話についていけなく叫ぶ。
 突然、メルティがイヒニオを叔父と呼び、契約の話などが会話に出て来たからだ。
 自分がイヒニオの娘ではないと知った時泣いていたメルティが、今は堂々としている。どうなっているのか。

 「まずは、落ち着いてください。伯爵、メルティ嬢の手を離して下さい」
 「………」

 ふんっと、イヒニオはメルティを掴んでいた手を離す。

 「契約は破られておりませんよ。但し書きがあったでしょう」
 「まさか婚約の話を言っているのですか? 権力を使って、ルイス殿下を焚きつけて!」

 ビシッと、ラボランジュ公爵夫人に指をさし言うイヒニオ。その目は血走っている。

 「嫌ですわ。権力だなんて。ルイス殿下の方が私より権力が上ですわよ。ですので、逆ですわね。ルイス殿下から頼まれましたのよ。メルティと婚約したいから協力をして欲しいと。あら、権力であっていましたわね」
 「「え!」」

 メルティとクラリサの驚きの声が重なる。
 ラボランジュ公爵夫人は、嬉しそうに返すが、イヒニオは更に憤っていた。

 「リンアールペ侯爵夫人を送り込んだりして、姑息な事をしておいて!」
 「あら嫌だわ。褒められちゃった」

 褒められてはいないとわかって、ラボランジュ公爵夫人はイヒニオを煽る。

 「まあ怖い顔。私もまだまだね。策略に気づかずにあなたにお願いしちゃって。でも挽回できたわ。一つ言っておきますが、リンアールペ侯爵夫人は私達の契約の事は何も知りませんわよ。ただ、あなた達がメルティにどう接しているか確認して欲しいとはお願いしましたけどね」
 「うぐぐ。私は、契約を破っていないぞ!」
 「お父様! どういう事ですの! 説明なさってください」
 「お前は黙っておれ!」
 「聞かせてあげてはどうですか? 彼女にも嘘を教えていたでしょう。メルティを養女だと」
 「な……クラリサ?」

 凄い形相のままイヒニオがクラリサに振り返る。

 「ひい。だって! お父様達が言ったではありませんか。私が聞いたらメルティは自分の子供ではないと。メルティが生意気だったから……」
 「あれほど言うなと言ったのに!!」

 イヒニオに怒鳴られ、クラリサは泣き出す。

 「はぁ。親子喧嘩なら外でやって下さらない」
 「契約違反をしておいて何を言う! クラリサがルイス殿下と婚約するのだ!」
 「諦めが悪いのね」
 「あの……」

 メルティがおずおずと声を掛ける。
 契約の事が本人であるメルティに知れて、ルイスがメルティと婚約すると言っていると言うのに、イヒニオが引かないのだ。
 それどころか、ルイスと婚約するのはクラリサだと言い張る。

 どう見ても、無理だろう。
 ルイスがメルティと婚約しなかったとしても、聖女ではないクラリサとルイスが婚約はしないだろう。
 もうメルティが、クラリサを聖女にする為に協力する事はないのだから。

 皆がメルティに目を向けた。

 「何だ。お前はもう、レドゼンツ家を継げないぞ!」
 「え!?」
 「その女のせいで契約不履行になってな。私がそのままレドゼンツ家の当主だ。そして、クラリサが婿を迎え当主となるのだ」

 その際、ルイスを婿に迎えると言うのだから、おこがましい。

 「困った人ね。さっきも言ったでしょう。婚約すれば成人と同等とみなし、16歳を待たずに家名を継ぐと但し書きにあると」
 「何を言う。婚約などしていないだろう」
 「そうね、まだ、発表されていないわね。メルティがデビュタントをするのを待って、ルイス殿下が陛下にお願いするそうよ。なので近々発表になるでしょう」

 ラボランジュ公爵夫人がそう言うと、イヒニオが悔しがる所かニヤリとする。

 「あははは。残念だったな。まだ発表されていない! なので成人とみなされていない! 先走ったな!」

 勝ち誇った様にイヒニオが言った。
 後ろに立つファニタも、嬉しそうな顔つきになる。泣き止んだクラリサが勝ち誇ったイヒニオをジッと見つめていた。
 そんな三人をメルティは、困惑した表情で見つめる。この人達はずっと、レドゼンツ家を乗っ取る為に自分と暮らしていたのだと――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

ラディ
恋愛
 一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。  家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。  劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。  一人の男が現れる。  彼女の人生は彼の登場により一変する。  この機を逃さぬよう、彼女は。  幸せになることに、決めた。 ■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です! ■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました! ■感想や御要望などお気軽にどうぞ! ■エールやいいねも励みになります! ■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。 ※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。

【完結】婚約破棄された令嬢の毒はいかがでしょうか

まさかの
恋愛
皇太子の未来の王妃だったカナリアは突如として、父親の罪によって婚約破棄をされてしまった。 己の命が助かる方法は、友好国の悪評のある第二王子と婚約すること。 カナリアはその提案をのんだが、最初の夜会で毒を盛られてしまった。 誰も味方がいない状況で心がすり減っていくが、婚約者のシリウスだけは他の者たちとは違った。 ある時、シリウスの悪評の原因に気付いたカナリアの手でシリウスは穏やかな性格を取り戻したのだった。 シリウスはカナリアへ愛を囁き、カナリアもまた少しずつ彼の愛を受け入れていく。 そんな時に、義姉のヒルダがカナリアへ多くの嫌がらせを行い、女の戦いが始まる。 嫁いできただけの女と甘く見ている者たちに分からせよう。 カナリア・ノートメアシュトラーセがどんな女かを──。 小説家になろう、エブリスタ、アルファポリス、カクヨムで投稿しています。

【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!

風見ゆうみ
恋愛
「王族に嫁いだ者は、夫を二人もつ事を義務化とする」  第二王子の婚約者である私の親友に恋をした第三王子のワガママなお願いを無効にするまでのもう一人の夫候補として思い浮かんだのは、私に思いを寄せてくれていた次期公爵。  夫候補をお願いしたことにより第一王子だけでなく次期公爵からも溺愛される事に?!  彼らを好きな令嬢やお姫様達ともひと悶着ありですが、親友と一緒に頑張ります! /「小説家になろう」で完結済みです。本作からお読みいただいてもわかるようにしておりますが、拙作の「身を引いたつもりが逆効果でした」の続編になります。 基本はヒロインが王子と次期公爵から溺愛される三角関係メインの甘めな話です。揺れるヒロインが苦手な方は、ご遠慮下さい。

【完結】亡くなった婚約者の弟と婚約させられたけど⋯⋯【正しい婚約破棄計画】

との
恋愛
「彼が亡くなった?」 突然の悲報に青褪めたライラは婚約者の葬儀の直後、彼の弟と婚約させられてしまった。 「あり得ないわ⋯⋯あんな粗野で自分勝手な奴と婚約だなんて! 家の為だからと言われても、優しかった婚約者の面影が消えないうちに決めるなんて耐えられない」 次々に変わる恋人を腕に抱いて暴言を吐く新婚約者に苛立ちが募っていく。 家と会社の不正、生徒会での横領事件。 「わたくしは⋯⋯完全なる婚約破棄を準備致します!」 『彼』がいるから、そして『彼』がいたから⋯⋯ずっと前を向いていられる。 人が亡くなるシーンの描写がちょっとあります。グロくはないと思います⋯⋯。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結迄予約投稿済。 R15は念の為・・

シスコン婚約者の最愛の妹が婚約解消されました。

ねーさん
恋愛
リネットは自身の婚約者セドリックが実の妹リリアをかわいがり過ぎていて、若干引き気味。 シスコンって極めるとどうなるのかしら…? と考えていた時、王太子殿下が男爵令嬢との「真実の愛」に目覚め、公爵令嬢との婚約を破棄するという事件が勃発! リネット自身には関係のない事件と思っていたのに、リリアの婚約者である第二王子がリネットに…

お姉様優先な我が家は、このままでは破産です

編端みどり
恋愛
我が家では、なんでも姉が優先。 経費を全て公開しないといけない国で良かったわ。なんとか体裁を保てる予算をわたくしにも回して貰える。 だけどお姉様、どうしてそんな地雷男を選ぶんですか?! 結婚前から愛人ですって?!  愛人の予算もうちが出すのよ?! わかってる?! このままでは更にわたくしの予算は減ってしまうわ。そもそも愛人5人いる男と同居なんて無理! 姉の結婚までにこの家から逃げたい! 相談した親友にセッティングされた辺境伯とのお見合いは、理想の殿方との出会いだった。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

処理中です...